第7話:城塞都市と魔物の気配
夜明け前、船は静かに港へ滑り込んだ。
霧の中にそびえる巨大な石壁――それが、城塞都市グラディアだった。
「ここが……グラディア。まるで要塞ね」
リディアは船の縁から街を見上げる。
「かつて魔物の侵攻を防ぐために築かれた都市だ。今も地下に魔物が巣食っていると聞く」
ヴァルグの声は低く、警戒を滲ませていた。
ふたりは船を降り、街へと足を踏み入れる。
石畳の通り、重厚な建物、そして人々の表情にはどこか不安が漂っていた。
「……何かがおかしい。街の空気が重い」
リディアは呟く。
宿屋で情報を集めると、最近地下迷宮から異音が聞こえ、夜になると住民が行方不明になるという噂が広がっていた。
「魔物の気配が濃い。しかも、ただの野生ではない。魔力に引き寄せられている」
ヴァルグは街の中心にある地下入口を見つめる。
そのとき、リディアの胸元のカード〈月〉が微かに光った。
「……カードが反応してる。もしかして、次のカードが近くに?」
「可能性は高い。我らが探すべきは〈太陽〉のカード。生命と覚醒を司る一枚だ」
リディアは深く息を吸い、迷宮の入口に目を向ける。
「地下に眠っているなら、行くしかないわね」
「我らの契約がある限り、カードは我と汝にしか応えぬ。誰も代わりにはなれぬ」
ヴァルグの言葉は、静かに力強かった。
その夜、ふたりは城塞の奥にある地下迷宮へと向かった。
石の階段を降りるたび、空気は冷たく、重くなっていく。
「ここ……何かがいる」
リディアは足を止め、壁に刻まれた古い紋章に目を留める。
「魔力の残滓だ。封印が弱まっている。カードの力が、魔物を呼び寄せているのだろう」
迷宮の奥へ進むふたり。
その先に待つのは、光と影の試練――〈太陽〉の力だった。