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第5話 【売れるパンを作れ!社畜式商品開発大作戦!】

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 翌朝。

 ミサトは昨日の晩餐の余韻に浸る間もなく、村の広場に立っていた。


「リリィ、次のミッションは“パン改革”だよね?」


『はい。ミサト。その通りです。現在の村のパンは、栄養価はあるものの、硬度と味に大きな課題を抱えています。改善すれば新たな商品価値が生まれます』


「よしっ!それなら“商品開発ミーティング”始めよう」


◇◇◇


 村の奥様方が集まった小さな会議(広場の木陰)が始まった。


「お姉さん、パンを変えるって、どうするの?」

「うちの作り方は、代々伝わってるものだし……」


 みんな戸惑っている。無理もない。


『ミサト。まずは“失敗が許される小規模テスト”を提案しましょう』


「みんな、いきなり全部変えようって話じゃないよ。

少しだけ、“試しに作ってみる枠”を作らせてくれない?」


「試しに?」


「そう。市場調査枠ってやつ!」


 わかるような、わからないような顔をする村人たち。

 でも、“失敗しても大丈夫”と伝わったのか、やがてコクリと頷いてくれた。


「よし、それじゃあ村長の家の裏で“パン試作チーム”立ち上げるよ!」


 そして、、

 ミサトはエルナと村の奥様方と一緒に“パンの実験”を始めた。


「まずね、水分量を増やします。……え、こんなに使うの!?ってぐらい」

「ええぇ~贅沢だぁ……」


『ミサト。彼女たちは“貴重な水”を使うことに心理的抵抗があります。ここで“効率論”を説明しましょう』


「でも、考えてみて。硬くて売れないパンを100個作るより、美味しくて売れるパンを10個作った方が、利益出るよね?」


「そ、そうか……!」


 ミサトの“社畜式コスパ理論”が、村人たちの意識を揺さぶる。


「次に、村で取れる蜂蜜を混ぜます。これで甘さとしっとり感が出るから」


「お、おお……!なんか生地がふわふわしてきた!」


 手探りでの試作が続く中、次第に“それらしいパン”が出来上がり始めた。


「焼き上げは温度調整が命。だから、焼きすぎ厳禁!」


「や、焼きすぎ……?」


『ミサト。彼女たちは“焼けば焼くほど保存が効く”という固定観念に縛られているようです』


「美味しさを優先しよう!売れるパンは味が命だよ!」

 パンを焼く香ばしい匂いが、村の空気に広がっていく。


 とは言ったものの、、、

 最初からうまくいくわけがなかった。


「……これ、水分多くしたら、べちゃべちゃになっちゃった……」

 第一試作、、、失敗。


「蜂蜜入れすぎて、焼いたら焦げ臭くなった……」

 第二試作、、、失敗。


「火力落としたら、今度は生焼けだぁ……」

 第三試作、、、失敗。


「……ミサトさん、本当にパン屋さんだったんですか?」


「えっ?いや、……私OLだったから!パンは食べる専門だったんですけど…。 でも!料理動画は好きで観てたよ…」


 村人たちの視線がちょっと冷たくなり始める。

 さすがに焦りを感じたミサトだったが、リリィは冷静だった。


『ミサト。ここで問題点を整理します。失敗の原因は、火加減の調整が感覚頼りであること、材料比率が場当たり的であること。

 社畜ならここで伝家の宝刀、“PDCAサイクル”を回すべきです』


「そうだ、“行き当たりばったり”じゃダメだ……!

 計画、実行、評価、改善だぁぁぁ!」


 ミサトはメモ帳を取り出し、材料の比率、焼き時間、火加減、全てを記録し始める。


「よし、次はデータ取ってから挑戦しよう。PDCA、ガンガン回すぞ!」


◇◇◇


 翌日、、


「エルナ、この火加減で7分、蜂蜜は小さじ2杯、水分は生地に対して35%……この条件でいこう!」


 データに基づいた第4試作。

 焼き上がったパンは、、見た目こそ地味だが、指で押すと“ふわっ”と沈む。


「エルナ、試食お願い!」

 エルナが一口かじる。


「ふうわぁぁぁ、……ふわふわしてる!甘い!柔らかい!美味しい!」


 奥様方も次々にかじり、表情がパッと明るくなる。


「なにこれ、ほんとにうちの麦かい!?」

「いや〜、びっくりしたぁ!」


 数度の失敗と試行錯誤を乗り越えた末の、確かな成功だった。


「おっしっ!これなら……街でも売れるかも……!」

『ミサトの“社畜式商品開発”は成功しました』

「ふふん、これが社畜8年分の経験値よ☆」


『PDCAサイクル、成功です。データを活用した改善プロセスが機能しました』


「あーはっはっ!これが社畜式商品開発だ!」

 ミサトは心の底からガッツポーズした。


◇◇◇


 夕方、村長の元へ、、


「村長、村の新商品が完成しました。“ふわもち蜂蜜パン”です」


「おぉ……これが……パン……だと……?」

 村長も一口かじり、感動のあまり無言で涙ぐむ。


「これをトーレル商会に“試作品”として卸します。村の新たな収益源になりますよ」


「お主、本当に村を変えようとしておるのだな……!」


『ミサト。チャンスです。感動の波に乗せて、次の予算申請を出すチャンスです』

「オッケ、リリィ」


「なので村長、この“試作枠”の予算、次からもう少しだけ増やしてもらえません?」

「うむっ!よかろう!この村を、ワシらの手で輝かせようぞ!」


 交渉成立である。


◇◇◇


 夜、、

 ボロ家の粗末なテーブルに並ぶ“ふわもちパン”と麦酒を眺めながら、ミサトはしみじみ呟く。


「何度失敗しても、諦めなければ必ず成果は出るんだよ……ブラック企業で学んだことが、ここ、異世界で役立つとは思わなかったけどさ」

『はい。失敗から学ぶ姿勢、それがミサトの最大の武器です』

「まだまだ行ける!次は“売り方”でしょ?」


 異世界社畜OLの挑戦は、まだまだ加速する。



            続

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