表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

第5話:遺跡と記憶の断片




〈アステリオの石碑〉――それは、森の奥深くに眠る古代遺跡だった。

苔むした石柱が並び、空気はひんやりと澄んでいる。

リディア、ヴァルグ、そして情報屋リュカの三人は、封印された扉の前に立っていた。


「準備はいいかい? 呪文を唱えれば、扉は開くよ」

リュカが言う。


リディアは深く息を吸い、詠唱を始めた。

「――《開門の詠・エル=ノヴァ》」


石碑が震え、扉がゆっくりと開く。

中は薄暗く、壁には古代契約者たちの記録が刻まれていた。


「ここに……私と同じような人がいたのね」

リディアは指で文字をなぞりながらつぶやく。


奥へ進むと、円形の部屋にたどり着く。

その中心に立った瞬間、リディアの視界が白く染まった。


──幻影が広がる。


そこには、幼いリディアがいた。

泣きながら森を彷徨い、黒い魔獣――ヴァルグと出会う。


「……友達になって。怖いの、ひとりは嫌なの」

幼い声が響く。


「我は契約を交わす。汝を守ろう」

ヴァルグの声が重なる。


幻影が消え、リディアは膝をついた。

「……あれが、最初の契約。私が望んだものだった」


壁に刻まれた最後の文が、彼女の目に留まる。


> “契約者は、世界の均衡を保つ者。魔獣はその盾となり、共に歩む者。”


「……よくわからない、どういうこと?」

リディアは思わず声に出す。


リュカが静かに答える。

「君は“鍵”なんだ。タロットカードはただの魔具じゃない。契約者と魔獣が揃ったとき、カードは真の力を発揮する。〈月〉のカードは、記憶と幻影を司る。君が触れれば、過去の真実が見えるかもしれない」


その瞬間、部屋の中心に黒銀の光が集まり、タロットカード〈月〉が姿を現す。

カードはゆっくりと浮かび、リディアの手元へと吸い寄せられる。


「これで、汝は〈月〉の魔法を使えるようになる。だが、幻に惑わされるな」

ヴァルグの声は、静かに警告を含んでいた。


リディアはカードを見つめながら、ゆっくりと立ち上がる。

「私は……ただの令嬢じゃない。契約者として、この世界を見届ける」


リュカは微笑む。

「これで、君の旅は“逃げ”じゃなくなった。使命を果たす旅になる」


遺跡を後にした三人。

空は晴れ渡り、風は優しく吹いていた。


そして、令嬢と魔獣の旅は、新たな章へと進む。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ