出番ナァイ!
「ユキミ先輩ですね、チフリと呼び捨てで構いません」
チフリはユキミに真顔のまま言った。
それに対し、ユキミもあたふたとしながら返事する。
「あう、うん。そ、それじゃ私もユキミって呼んで……ほしい」
ユキミの言葉に、チフリは首を横に振る。
「いえ、お二方は先輩ですので」
「それじゃ、そう呼ばせてもらうかな。チフリ!」
シュンに呼び捨てされると、チフリはあからさまに嫌そうな顔をする。
「いや、やっぱチフリさんだな! 親しき仲にも礼儀ありだな!」
「シュン先輩と親しくなった記憶はありませんが?」
「うぉーん! 辛辣ぅー!」
シュンは剥がしたクエスト依頼の紙に名前を書く。
ユキミとチフリも同じようにした。
「よしっ! それじゃ行こうか!」
ギルドの受付で、レモンに紙を渡し、代わりに結界修復用のお札を貰った。
「それじゃ一旦宿屋で荷物取って、行くか!」
宿屋に戻り、泊まりに必要な荷物を用意し、その後は街の店で食べ物を物色する。
「ユキミさん。何か食べたい物はありますかい?」
「え、あっ、な、なんでも」
ユキミはおどおどとしており、チフリは無表情。
シュンは、はぁっとため息をついた。
「まぁ、それだったら逆に嫌いなものはありますかい?」
ユキミは目を泳がせながら答える。
「か、辛いもの……」
チフリもこの質問には答えてくれた。
「特にはありません」
まぁ、適当に肉スープとパンで良いかとシュンは材料を調達する。
その後、街の出入り口までやって来た一行。
シュンは遠くを見て言った。
「それじゃ、出発しますかー」
道中は魔物も出ずに、平和だ。皆で荷物を分担して背負い、歩き続ける。
シュンは途中、仲間を気遣い、声を掛ける。
「ユキミさん、疲れてないか?」
「だ、大丈夫」
ユキミは見た目よりもずっとタフなようで、汗もかいていない。
「そんで、チフリさんは?」
「平気ですよ。先輩」
可愛げのない奴だと言いたかったが、言ったら命がヤバいので心に留めておく。
シュンは気配を察し、歩みを止めた。
「おっ、お客さんか」
何の変哲もない、オオカミ型の魔物だ。これぐらいならシュンにも片づけられる。
「ブライニクルスラッシュ!!」
シュンの出番は無かった。ユキミが大技で全滅させてしまう。
「いやいや、ユキミさん!? オーバーキルも良いとこよ!?」
「あ、す、すまん……」
「まぁ、俺としちゃ楽ができて良いんですがねぇ」
今度はクマ型の魔物が現れる。今度こそいい所を見せようとしたシュンだったが。
弾けたように走るチフリが、短剣でクマ型魔物の頚動脈を素早く切り裂く。
「あ、あぁ……。スゴイネチフリさん」
「いえ」
自分よりも遥かに強いであろう女の子二人を連れ、シュンは出番が無いまま歩いた。
辺りが夕方になる頃、目的地である森の中に入り、しばらく歩くと、小さな社が見えてきた。
シュンはお札を取り出して二人に言う。
「このお札を新しいものに変えれば完了だ」
ユキミは興味深そうにシュンに尋ねる。
「シュン、こ、ここには何が封印されているんだ?」
「あぁ、狐の悪い神様が封印されているんだってよ」
そんなシュン達をこっそりと見つめる影があった。
その影はユキミの後ろから襲い掛かる。
反応できたチフリが、鎖付きの短剣を投げた。
「うぉ! 危ないのぉ!!」
そこに居たのは。
「貴様ら、ワシにひれ伏せ!!!」
シュンはそう言う相手を見て問いかける。
「え、えーっと。もしかして狐の神様……?」
「いかにも!」
ふふんと胸を張る狐の神様は、背が低く、ちんちくりんであった。




