魔法少女とは、なんぞ?
書けば夢まで侵食してこないから・・・。
設定はほぼない。
クルン、グゥルン!、ブウォン!!
ペルビンカ・ブルーは、体の前で30センチほどのバトンを3回転させた。
1回転するたびに、バトンは伸び姿を変えた。
2回転目は、ワンドサイズ。
3回転目が終わった際には、
術者の背丈を超え、180センチほど。
先端の装飾もきらびやかなスタッフに。
重さも感じさせず、
自身の背丈よりもだいぶ大きなスタッフを、
眼前にかざし、構えた。
地面もない空中区間なのに、コツンと軽やかな音がなり。
スタッフの末端部から光が走り、空間に溶けていった。
「結界、再構築完了」
幼い、少年のとも、少女ともつかない声。
淡々と、熱のこもらない声。
「りょぉかぁ~い!!・・・バインド。バインドも欲しぃ!!」
近くの建物の屋上を蹴り、
スタッフを構えた術者の脇を弾丸のように飛び去るレッドローズ。
敵対する羽をもつ獣型生物が飛ぶように、
自身に向かってくるのを見て、慌てたように振り返る。
なお、体はそのまま敵対生物に向かい移動中。
「飛び出しすぎです。私、間に合わないわ。」
「ブルー。お願い。」
術者の脇に、ふわりと浮き上がってきた、あきれ顔のホワイトリリーと。
同じく浮き上がってきて、矢をつがるブラックリリー。
獣型生物のさらに奥にいる人型生物に狙いを定めている。
スタッフから両手が離され、パチンと音を立てて合わせる。
「・・・バインド」
次の瞬間、支えもなく自立しているスタッフの先端から光があふれる。
レッドローズを追い越し、敵陣地で茨のような植物が敵に巻き付く。
獣型の生物の移動は阻害され、速度が落ちた。
人型生物にも巻き付き、その顔が驚愕に歪む。
「ありりっと!!叩き落しちゃうよぉ。」
ナックルグローブを更に握りこみ、
空中でステップを踏みながら、獣型の生物が叩き落とす。
落ちた敵は目に見えない網に捕らえられていく。
「でわ、私もいきますね。えぃっと!!」
ホワイトリリーはフワフワと、滑るように空間を移動し、
いつの間にか握られていた鞭を横薙ぎに振るう。
獣型の生物は近接する仲間を巻き込み、
目に見えない壁を滑るように下方に落下。
やはり目に見えない網に捕らえられていく。
弓矢は何に邪魔されることなく、奥の人型生物の頬をかすめ、
何もないはずの空間にタァンと音を立てて突き刺さった。
「見えるだろ?どうするコマンダー?」
新たな矢をつがえつつ、ブラックリリーが口を開く。
大きな声ではないため、距離的には聞こえないはず。
だが、コマンダーと呼ばれた人型には聞こえた。
自身の手下として連れてきた生物はほぼ捕らわれ。
自身も動けず、矢に狙われている。
今回も、撤退するべきだろう。
両手をゆっくり顔の横に挙げ、降参を伝える。
本日の戦闘も防衛側。
魔法少女(?)の完勝で終了した。
今から少し前。
地球を欲する他星人、宇宙生命体が活発に活動を始めた。
生物が生きられる、ほど良い大地。
強力な毒を含まない大気や、
大きすぎない重力。
高すぎない技術力。
新たな活動拠点、新たな繁殖環境を求める者たちには、
まさしくねらい目であった。
しかし、宇宙管理組織は原住民が存在しているのに、
他星人、宇宙生命体がそれを奪うのはよくないと判断した。
素質のありそうな地球人の元に、宇宙生命体がやってきて、
地球防衛の手伝いを依頼することにしたのだ。
宇宙管理組織は一応中立で、
攻められる星は大変だろうから、
多少の手助けはしてあげようというスタンス。
防衛行動はその地の生き物がするべきだよね?っと
勧誘に来るのだ。
力の差、技術力の差。
もろもろの差を埋めるために、管理組織は器を貸し出し、
戦闘にもルールを設定した。
防衛行動のための器は、通常の地球人の体よりも強い。
戦うための器なのだから。
ただし、その器に性別はない。
みんなは魔法少女というけど、
性別はないのだから少女ではない。
魔法生命体、たんなる器。