第21話 【守るための商売戦略】
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カッサ村の一団が去った後、湯ノ花の里には微妙な空気が残っていた。
武力で押されそうになった恐怖と、交渉で押し返した安堵が入り混じっている。
「……ふぅ。危なかったなぁ…やっぱり言葉の通じない輩は難しいなぁ……」
ミサトは村長の家の縁側に腰を下ろし、ぐったりと肩を落とした。
『お疲れ様です。ミサト。今回の交渉勝率は92%と推定されます』
「んぁ?残り8%は何よ〜?
追い返したんだから100%でしょうが!」
『相手が急に話を聞かず、暴力に訴えるパターンがあった事です』
「ぬぬぬっ!!やめて、マヂでそれ心配したから、、それ。思い出すと…あー!胃が痛くなる!」
村長も隣に腰を下ろし、湯呑みを差し出してくる。
「今回の件で、村の者たちはミサトの力をまた実感した。じゃが……今後も同じような者が来ぬとは限らんのぉ…」
「ですね〜。むしろ温泉が有名になれば、もっと目をつけられます」
ミサトは頭の中で計画を描く。
「まず、見張り台の設置。次に交易路の整備。そして、、」
『はい。ミサト。防衛力向上は理解しますが、それ以上に安定的な利益源を増やすのが先決です』
「わかってるって。蜂蜜パンと温泉まんじゅうだけじゃ弱いもんね」
ミサトは縁側から立ち上がると、村人たちを集めた。
◇◇◇
「みんなー!次は《湯ノ花ブランド》を広めるよ!」
村人たちが首をかしげる。
「湯ノ花ブランド??」
「そう、温泉水を使った石鹸、化粧水、温泉卵、あと……ゴブ次郎の肉まん…とか?」
『はい。ミサト。最後のゴブ次郎はブランド感が消えます』
リリィが即座にツッコミを入れる。
「あははっ!とにかく“ブランド路線”で行くから!
細かい話しが決まったら、またみんなにお願いするね〜!」
『はい。ミサト。あと、外敵を防ぐために同盟村を作る案はいかがでしょう。近くにシルヴァン村があります』
「お、いいねそれ。共同防衛と共同商業。カッサ村は保留だけど、シルヴァン村かぁ……」
『はい。交渉用の資料、今作りますか?』
「お願い、リリィ。ついでに可愛いロゴもつけて」
『はい。ビジネス戦争の準備をしているのに、ロゴは可愛い方向なんですね』
「見た目は大事よ〜!気合い入るから!!」
◇◇◇
夕暮れ時、ミサトは湯ノ花の里を見渡しながら、小さく笑った。
戦うだけじゃなく、守るための商売。
この村は、必ずもっと大きくできる、、、
そんな確信があった。
翌日、ミサトはリリィと共に森の集落へ向かっていた。
「ここがその集落、シルヴァン村かぁ」
『はい。ミサト。人口は約五十名で、木材と薬草の取引に長けています』
森の入り口で迎えたのは、小柄で眼鏡をかけた村長だった。
「湯ノ花の里の方ですね。お噂は伺っています」
「ありがとうございます。実は、互いに助け合うための同盟をお願いに来ました」
ミサトからリリィが作った資料の説明を受け、村長はしばらく考え込み、やがて頷いた。
「外からの圧力は我々も感じています。温泉の権利を狙う連中は油断できません。共に守りましょう」
ミサトはほっと息をつき、笑顔を返す。
『順調な交渉予測、95%です』
「リリィ、さっすが私のパートナーね」
こうして、湯ノ花の里は初の同盟村を得て、外敵への備えと商業発展の基盤を固めていくのだった。
◇◇◇
その日の夕暮れの縁側でミサトはリリィに話しかけた。
「ねぇ?リリィ、もしカッサ村みたいな他の敵が攻めてきたら、どうやって村を守ればいい?」
『はい。ミサト。まずは侵入経路の把握と、効果的な防衛設備の設置が重要です。村周辺の地形データを分析しますね』
リリィの声が静かに響く。
数分後、リリィはキューブからスクリーンを映し出し、村の地図を映し出した。
「はい。ミサト。ここが三つの主要な侵入ポイントです。第一は北の山道、第二は東の川沿い、第三は南の草原です」
「ふむふむ…なるほど。じゃあそこに何を置けばいい?」
『はい。ミサト。まずは見張り台を三か所設置。次に、トラップの設置を提案します。落とし穴や警報ベルなどです』
「落とし穴って、深いやつ?」
『はい。効果的な防御のためには、深さ1.5メートル以上が推奨されます』
「うわ〜。村人が間違って落ちたら大変じゃん」
『はい。ミサト。使用箇所には目印やカバーを設置し、安全管理も徹底しましょう』
「わかった。あとは?」
『はい。ミサト。夜間警備の交代制を提案します。疲れを溜めずに常に警戒を維持するためです』
「なるほどね。ゴブ次郎たちにも手伝ってもらおう」
◇◇◇
話しが纏まると、ミサトは皆を集めて説明した。
「みんな!村を守るために、防衛設備を作ろうと思います。見張り台の建設、トラップ設置、交代で警備をお願い!」
村人たちは声を合わせて答えた。
「「「おーー!!」」」
ゴブリン軍団も声を合わせて答えた。
「「「おぉぉぉー!」」」
工事が始まり、見張り台の柱が次々と立てられていく。
トラップ用の穴も掘られ、草木で巧妙に隠された。
リリィは新たに設計した《自動警報ベル》の原理図を説明した。
『ミサト。このシステムで大丈夫です。
これで敵が通ると鈴が鳴って、すぐに気づけます』
「あははっ!やっぱ天才かよ、リリィ!」ミサトが笑った。
数日後、村は見違えるほど堅牢な守りを手に入れた。
「ボス!これでカッサ村が何回来ても大丈夫だな」
とゴブ次郎。
ミサトは頷きながら、村人たちの努力に感謝した。
「みんな、ありがとう。これからも一緒にこの村を守ろうね!」
リリィが横からぽつり。
『はい。ただし、攻めて来たらまずは交渉が先がおすすめですけどね』
「そうね、リリィ。でも万が一に備えるのは悪くないでしょ? “国が守ってくれる”わけでもないからね…」
『はい。ミサト。そうです。交渉と防衛、両方が勝利の鍵です』
こうして、湯ノ花の里の守りは固く、商いもますます盛んになっていった。
続