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理想のヒロインは汚く生き足掻く  作者: 蟹電波
絶対正義の切断男
26/27

新しいお友達(敵)

「リベルさん! カフェテラスの場所取りしておきました!」

「紅茶ですわリベル様」

「ケーキ持って来ましたよリベル様」

「皆さまありがとうございますわ」

 聖女もといシャノンとの決闘から暫く経ち、私の日常は安寧を取り戻していた。

 クラスメイトは私の為に動いてくれる。それに対して私は万人受けする笑顔を返すと、それだけで皆が喜ぶのだ。

 本当にこのスキルの好感度上昇だけは使える。もういっその事他の能力(オプション)は外して貰って構わないから好感度上昇スキルとして活躍してくれないだろうか。無理なんだろうな、あの邪神(肉塊)がそんな喜ぶことをしてくれるとは思わない。

 スキルの事を考えた為か、自然と私はあの決闘の後の事を思い出していた。

 最終的にあの決闘の結末は無効試合という事で決着した。

 あの時点で私の勝ちは決まっていたのだが、私自身が待ったをかけたのだ。

「待って下さい。この決闘は無効試合という事にして貰えませんか?」

 勿論観客(ギャラリー)の生徒や審判のカボナ先生も不満そうだった。

「どう見たってリベル様の勝利でしょう」

「誰がどう見ても明白だよな」

「どうしてなのか聞いても宜しいでしょうか、リベル様」

「勿論ですわカボナ先生。この決闘ですが元々聖女様と私の物でした。しかし当の聖女様は放棄なさっている。その後の戦いはシャノンさんとの私闘の様な物で、当事者が不在でこんなグダグダな戦いを正式に決闘として記録するのは、私としても不服ですわ」

 私のそれっぽい言い訳を聞いて周囲の反応は。

「決闘の結果だけでなく正当性にまで拘るなんて、なんて出来た人なんだ!」

「まさに貴族の中の貴族! 一生ついて行きますわリベル様」

「リベル様がそこまでおっしゃるのでしたら分かりました。この試合は無効試合とさせて頂きます」

「ええ、ありがとうございますわ」

 称賛され無事受け入れられたようだ。

 因みにこれについて決して私が改心しただとかそう言う訳では決してない。正直な所、私本人としては勝ちは勝ちなんだから誰に文句を言われようが、スキルを掛けて(ミズガって)了承させる位の気持ちで山々だ。

 しかし当の世界一理想の女の子(スキル)がそれを許してくれない。

 もしここで私がこの決闘の結果を受け入れてしまうとしよう。今後この国で、少なくともここに居る生徒達は今回の盤外戦術なんでもあり、ルール無視上等の決闘を良い事として実行してしまう様になってしまう。

 私の関係無い所でやってくれる分には「へぇ、面白い事やってるわね」で終わりだが、今後この国を担う若者達にこんなやり方が正当な方法だと認識されてしまうと、一気にこの国は世紀末顔負けの力だけがルールの血生臭い世界が出来てしまう。

 そんな事をすればすぐに私の生活も脅かされ、悲惨な生活が待っていることだろう。

 なのでここで否定しておく必要があったんですね(遠い目)

 一つだけよかった点を挙げるなら、案外すんなり皆に受け入れられた点だ。もし料理長や家庭教師(ボンドル)の様になっていたら面倒な事この上なかった。

 これは仮定だが今回は無理やり改変した事を訂正する判定では無く謙虚な対応判定になったのではないかと考えている。

 何とか暴れた(戦闘)の後始末を終わらせた後、祝勝会(この場合に合っているのかは不明だが)の話も出たのだが、私は適当な理由を付けてすぐに家に帰った。

 メイドへの挨拶もそこそこに、私は自室に直行し部屋に鍵を掛けた。

「どうせ見てるんでしょ、ゴルゾニーヴァ」

 私は誰も居ない部屋で虚空に話しかける。一見すると寂しい行為だ。

 しかし誰も居ない筈の部屋で、私の呼びかけにすぐに反応する声があった。

「げっひゃっひゃっひゃ。お前は毎度俺の想像の上を行ってくれるなリベルぅ? 最高だぜ!! げしゃしゃしゃしゃ」

 下品で不愉快極まりない声音で最大限喜びを表す、肉塊神こと邪神ゴルゾニーヴァだ。

「正直、あの糞アマの私兵に勝ちやがるとは思いもしなかったぜ。これはマジの称賛に値する。よくやったな」

「御託はいいのよ、その女神の事について教えなさい」

 私はそこに居るのか分からないが中空を睨みつける。

「あ゛ぁ゛? ベルシアについてだとぉ?」

 女神について尋ねると途端機嫌を悪くするゴルゾニーヴァ。

「あの性格最悪で情緒が終わってる糞女の事が知りたいだと? 何が知りてぇ、あいつの糞話なら一つの文明がおこり衰退するまで話せるぜ。俺様が唯一アイツの事で認めているのは俺様の知ってる何よりもカスって事だけだからな」

 正直幾つか気になる事はあるが今はまず結論を聞くべきだろう。

「今回の一件で私は完全に女神と敵対したと思った方がいいのかしら」

「チッ! もっと面白い事を聞けよな」

 大きく舌打ちすると話始める。

「仰る通り今回の事でお前は晴れて女神の怨敵となった訳だ。そりゃそうだろう、しょうもない能力しか持たない虫だと思ったら、周りを害せるスキル()を持った害虫だってんだからな。あの聖女とか言うガキにも睨まれてるし、まあ恐らく最重要の問題として処理されてるだろうな」

「チッ、面倒な事になったわね」

 私も大きく舌打ちをする。

「さっきの決闘は女神に見られていたと思うべきかしら?」

「いんや、あの戦いを女神は見てねぇな。お前の活躍のおかげで俺様にも少し力が戻ってな。お前の行動は女神の目に入らない様にした。前も言ったが女神も信者を介して世界を見ている。それを全て妨害(ジャミング)するのは無理だがお前の周りやお前自身を見えなくするくらいは出来るようになった。まあこっちの手が全て筒抜けってもの公平性に欠けるしな。あまりにもお前に不利じゃ悲劇(喜劇)にすらならずおもしろくねぇ」

 ゴルゾニーヴァの手助けをしたと思うと素直に喜べないが、この情報は朗報だった。主役喰い(プロタゴイーター)は切り札の一つなのだ。奥の手は一枚でも多いに越したことは無い。

「まあ女神に見えないだけでその場に居る奴にはガッツリ見られてるから、聖女とか女神の関係者に見られたらチクられて終わりだがな。しょうもないヘマで死ぬなんてのは冷めるからやめてくれよ」

 ゴルゾニーヴァが心配してるんだか、してないんだか分からない事を言ってくる。こいつが心配してるのは自分の娯楽だけで、私の事は心配していないのは分かる。

「なるほどね、分かったわ」

「それじゃあこれからも俺様の為にどんどんクソアマの妨害をして笑わせてくれよ」

「それは違うわ」

 私はゴルゾニーヴァのその発言に口を挿む。私がゴルゾニーヴァの為に行動する?

「私は私の生活の為に女神と戦うの。私に舐めた真似をしてくれた女神に復讐する為にね」

 それに、と私は続ける。

「私の復讐相手には貴方も入ってるのよ。私をこの世界に転生させた事、後悔させてやるわ」

 私はゴルゾニーヴァに敵意を剝き出しにする。邪神の手先として転生させるのはまだいい。だけどコイツは私の事を捨て駒の一つとしか見ていないのだ。あまつさえ死ねば面白い位に思っているのだろう。

 それは許せない。絶対にこいつにも痛い目を見て貰う。

 私の決意表明をどう受け取ったのか、ゴルゾニーヴァはしばし沈黙すると。

「……ぷぷ、ぷひゃひゃ、あひゃひゃひゃあ! やっぱりお前は最高だぜリベルぅううう! 今まで何度も人と関わったが神々(俺様達)に直接敵対する人間()は居なかった。コイツは面白れぇ!! お前のその発言が大言壮語じゃない事を祈ってるぜ、リベルぅ?」

 その発言を最後にゴルゾニーヴァとの通信は途切れた。





「どうしましたリベル様?」

 その声に私の意識は現実に戻される。どうやらかなり長い時間回想にふけっていたらしい。

 声の方に振り向けば号泣ちゃんが不思議そうな顔でこちらを窺っている。

「すみません、少しぼうっとしていましたわ」

「やっぱりまだ決闘の疲れが取れませんか?」

「今日のお茶会はお開きにしましょうか?」

 ぼうっとしてた理由は考え事をしていたからだが実際に身体は凄く怠い。

 かなり副作用を抑えているとは言え主役喰い(プロタゴイーター)を使ったのだ。全身は筋肉痛だし魔力の著しい減少により風邪の引き始めの様な症状がある。因みにこれが重篤になると魔力欠乏症と言うらしい。

 時間を見ればそれなりに経っていたので、私はその意見に素直に従う。

「そうですね、そうしましょうか」

「片付けは我々におまかせ下さい!」

「あら、良いんですか? ありがとうございますわ」

 私がにっこりと微笑めばたちまち笑顔になるクラスメイト達。もう私が偶像(アイドル)となって宗教でも開いた方が良いかも知れない。いやそんな事をすればたちまち世界一理想の女の子(バカスキル)が暴走して逆に安寧を壊すんだろうな。

 私がそんなしょうもない事を考えていると、誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえる。

「リベル、またそんなしょうもない事にスキルを使いやがって! お前はガキか」

 その声に私は不快……もとい深いため息を漏らすと声の主に向き直る。

「……何か御用でしょうか、シャノンさん」

 そこには、全身に包帯を巻いたシャノンが立っていた。別に手心を加えた訳では無いが、あの爆発で死んでいなかったらしい。

 私の反応に、シャノンは指を指しながら怒声を上げる。

「何か御用でしょうか? じゃねぇよ!! お前も大人なんだからちゃんとそれらしい行動しろって言ってんだ!!」

 シャノンの発言に周りのクラスメイトがムッとした反応を見せるが、その前に私が口を開く。

「皆さん、申し訳ありませんが先に行って下さいますか? シャノンさんはどうやら私に用があるらしいので」

「大丈夫ですかリベル様? こんな奴の前に一人で」

「それなら大丈夫ですよ。彼は()()()()を持ってるので私の様な()()()女生徒に暴行を加える様な真似はしないですよ。ねぇ、()()()()()()?」

「……嗚呼、当たり前だ」

 私が強調して聞くと、嫌々ながらシャノンは了承した。

 その言葉に不承不承ながらクラスメイトは同意し、その場を後にする。

「……なんか雰囲気変わった?」

 私の疑問に、シャノンもまた首を傾げながら答える。

「俺は元々こういう話し方なんだよ。善くあろうとしてあんな感じになってただけで。そう言うお前も、何か違くない?」

 シャノンもまた私の態度の変化に言及する。

「貴方には私のスキルが効かないんでしょう? それならデメリット面も表れないだろうし私もまた素がこういう感じなだけよ。皆を帰したのもその為だしね」

「デメリット? 何の話だ?」

私事(こっち)の話よ。それよりもマジで何の用なのよ? 公には無効試合だけど私と貴方の間ではもう決着がついたでしょ、負けた癖にまだ私に関わるの? それとも何、アンタ自分の調子が戻れば懲りもせずにまた襲い掛かってくるようなしょうもない男な訳? 正義のヒーローが聞いて呆れるわね」

 私の煽りにシャノンはカッとして応える。

「誰がしょうもない男だ、そんな事するか! それに拘るも何もお前のせいで俺はBクラスからCクラスに落とされたんだぞ!! 同じクラスなら嫌でも関わるわ!!」

「完全な自業自得じゃない……」

 シャノンの現状に私は呆れて反応する。

 決闘後、聖女への反抗的な態度で、彼は私のスキルの洗脳を疑われてCクラスへと移籍させられた。

 まあ聖女にとってはスキルに掛かっていてもいなくても、命令違反する様な駒は邪魔だろうし体の良い厄介払いをされた訳だ。

 私とシャノンが互いに潰し合えばよし。私の洗脳スキルを知った上で渡している以上失っても痛くない戦力だと思われているんだろうな。

 あまりに哀れで私は関係は無いが少し気になっていた事をシャノンに聞く。

「そもそもだけどあんたなんでそんなに悪に抵抗があるのよ?」

「戦ってる最中ズバズバ言い当ててたじゃないか。分かっているんじゃないのか?」

 シャノンの質問に私は当たり前の様に応える。

「他人の本心なんて分かる訳ないじゃない。私に出来るのはあくまでこうじゃないかって推測だけよ。本人に確認しないと本当の事なんて分からないわ」

「その推測の精度が気持ち悪い程高いのは何なんだよ……」

「慣れよ慣れ。ほら、アンタも早く答えなさい」

 催促する私に、嫌そうながらぽつりぽつりと話し出す。

「お前の推測通りだよ。学校に虐められてる奴が居てさ、俺どうしても見過ごせなくて止めたんだよ。そしたら虐めてた奴に目を付けられて、次のターゲットにされちゃってさ。クラスメイトは誰も助けてくれなかった。先生もふざけてるだけだろ? なんて言って本気で取り合ってくれなかった。虐められてた奴に一緒に先生に証言してくれって頼んだんだけど、……そいつにも裏切られてさ。……そして……事故に遭いそうな子供を…………庇って」

「ふぁあああ……」

 私が大きな欠伸をするとシャノンが睨みつけてくる。

「欠伸すんじゃねぇよ! お前から聞いて来たんだろ!!」

 憤るシャノン、されど私は動じずに答える。

「要するにあんたの行いが認められず誰も助けてくれなくてストレス爆発したって話でしょ? 想像通り過ぎて期待して損したわ」

「人の人生をそんなまとめ方……」

 私の態度に、シャノンは呆気に取られる。

「それに、認めていないのはあんた自身もそうじゃない」

「え?」

「だって自分が満足してるなら他人にどうこう言われようがいいじゃない」

 シャノンは真っ直ぐにこちらを見つめる。

「貴方だけでも認めてあげないとその英雄譚は誰にも認められずに終わってしまうのよ」

「俺が……認めないと……」

 少し俯き考え込むシャノン。その隙に私はサッとその場を離れる。

「という事で後の清掃はよろしくね」

 ガバっと顔を上げるシャノン、私とカフェテリアの机を交互に見つめる。

 その机の上には私達が食べた物の残骸が散乱している。

 シャノンの頭がちゃんと働き出す前に私はクラスメイトの後を追いかける。

「おいちょっと待て!……たく」

 一人になったシャノンは仕方なくカフェテリアの片付けを始める。本来無視しても誰にも咎められる事は無いだろうが、それでもやってしまうのは彼の善性故だろう。

「やっぱりあいつは悪だ! しょうもない事しかしないが悪で間違いない!!」

 掃除を押し付けられた怒りもあってそんな事を口走るシャノンだが、しかしそれでも今の自分に一刀良断(スキル)で彼女を斬る事は出来ない事もまた理解していた。

 自然、作業していた手を止め、考え込んでしまう。

『リベルは悪だ。でも普通の悪じゃない。今まで出会った悪は滅ぼされるべき物だった。でもあいつはそうじゃない。今なら認められる。俺はあいつに強く惹かれる物がある。今までの下らない悪じゃない。こんな調子じゃ何百、何千戦ったって同じ結果を辿るだけだ……だから!』

 シャノンはその目に強い意志を宿す。

『あいつの近くで見続ける。俺の正義を見つける為に、あいつが一体何者なのかを知る為に。それでもあいつが悪であったなら、その時は今度こそ……!!』 

 決意を新たにシャノンは机に残っているゴミを片付けて行くのだった。

 これにて一章は終わりです。リベルは無事に異世界で理想の生活が出来るのか。シャノンは自分の正義が見つかるのか。それについて次の章でやっていくつもりなのですがまだ執筆が出来ていません。

 暫く待ってもらう事になるとは思うのですがエタるつもりはありませんので楽しみに待っていて貰えるととてもありがたいです。

 この章で楽しいと少しでも思って貰えたのなら次章も楽しみにして待っていて下さい。出来るだけすぐに更新できる様に頑張ります。

 最後に読んでいただき大変ありがとうございました。

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