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病人の希望は断りづらい件④

 お粥が出来たあたりで玲衣(れい)が脱衣所の扉から姿を現した。

 発熱に加えて風呂でしっかりと温まった体が火照っている。長く伸ばした綺麗な黒髪は未だ湿っている。

 病人に掛ける言葉ではないのは重々承知しているが、とても色っぽい。


「髪どうする?」


 俺は玲衣に風呂上がりのケアについて聞く。


「やって」


 短く答えた。


 いくら前の玲衣曰く「1日やらなかった習慣を取り戻すには3日は掛かる」そうなので。勉強も同じと言っていた。耳が痛い。

 それは兎も角、ドライヤーという物は病人の負担になる程度には重たい。

 もし何か助けが必要なら手を貸すつもりであった。



「なっ!」


 ドライヤーを持ち、ソファに座って待っていると玲衣のよく手入れされた綺麗な黒髪に視界を占領される。


 泡の匂い。それと太腿!肉感が、太腿に…。


 上は甘い香りを纏った髪、下は上から適度にハリのある、そして柔らかい感触と体温に感覚を支配される。


 定期的に髪を乾かしているとは言えこんな密着するのは初めて…。これはちょっと………。はっ!こういう時は妹持ち(軽いシスコン)に聞こう!


歩夢(あゆむ)!こういう時どうしてる!?」


「はっ?兄妹仲良くて良いですなぁ?あ?」


 あっダメだ、コイツの妹さん、絶賛反抗期中だった。


 脳内の親友に縋るも手段を得られなかった俺は無の境地で玲衣の髪を乾かしていく。


「………」


「   」


 力を抜いて体を俺に預ける玲衣。


「………」


「   」


 いや、気まずい!玲衣に会話要求するのは酷だけど何か話してくれ!俺は鹿苑寺(金閣)位にしか行った事ないメチャクチャライト層だから無の境地なんか行けないよ!

 更に玲衣の髪は長い。という事は乾かす時間がかかる。早く終わってくれ!






 (はぁ、はぁ、これ以上は…)


「これで良い?」


「ありがと」


 髪の状態を確認しないでお礼を言う。


 初めは指摘をされていたが、何回もやっているうちに分かるようになってきた。そこは信頼だろう。


「これからどうする?」


 一旦ドライヤーを片付けようとソファを立つと、服を引っ張られるのを感じた。

 見てみると玲衣が指先で俺の服を摘んでいる。


「おなかすいた、食べさせて」


 危険を察知した俺は咄嗟に横を向いて返事をした。


「分かった。すぐ準備する」

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