水色
いつもの鎧姿ではない、私服の水色ワンピースを着たユキミとその笑顔に、シュンも心が躍る。
「ははっ、どうも」
ビールを飲みながら、シュンは肉を頬張っていた。
ユキミは水色の酒を一口飲む。
「甘い……、これなら飲めるかも」
「そうですかい? そりゃ良かった!」
ユキミは少しずつだが、酒を飲み進めた。
水色の酒を飲み終わる頃にはユキミは顔が真っ赤になっていた。
「ゆ、ユキミさん大丈夫ですかい? ほら、お水飲んで……」
「う、うん……」
うるんだ瞳で見つめてくる彼女は、いつもの澄ました顔と鋭い目つきではない。
テーブルに突っ伏しているユキミを見て、酒は止めといた方が良かったかなとシュンは思う。
「ユキミさん、帰りますよー」
「う、うにゃ……」
店の支払いを済ませ、立ち上がる。ユキミはフラフラとしていたので、シュンは肩を貸す。
しかし、そうすると、どうしてもユキミの柔らかい部分の感触が体に伝わってしまう。
おまけにとてもいい匂いがする。
ユキミに手を出したら自身の命が危ないが、これぐらいなら大丈夫かと、夜道を歩いた。
今こうしている間にも監視されているかもしれないので、恐怖と夢見心地の狭間でシュンは何とも言えない気持ちだ。
「ほら、着きましたぜ。ユキミさん」
「う、うにゅ」
呂律が回らないユキミを部屋まで運び、ベッドに寝かせる。
透き通る白い肌が、顔だけ熱を帯びて赤くなっていた。
やましい考えが一瞬起こりそうになるが、シュンはいかんいかんと首を横に振って耐える。
「それじゃおやすみー。ユキミさん」
「待ってくれ」
ユキミは目を閉じたままうわごとを呟いた。
「ユキミさん、どうした? 気分が悪いか?」
次に、薄目を開けてユキミは言った。
「一人に、一人にしないで……」
一瞬、理性が消えそうだったが、殺気を感じて冷静になる。
それに、ユキミさんの一人にしないでという言葉は、そのままの意味通り、この街に来て一人でずっといたのが嫌だったからだろうと。
「ユキミさん。一人にはしないさ」
シュンはユキミの手を軽く握った。これぐらいなら大丈夫だろうと。
「寝るまで傍にいるから、な?」
「うん……」
そのまま手を握っていたら、安心したかのようにユキミは寝息をすぅすぅと立てて寝始めた。
「よし、これで一安心か」
シュンは手を放して自分の部屋に戻ろうとする。
その時、窓の外から声が聞こえた。
「ちゃんと約束を守ってもらえている様でなによりです」
あの昨日のユキミの家、サヴィ家の従者だ。
シュンは思わずツッコミを入れる。
「やっぱ居たんかい!!」
「えぇ、私はユキミ様を見守っておりますので」
嫌な予感が当たり、シュンはいかがわしい事をしなかった自分にホッとしていた。
ユキミの部屋を後にし、宿屋の親父に鍵を閉めておいてくれと告げ、自分の部屋に戻る。
「はぁー、色々と疲れた……」
体は痛むし、ユキミは可愛いし、でも従者は怖いし。
シュンは思う、退屈で死んだように生きていた俺の人生はどうなっちまうんだろうと。




