粉末はお得
駅を離れて、行きよりも時間をかけてダンジョンのある森へと戻ってきた。
自転車を同じ場所に停めて、洗剤の箱を一つ持って森の中のテントに向かう。
スライムを結構倒したのでlvもそれなりに上がっている筈なのに、10キロの箱を持ちながら森の中を移動するのは手間取った。
lvが上がっても身体能力は上がらないという事か。
もしくはEPがない状態だとlvの恩恵を受ける事ができないのかもしれないな。
時間を掛けながらテントまで戻ってきた。
持っている箱を地面に置き、背負っていたリュックを下ろして固まった体を伸ばす。
もう一箱あるからまた自転車まで戻らないといけないな。
「はあ、しょうがない」
仕方なくもう一往復して箱を運ぶ。
リュックが無い分さっきよりは楽だったような気がするけど。やはり買うのは一箱にしておくべきだったな。
スマホで時間を確認すると、もう13時を回っていた。
「お昼にするか。さて何を食べようかな?天眼様の言う通り!」
バッグを開けて1番最初に目に入った惣菜パンとカフェオレを取り出す。
「ハムパンと卵サンドだな」
残りのカレーパンとかつサンドは夜食にしよう。
ーーー
食事を終え、テントから出る。
「さあ、洗剤を使ってスライム狩りをしようか」
箱を開け洗剤の袋を取り出す。
一袋1キロで10袋ある。流石に全部持っていくのは重いので、一先ず5袋もあれば十分だろう。
サブザックに洗剤を5袋入れ、念の為武器として金槌も持っていく。
まだこのダンジョンには絶対にスライムしか出ないと決まった訳じゃないからな。
洞窟用の装備に着替え直してから、サブザックを背負い、ダンジョンに入っていく。
ーーー
ダンジョンに入りスライムを見つけると、サブザックから洗剤の袋を一つ取り出し、封を切る。
洗剤付属の計量スプーンで、まずは一杯分で試してみる。
スライムの上から洗剤をかける。
「ぎゅう~~~~~~~!!」
スライムに洗剤をかけると、液体洗剤よりもダメージが入っている様に感じた。
「ちゃんと効いたか」
良かった。もしかしたら原材料は同じでも液体洗剤でないと効かないなんて事になったら、俺の6000円が無駄になるとこだった。
まあ、もし効かなくても家でも洗剤は使えるから今回のダンジョンでのlv上げが延期になるだけか。
さて、スライムを倒せたのは良いが、かけた洗剤が結構余っているな。
倒されたスライムが消えた跡には少なくない量の粉末洗剤が地面に積もっていた。
一応勿体無いので残っている地面の洗剤を拾えるだけ拾い、手に持つ。
次に見つけたスライムに手に握っている洗剤を少しずつかけていき倒すが、洗剤がまだ手の中に少しだけ残っていた。
試しに手に残った洗剤をまた別のスライムにかけてみると、今度は量が足りないのかスライムが瀕死っぽい状態でなんとか生き残っていた。
瀕死のスライムに洗剤を少しかけ倒す。
洗剤の計量スプーン一杯でスライムを約3体倒せる事が分かったな。
スライムを見つけ、計量スプーンの3分の1の洗剤をスライムに掛けると。
「ぎゅう~~~~~~~!!」
「よし!」
スライムを洗剤の粉が残らない様に綺麗に倒すことが出来た。
「これで無駄なくスライムを倒せていけるな」
あとは時間の許す限り、スライムを倒してlv上げをするのみ。
それから洗剤を振りかけながらスライムを倒して行った。
大体、え~と洗剤は一つ1キロで、使用回数は約20回分と書いてあるから、計量スプーン20杯、一杯で3体だから20×3で60、洗剤一袋で約スライム60体倒すことが出来る事になる。
今は一袋使いきり、二袋目が残り3分の2程度だから80体は倒した事になるかな?
前回使った液体洗剤は一本約30体しか倒す事が出来なかった。
それでもライターバーナーよりは全然良かったが、今回使っている粉末洗剤は一袋で約60体倒すことが出来る。
値段は大体粉末洗剤が液体洗剤の1.5倍ぐらいなので、粉末洗剤の方がお買い得になっている。
実はどちらがお得なのか分からず、多少の損はしても良いと思い、液体より沢山持ってこれる粉末の洗剤の方を買ってきたんだ。
まあ、そんな事よりもlv上げの為にスライム狩りを続けたかったけど、すっかりドロップアイテムの事を忘れていた。
もうサブザックの中に入り切らず、持ちきれない。
今度は使わない洗剤はテントに置いておく事にしよう。
ドロップアイテムを拾わないと言う手もあるが、俺には無理だ。
俺はゲームでこの先使わないだろう、もうこれ以上はいらないんじゃないか? という様なアイテムでも、アイテムボックスを往復して手に入れようとしてしまう性格なので、ゲームでないとしてもまだ何か分かっていないドロップアイテムを放って進むなんて出来なかった。
天眼さんで鑑定して、俺にとって完全にゴミアイテムだと分かれば諦めがつくんだけどな。
そして俺は効率が悪かろうとドロップアイテムを拾っていき、今限界が来てしまった。
なので、戦利品を持ち帰る為、ダンジョンを出た。
ーーー
テントの前まで戻り荷物を下ろす。
「結構、沢山集まったな」
大小様々な約25個のドロップアイテムが戦利品として手に入った。前回のドロップアイテムと合わせて約40個で倒したスライムは約120くらい。
「ドロップの確率は大体3分の1と言ったところか」
まあ、3分の1と言ってもスクロールみたいな物は、前回手に入れた一つだけだ。
あとは青銅?の剣と短剣が一本ずつ、赤い液体の入った瓶が2本と青い液体の入った瓶が1本で、残りは殆どが謎の黒い小石だった。
今回は鉱石系が無かったか。
まあ、あればあったでもっと早く撤退する事になってたと思うけどな。
「さて、どこに置いておくべきか?」
全部を空中テントに入れることは出来ない。
今は良いが、この後続々と増えていく予定のドロップアイテムを、全てテントに入れてたらこの前買ったばかりの新品のテントがまた壊れてしまう。
「うーん。家に帰る時に考えるか」
一先ず空中テントの下にビニールシートを敷いて、そこにドロップアイテムを置いておこう。
沢山ある黒い小石はスーパーマーケットに行った時のビニール袋にまとめて入れて、残りのスクロール以外の物は洗剤の入っていた段ボール箱に入れておこう。
「剣は流石に段ボールからはみ出るな。スクロールはレア度高そうだしテントの中が良いか」
さて、スライム狩りを続けるか。
俺はリュックの中に入っていた物を全部テントに出して背負い、サブザックには使いかけ洗剤と2袋、サブ武器である金槌も一緒に入れておく。
空のリュックはドロップアイテム回収用に使う。
サブザックを肩に掛ける。
「これで良いな。ダンジョンに戻ろう」