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理想のヒロインは汚く生き足掻く  作者: 蟹電波
絶対正義の切断男
16/27

情報収集 ver.シャノン

 聖女神教会決闘証明書

 この決闘はラクリ・ヴァル・ソナレの主張に対し、リベル・フォル・エスピリアが異を唱えその正当性を判断する為の決闘である。


 ラクリ・ヴァル・ソナレ側代表 シャノン・レイズ

 リベル・フォル・エスピリア側代表 リベル・フォル・エスピリア


 この決闘の勝敗により正否を判定し、敗者は異を唱えない事とする。

 以下は決闘の規定であり違反をすれば即刻反則負けとする。

・決闘当日までの両代表者の戦闘行為を禁止します。

・決闘の代表者の命を脅かす攻撃、及び中位以上の魔法の使用を禁止します。

・模擬剣と杖以外の武器魔道具の持ち込みを禁止します。

・当事者以外が決闘に加わる行為を禁止します。

・己の技術を使い戦って下さい。

・全ての判定は審判が公平に判断します。

・審判役は王立魔法学園ラヴィノギアの講師より選任します。



 1日目

 聖女との邂逅から次の日、朝一番にこの冗談みたいな書類が届いた。

 要約すると反則せずに正々堂々戦いその勝敗で判断します。レディファイ! みたいな感じか? 因みに己の技術を使いにはスキルも含まれるらしいので相手は全力でチートスキルを使ってくるだろう。

 何が正々堂々なのか、考えれば考える程やめたくなってくる。

 因みにこの国、レフィリア王国は普通に裁判もあるし今現在この決闘書を使って何かを判断する事など殆ど無いらしい。それでは何故こんな物があるのかと言うと、簡単に言えば聖女の嫌がらせだ。糞が。

 元々は本当にしていたみたいだが今現在は形骸化した物が残っているのみで、イベントや友達と喧嘩した時や今回の様に嫌がらせ目的で使われるのが殆どらしい。

 あの聖女の事だ。女神から私のスキルの概要を聞いて戦闘向けで無い事を知った上でこの決闘なのだろう。死んだら御の字、生きていても決闘でコテンパンにして「調子乗んじゃねぇぞ」と釘を刺す狙いってところか。分析すればするほど聖女か怪しくなってくる。聖なる女と書く訳だが聖なるの意味を辞書で勉強して来い。

 いくら聖女の分析をしたところで今回の一件が解決する訳じゃ無いので分析対象をシャノンに変える。

 つい最近まで名前すらも知らなかったのだ、まずは情報収集から始めよう。

「と言っても学校があるから情報収集は休み時間とかに限られてくるんだけどね」

 限られた時間は有効に使うべきだ。ひとまず私は学校へ向かう事にした。



「と言う訳で皆にはシャノンの情報を集めてきて欲しいのよ」

 私は学校に着いてすぐにクラスメイトにそう呼びかけた。

 流石にクラスメイト全員で動いたら怪し過ぎるので数名だけだが。

 今回の一件の原因とも言うべき二人と号泣ちゃん。それと私の手間賃をネコババした平民だ。

 ストレートに弱みを探れと言うとスキルが悪影響を及ぼしそうだったので、名目はシャノンがこちらにずるをした際の切り札を持っておきたいという事にしておいた。

「必ずリベルさんのお役に立つ情報を掴んできます」

「あの男の黒いうわさを握ってきますわ」

 例のバカ二人はノリノリだ。この二人、貴族特有の長ったらしい名前をしていたのよね。面倒だ……便宜上男子生徒は体つきがガッチリしているのでゴリラ。女生徒の方は狐顔だから狐でいいでしょ。

「私でお役に立てるか分かりませんが頑張ります……!」

 号泣ちゃんはかなり緊張している。あまり期待はしていないがこの件に関わっている人物なので声を掛けさせてもらった。ダークホース的活躍に期待しよう。

「まあ俺も関係あるっちゃあるんで頑張らせて貰いますよ」

 恐らく昨日の一件は仕組まれていた事なのでどうしたって買えなかったと思うが、こいつはどさくさに紛れて手間賃をネコババしたので招集しておいた。なんとなく乗り気ではなさそうだがくすねた数千円分の働きはして貰う。呼び方は羅生門の下人みたいな逞しさを感じるので一先ず下人でいいか。

「二日後の放課後にまた集まって情報を聞きたいと思いますわ。それじゃあ各員の活躍を期待しています。解散!」

 朝礼が近づいていたので一先ず解散する。皆には周りの情報を頼んでいるので私は本人を直接尾行する事にした。



 対象、シャノン・レイズの調査開始。

 対象はBクラスに所属、Bクラスでも上位の成績を保持している。家は貴族では無く普通の平民。以下が対象の観察記録である。

「シーリアさん、重たいだろうし俺も運ぶの手伝うよ」

「あ、ありがとうシャノン君」

「この位どうってことないさ」

 昼休み、シャノン(対象)は日直の女生徒が運んでいた宿題の運搬を手伝う。




「ベルトールさっきの本もっと見せてくれよ!」

「バッカこんな所で見れる訳ねぇだろ。寮に戻るまで待てよ」

「コリン、ベルトール。学校に不要な物を持ってくるのは感心しないぞ」

「……ああ、悪いなシャノン。今後気を付けるわ」

「わりぃ」

 放課後、シャノン(対象)は学校に持ち込み禁止の物を持って来ていた男子二人に注意を促す。




「……。」

 シャノン(対象)が中庭で虐められている生徒を発見、暫く眺めたのち窓から飛び降り一言も話さずにいじめっ子を宙に放り投げる。いや剣でどうやって放り投げてるの。ていうか普通に四階の窓から躊躇わずに降りて無傷ってこいつ……激しい感情の起伏により文体が激しく乱れる。以後修正。

「君がどういう因縁を付けられているかは知らないけど強くなりなよ。結局自分の身を守れるのは自分だけなんだから」

 シャノン(対象)はいじめられっ子に厳しい言葉をかけその場を離れる。その様子は少し苛立っていた様に見えた。




「みんな、俺達は栄えある王立魔法学園ラヴィノギアに入学出来た人々の希望だ! それで今度の休みの日にパトロールをしないか。まだ学生の身分だが少しでも国の為、しいては国民の為に活動をしよう! 勿論無理強いはしない。みんなの時間が空いた時でいいからどうか一度は考えて欲しい」

「おう、考えとくわ」

 シャノン(対象)がクラスメイトに面倒臭そうなイベント……訂正、休日の課外活動の提案をする。クラスメイトは特に反論する事も無く応答。

 本日の観察任務終了。シャノン(対象)の観察した感想。

 気立てのよい、親切な、心根の良い、彼を表す言葉はどれも明るいのが多い印象だが端的に言えば良い奴。

 その善良な仮面に隠された本性を探るべく今後も観察が必要だろう。




 二日目

 あの文体でまとめるの大変なので普通に戻します。

 今日も観察を続けているが恐らく隠された本性とか無いと思う。あいつただの良い奴でしょ。

 観察してる時、周りにシャノンの事を聞いて回っているけど先生からの評判めっちゃいいもん。

 先生から絶大な評価をされて生徒からもプラスの声しか聴かないし、これだけ観察してもあいつ自身全く悪い事する素振りが見えない。

 この観察に意味があるのか疑問に思ってきた。





 三日目

 シャノンの強さの秘密が分かった。それは日々のたゆまぬ努力によるものだった。

 この学校に併設されているトレーニングルームで毎日決まったメニューを繰り返しているらしい。管理の人に聞いてみたがもはや常連で日々少しずつ負荷を増やしていっているらしい。

 何それもう異世界関係無いじゃない。そりゃそんな事してたら順当に強くなれるわよ!

 これでまだチートも隠し持ってるんでしょ……これ私勝てる……?

 いやまだだ! 今日は例の約束の日。私自身の成果が芳しくないだけで流石に四人も居たら一人くらいは特ダネを持ってくるでしょう。


「……でこれが皆さんの成果ですの?」

 全員無言だ。そりゃそうだろう、全員殆ど私と似たような情報しか持ってこないんだから。

 ひとまずゴリラから報告を聞く。

「あなたは生徒からの評価をまとめたんでしたっけ?」

「ええ、結果は二百八十四人中百四十人が親切、七十五人が良い奴、二十人が特に無し、四十九人が実際に助けて貰ったと答えており、我々の望む黒いうわさはありませんでした」

 わざわざ資料にして綺麗に纏めてくれている。ただこれでは私の調査結果の裏付けをしているだけじゃないの!

 次は狐だが……。

「それであなたは教師の評価をまとめたんでしたっけ?」

「先生なら何らかの悪行の一つや二つ知っているかと思っていたのですが……」

「いえ、私も少し焦ってみたいですわ。あまり気にしないで頂戴」

 そこから先は尻すぼみになり聞えなかったので軽くフォローしておく。先生の意見をまとめた資料には軽く目を通したがここに載っている全員いい意見しか書いていない。これも私の調査の裏付け位の役目しかない。

「あの……すいません。やっぱり私お役に立てなくて……」

「あなたは……まあ気にしなくてもいいわよ」

 号泣ちゃんはBクラスのクラスメイトに聞き込み調査を行ったようだが結果は一番芳しくない。数人に意見は聞けたが他同様いい人の一点張り。それ以外は回答すら貰えなかったらしい。

「一番興味深い情報を持って来たのは貴方だったわね」

「全員学校内で被りそうだったんで俺は外で聞き込みして来ましたけど、結果オーライだったみたいですね」

 下人の調査記録が一番目新しい情報が満載だった。どうやら一日目で言っていたパトロールは既に自分で行っていたらしい。その目撃情報がいくらか乗っていた。

 下人の資料は素晴らしいの一言だった。それこそあだ名を下人から変えても良いような。でもやっぱりこいつは下人だった。

「……この資料途中で終わってるんだけど?」

「調査記録①ですからね」

 言われて表紙を見ると確かに調査記録①と書いてあった。

「続きはどうしたのよ?」

「これなんですが」

 差し出すそれには②と書いてあった。私はそれに手を掛けるが下人の掴む力が強く離れない。

「何してるのかしら……貴方?」

「……今月ピンチなんですよねぇ……」

 そうして親指と人差し指で綺麗な輪を作る。……こいつやっぱり下人だわ。

「……いくらなの」

「一本程」

「それって大きい方小さい方」

「大きい方で」

 この王国では紙幣を採用している。紙幣の大きさが大中小とあるのだがその価値が大体日本紙幣と同じ感覚である。つまりこいつは調査資料に一万円をせびろうとしているのだ。

 しかし①を読んだ時点でこの資料の完成度は本物だ。今の私にはそれに見合うだけの価値があるだろう。それに何よりここを逃すともう完全に手掛かりが無くなるかも知れないのだ。

 私は財布から一枚紙幣を取り出し下人に渡す。

「これでいいでしょ、さっさと資料を渡しなさい」

「あと③と④があるんですけど?」

 そう言って薄っぺらい笑みを浮かべる。やっぱりこいつ下人だわ!!

 その後私は二枚紙幣を彼に渡し、無事完全版の調査記録を手に入れた。




「調査記録を読んだけど結局外でも似たような評価だったわね」

 下人から調査報告書を買った後すぐに解散した。これ以上集まっても何も案が出てこないし、それより今は一人で考え事に没頭したかった。

 調査記録にはパトロールの順路や町のどこでどんな人を何時助けたのか等詳細に載ってあった。

 これ犯罪危険度マップとかで売れるんじゃないかとも思ったが下人が得をしそうなので心の奥底深くにしまった。最悪ゴリラや狐が得をするならどうでもいいが、今現在下人が得をするのだけは許せる自信が無かった。

 馬鹿な思考はこれくらいにして下人の調査記録に再び目を通す。

『今時居ない様な熱血漢だね!家の倅にも見習って欲しいぜ』

『嗚呼、シャノンちゃんの事だね!シャノンちゃんは優しい子だよ。こんな婆のつまらない話に付き合ってくれるんだからね』

『シャノンさんには一度助けて貰ったんです。その時のシャノンさん……騎士様みたいでかっこよかったなぁ(シャノンに好意的、この人物を使ってシャノンを脅すプランP.25、この人物の自宅住所P.30)』

 やはり休日にパトロールをする様な男なので老若男女問わずいい意見が多い。しかし求める黒い噂などでは無くがっかりしてしまう。

 そんな私の気持ちを汲んでか下人は目ぼしい人物には注釈を入れ、面白可笑しく調査報告書を作ってくれていた。その遊び心に少し顔を綻ばせて注釈のページに飛ぶと、結構ガチ目な犯行計画書とでも言うべき代物が付録されていて一気に表情が凍った。住所のページにはマジの住所と生活感のある何の変哲も無い一軒家の写真が貼ってある。うっわ、よく見ると家族構成まで書いてあるよ。

 私は「これは下人の遊び心全て彼の妄想でありフィクション」と唱えながら他のページ目をやった。

 こんなイカれた資料だが私はこの資料を買った事に後悔はしていない。その理由がこれだ。

『シャノンだぁ! あのクソガキ今度会ったらぶっ殺してやる(胸倉を掴まれた)』

『おいお前! あいつは今どこに居やがる! 教えねぇとぶっ殺すぞ(数キロ追いかけられた)』

『ひひひ。ここらの売人は……皆あのガキに……やられた。ただ楽園へ……飛ぶ草を売ってた……だけなのに……。あん? 何してんのかって……見りゃ分かんだろ。屑鉄舐めてんだ(一番怖かった)』

 シャノンに対して悪感情を抱いている者の意見である。他のページにも少しではあるがちらほらと載っている。あとこの注釈を見るまでは吹っ掛けられたんじゃと思ってたけれど、下人も下人で結構危ない橋渡っていたようだ。もしかして一冊一万円でも足りないんじゃないかと思えて来た。いやそんな事ないか下人だし。

 下人についてはこのくらいで、今はシャノンだ。

 この悪感情は恐らくシャノンによって痛い目を見た罪人の意見なのだろう。書かれている殆どが文体から既にまともじゃない感じがする。

 自分が裁かれてその原因になった人物を恨むのは当然だろう。この資料だけなら大した意味は無い。

 しかし学園側の意見と照らし合わせてみるとおかしな事に気付く。

「学園で彼に裁かれた奴らは何故悪い意見を書かないの?」

 私が見ている時でも彼は何人もの生徒に注意や実力行使で更生させてきた。その生徒の中の一人くらいは彼に対して悪い意見を書いてもいいのではないか?

 ……今いくら考えても答えは出ない。何も前進していないようだが確かに今日僅かに前進したのだ。

 私は一応全員の調査報告書をカバンに詰め、家路についた。

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