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異端として迫害されたとある宣教師の手記

作者: 岡由秋重

「私は長く異国の地において『神』の与えたもうた光を伝えてきたのだが、無知蒙昧な原住民に教えを伝える中で『神』の存在について以下のように確信した。『神』はおられる、ただし正しい『神』はすでに失われた!」―――手記の題字を激しく消した跡に強く書きなぐられた言葉


<大幅なページの欠落、作者が意図的に破り取ったものと思われる>


 あまねき光を最後に伝えに来た地は、ほとんどを森におおわれた地であった。原住民は、汚らわしいことに空を飛ぶものを捕り、おぞましいことにその内臓と森によくある果実 (サジというらしい) をともに食べることを好むのである。私もサジなる果実を味わってみたのだが、非常に辛く、この世のものとは思えなかった。神よ、あなたの御子はなぜこのようなものを作りたもうたのか!しかしこの地のものがいかに酷いものであろうとも、私は教えの(しもべ)としてこの地に光を伝えねばならない。

 「影があるから光のために」とは何の詩の一節だったであろうか。正に今がその時であると私は強く確信した。彼らは光の一部を確かに受け取っているが、大部分は影に立っているのだ。


<ページ欠落>


られないものを見たのだ。彼らは「火」を信じている!神の御子が作りしものにすぎないというのに!彼らは、偉大なる何か(彼らはゴラと言っている)がその分身を地に落とし、それが火になると信じているのだ!同時にゴラは身を分ける痛みで涙を流し、身を分けずとも時々痛みで涙を流すらしい。


(このあと数十行記述があるのだが、塗りつぶされている)


 彼らの信ずるものの正体が分かった。彼らの言うゴラというのは我々の「神」と同じものを指すらしい。何ということはない、私が影だと思っていたのは、彼らの言う聖典が我々と違う言い回しをしてたことによるせいであったのだ。なんということだ!彼らが汚らわしいことに空のものを取って食べているわけもすべて分かった。我々が光を伝えるように、彼らは光を取り込んでいるのだ。「神」が同じであるのに、なぜこんなにも違うのか。わたしが伝えてきた光とは何だったのか。


<ページ欠落>


 この手記を見返して、私は確信を持った。「神」は普遍なのだ。ただ、「神」が普遍であることのみが真理なのだ。光も影も関係はない。それは「神」の一部でしかないのだから。私が伝道してきたものは「神」の一部でしかない。この世のすべての信ぜられるものを集めても、「神」の一部でしかない。皆、「神」の一部を取り出し信じているだけなのだ。最早、皆が信じている「神」は取り戻せない。それは「神」がこの世界を作り出した時からそうなのだから…。この事実を私は伝えなければならない。この世のすべての教えを、すべての民に伝えねば「神」は失われていくのだ!

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