かっこいいこそ男の浪漫な件
日曜日の正午近く、俺は台所に立つ。
「何作るの?」
ソファに寝そべりながらアニメを鑑賞中の玲衣がこちらを見る。
「材料的にトマトパスタかな?」
「ん、ありがと」
アニメ鑑賞に戻る玲衣。
ここ数年、俺が料理を作るときは必ず玲衣の分も作る事になっている。
洗い物はやってくれるし何より待ってる時凄いうずうずしていえかわいいから良いけど。
イタリア人が見ていないのを確認してベーコンを切る。
オリーブオイルをひいて弱火でカリカリになるまで炒める。
塩分濃度1%位のお湯でパスタを茹で始める。
ホールトマトを入れて少し潰して塩を入れる。
まだ固いパスタと茹で汁をトマトソースに入れてアルデンテになるまで煮込む。
「そろそろ良いか」
パスタの固さを確認し、呟く。
火を消し、オリーブオイルを少量垂らす。
「うっし!」
気合を入れてフライパンを持ち、マンテカトゥーラ。
「あっつ!」
手元が狂って右手首に飛んできたトマトの熱さに手を離す。
「どうしたの!」
リビングに居た玲衣が駆け寄る。
「マンテカトゥーラしたらミスった」
「馬鹿じゃないの?何でしたの」
「かっこいいじゃん。後美味しくなるらしいし」
「本格的に馬鹿だったわ。盛り付けは私がするからにいは手を冷やして」
少しきつい言葉だが声色には心配しているのが伝わる。
更に泣きそうな目で言われたらかわいいしか感想が出ない。
「玲衣って優しいよね」
あっやべ、うっかり口に出ちゃった。
玲衣の動きが固まってみるみる顔が赤くなる。
「にいがドジばっかりするからだよ!食べるよ!」
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「にい、はいアーン」
フォークに巻かれたパスタを差し出される。
こういう時の玲衣は意地でも食べさせてくるので大人しく従う。
「なんで玲衣が食べさしてんだよ」
「だって保冷剤当てながらだと食べられないでしょ」
当たり前の様に答える。
確かに手首を冷やすにはもう片方の手で抑えなければならない。
じゃあしょうがないか。
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「今どんなか見せて」
「はい」
冷やしていた右手首を見せる。
幸い少し赤くなっているだけで水脹れにはなっていない。
玲衣は火傷をじっと見つめて・・・しゃぶり始めた。
「玲衣、何してんの!」
「だって、唾つけておけば治るって」
舌の感触がくすぐったくてなんか・・・いけないことの様な感覚だ。
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*
「はぁ〜、何やってんの私………」
ベットにダイブして足をバタバタさせる。
「しかもアーンまで………いくらにい相手でもやりすぎだよ………」
暫く顔の赤みが引かなかった。
トマトパスタを食べる度に顔が赤くなるのはまた別のお話。
火傷する系主人公、雪蔵良泰です。




