鑑定スキル
目覚ましのアラーム音で目が覚めた。
アラームを止めて起き上がる。
「目覚ましでは簡単に起きれるのに、何故テントを破壊されて起きれないのか謎だ」
この頃、目覚ましで起きるとテントを壊された時のことを思い出す。本当に何故あの時起きなかったのか謎のままだ。
まだ、辺りは暗いので、蛍光ランタンの灯りをつけて今の時間を確認する。
「朝の3時か。まだ暗いがダンジョンの中に入ればそれも関係ないか」
ダンジョン内には光源がないので、どの道真っ暗なダンジョン内の状態では、外が明るくても暗くても関係なかった。
鑑定が使えるって事は、昨日の出来事は全て夢じゃなかったんだな。
【名前:佐々木 光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:0
スキル:鑑定Ⅶ A 334/350 鑑定偽装Ⅵ P
HP:100/100
EP:?/? 】
「お、少しだけだが、昨日寝てからも鑑定の経験値が増えてる」
実は昨日、寝てしまうまでの間、テントの外を眺めて鑑定をずっと発動させていたから鑑定レベルが一気に7まで上がったんだよな。
鑑定レベルが4になった時に鑑定妨害と言うスキルが手に入り、7になった時に鑑定偽装と言うスキルに上書きされた。
鑑定Ⅶの経験値が200を超えた辺りから、俺は目を瞑り寝る事にした。
瞼の裏に自分のステータスが表示され続けていたけどな。
そして、朝起きると鑑定Ⅶの経験値が334になっていたという訳だ。
睡眠中だとしてもスキルが発動したままなら経験値が獲得出来みたいだな。
まあ、経験値の上がり方からして鑑定との相性は良くないみたいだが。
それから鑑定妨害のスキルを取得した時に「何このスキル? 経験値の数値がないじゃん!」と混乱したが、鑑定のスキルレベルが上がればそれに応じて鑑定妨害のスキルレベルも勝手に上がっていったので、そう言うスキルもあるんですねと納得しておいた。
上がり方からして鑑定のスキルレベルの一つ下になる事から、鑑定偽装の方も同じ様に勝手に上がっていくと思う。
それにもし鑑定偽装や鑑定妨害に経験値があった場合、スキルレベルを上げる為には人に鑑定してもらいスキルの経験値を稼がないといけない事になる。
あるいは知性のあるモンスターがいて鑑定のスキルを使ってくる場合だけだ。
だがそれだと難易度が高いし、経験値を得る為に自分のステータスを晒すなど、本末転倒だろう。
実はずっと気にはなっていたスキルの横にあるAとPの文字、鑑定妨害のスキルを得た事によって、その意味がやっとわかった。
これは多分よくゲームである、Aがアクティブ(任意発動型)スキルで、Pがパッシブ(常時発動型)のスキルという事だと思う。
実際、アクティブスキルの鑑定は自分の意思で発動、解除しているが、パッシブスキルの鑑定偽装は基本勝手に発動しっぱなしになるようだった。
まあ、考察と確認はここまでにして、ダンジョンに突撃する前に腹ごしらえをしよう。
食事と言っても昨日の夜と同じでインスタントラーメンだけれどね。
「昨日は醤油ラーメン。今日は寝起きだから、あっさりとした塩ラーメンで良いかな」
昨日、洗った鍋に水を入れて、火をつけたコンロに置く。
お湯が沸騰するまでの間に鑑定のスキルレベルを上げる経験値を稼いでおこう。
この鑑定というスキルだが、使用者が鑑定したいと思った物や者なら、スキルレベルやEPの量に応じて同時に幾つでも鑑定できる事はわかっている。
森を眺めて本気で鑑定を発動させれば、そこらにある木、草、砂利の一粒一粒に至るまで鑑定される。
まあ、そんな事をしている時は、視界の全てを鑑定結果の文字で埋め尽くされ、五感の一つである視覚を完全に封じられてしまうがな。
だからこそ、こんな短時間で、EP無制限だという事も相まって鑑定のスキルレベルを7に上げる事が出来た訳だ。
経験値稼ぎをしていると、沸騰しているブクブクという音が聞こえて来たので、鑑定を視界に映っても支障の無いぐらいに鑑定数を抑えて、インスタントラーメンの麺とかやくを鍋に入れる。
麺をほぐしてからスープの粉とお好みでレモンかバターを入れて、塩ラーメンの完成! レモンやバターはその時の気分で入れている。
手を合わせて「頂きます」
うん、美味しい。
昨日も同じような事を言ったが、家だとインスタントラーメンを食べるくらいなら、自分でラーメンのスープを作って乾麺を茹でて食べるが、それでもキャンプで食べるインスタントラーメンはそれとは違った美味しさがある。
「はぁ~ ご馳走様でした」
腹ごしらえも終えたので、ダンジョンに行くか。
と思ったが、その前に先に鑑定のスキルレベルを上げれる所まで上げておきたい。
しかし、スキルレベルの上限が幾つなのかわからない。
何処まであるのかもわからないスキルレベルの上限まで上げてから自身のlvを上げるべきか?
それともスタートダッシュの為に今すぐにlvを上げ始めるべきなのか?
「非常に迷うな」
ーーー
40分ぐらい考えてどちらにするか決めた。
もちろんこの40分間も鑑定の経験値を稼ぐ為に、目の前は文字で埋め尽くされている。
まあ、決めてしまえば、考えるまでも無かったなと思う。
スタートダッシュを切りたいのなら、他の人と同じ様に上げることの出来るlvよりも、普通では有り得ない程の効率で鑑定のスキルレベルを上げる事の方が後々有利に働く可能性が高い。
それにモンスターと戦う前に相手の能力をある程度知る事が出来るなんて、現実世界ではチートもいい所だしな。
そんな訳で、ダンジョンに入るのは一旦やめて、限界まで鑑定のスキルレベルを上げる事にした。
俺はテントに戻り、外の森の景色を眺めながらスキルレベルを上げる。
途中で暇過ぎて苦痛になるかもしれないので、スマホで音楽もかけておく。




