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第14話 【ミサトお風呂に入りたい!温泉大作戦】

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 朝の巡回を終えたミサトは、ため息をつきながら村の中心で腰に手を当てた。

「……やっぱさ〜、、インフラって大事だよね〜」

『はい。ミサト。今さらですね』

「だってさ、ここ水道も電気もないじゃん。

 まあ電気はともかく……ちゃんとお風呂に入りたいなぁ…って思ってさ〜」

『ミサト。また唐突ですね』


「一週間以上まともに湯船入ってないんだよ! 神のおかげでなぜかスーツは汚れないけどさ…そろそろ体から会社の残業臭じゃなくて、獣臭しそうだわ」

『はい。ミサト。それは緊急案件です』


◇◇◇

 

 ミサトは村長の家を訪ねた。

「ねぇ、村長、お湯ってどっかに湧いてない?」

 

 村長はひげをしごきながら、少し考えてから言った。

「少し行ったとこの山の奥に行けば、湯気の立つ岩場があったはずじゃが…。昔は怪我人を連れて行ったが……道が少し険しくてのう」

「ふぁぁっ!?湯気!?それって温泉じゃない!」

 ミサトの目がギラリと光る。

『ミサト。ビジネスの匂いを察知しましたね』

「当たり前でしょ〜。温泉は最高の娯楽であり健康施設。旅人呼べるし、村の経済活性化にもなる

 よっしゃー!確認しに行くぞー!!」

 

 村長は苦笑しつつ、「怪我せんようにな」と送り出した。


 翌日、ミサトはリリィのナビでゴブ次郎たち数名を連れて山道を登っていった。

 途中、獣道のような細い道や、苔で滑りやすい岩場を越えるたびに、リリィが注意を促す。


『ミサト。そこ足場が悪いです』

「わかってる……わかってるけど、足が滑るぅぅ!」

 

 尻もちをつきながらも、目的地を目指すミサトの執念はすごかった。


 山道を進むにつれ、道はどんどん狭くなっていった。足元は湿った落ち葉で滑りやすく、時おり小さな沢をまたがなければならない。


「うわっ、冷たっ!」先頭のゴブ次郎が足を水に突っ込んで飛び上がった。

『ミサト。次の渡り石はコケが生えて滑ります。要注意です』

「よし、じゃあこうやって……うわぁっ!?」

 ミサトは足を踏み外し、危うく尻から水に落ちそうになる。後ろからゴブ三郎が慌てて引き留めた。


「だ、だいじょぶ? ボス、ほんとに温泉なんてあるの?」

「ありがとう!うん!絶対あるよ、、

 湯気が呼んでるのよ!」


 そう言った矢先、山の上からガラガラと音が響いた。

 振り返ると、小石混じりの崩れた土が道をふさぐように転がり落ちてくる。


「ひえっ!? 落石!?」

 全員が慌てて岩陰に飛び込む。幸い大きな石は外れたが、道は半分塞がれてしまった。


「……これ、帰りが大変だな」ゴブ次郎が額の汗を拭う。

『ミサト。道の安全確保は必須です。観光客が来るなら特に』

「そうだね〜、、 でも、今はまず現地確認が先!」

 ミサトは泥だらけの靴を気にせず、さらに奥へと進みだした。


 やがて、谷間から白い湯気がふわりと立ちのぼるのが見えた。


「……あった……!」

 

 近づくと、岩の間から透明なお湯がこんこんと湧き出している。ほのかに硫黄の匂いが漂い、湯面には小さな泡が弾けては消えていく。

 ミサトは両手ですくい、温かさを確かめて思わず顔をほころばせた。


「はぁぁ……極楽……」

『ミサト。いきなり服を脱ぎ出さないでください。調査が先です』

「あっ、、入っちゃダメな感じ……だよね…」


 温泉の水質、温度、流れを確認しながら、ミサトの頭の中ではすでに計画が走り出していた。


「上のほうは熱いんだな……ここに湯小屋を作って……男女別にして……旅人用の宿泊も作れば……いや、道が険しいからパイプで村まで繋ぐか…?」

『はい。ミサト。商売のことしか考えてませんね』

「だってさ、これなら村がもっと豊かになるじゃん。

 温泉と美味しいご飯……あぁ、最高の組み合わせ!」

 ミサトの瞳は、もう完全に経営者の輝きを帯びていた。


 ミサトが温泉の湯加減を確かめていると、、

 背後で「プルルル…」と不思議な音が響いた。

 振り返ると、岩陰から小さなモコモコした魔物が現れた。


「な、なんだあれは?」ゴブ次郎が身を引いた。

 

 それはミニサイズの《湯守スライム》とでも呼べそうな、青い半透明のスライムだった。

 体からは温かい蒸気を放ち、湯気と同化して見えにくい。


『ミサト。スライムの調査を推奨します』

「はいはい、ちょっと待っててね」ミサトは声をかけた。


 魔物はこちらをじっと見て、プルプルと震えたかと思うと、湯に飛び込んで泳ぎ始めた。

 ゴブ次郎がそっと近づくと、スライムは逃げずに温泉の中をくるくる回る。


「なんだか可愛いな」ミサトが微笑む。

『ミサト。彼らは温泉の“番人”のような存在かもしれません』

「番人?」


 そのとき、スライムが急に湯面から飛び出し、ゴブ次郎の足元にぴょんと飛びついた。

「わっ!」驚いたゴブ次郎がバランスを崩し、温泉のふちで大きく転びかけた。


「ゴブ次郎!大丈夫か!?」ミサトが手を差し伸べる。

「すみません、このスライムがちょっと人見知りボンバーしちゃって……」

『はい。そうですね。このスライムは温泉を荒らす魔物や汚染を防ぐ役割があるらしいですが、警戒心が強いみたいです』


 ミサトはスライムたちに向かって優しく話しかけた。

「仲良くしようね。ここをみんなで守るって大事なことだよね、、私たちここ壊したりしないから…」


 やがてスライムは落ち着きを取り戻し、温泉の中で穏やかに泳ぎ始めた。

 

 ゴブ次郎は笑って言った。

「こいつら、温泉のアイドルだな!」


『ミサト。トラブルも早めに解決。いいチームワークです』

「ええ、これで温泉も安心。さあ、これから本格的に開発を始めましょう!」



            続

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