受け継がれる不幸
じゃあ、テントに戻りましょうか。
ダンジョンを出る為に歩き始めて少しすると、当たり前のように奴は現れた。
【種族:スライム
性別:無し
lv: 2
スキル:酸Ⅰ 捕食Ⅰ
HP:120/120
MP:0/0 】
まあ、ただのスライムなんだけどな。
でも、スライムを見つけると、咄嗟に終末の使徒レプリカの事を思い出す。
鑑定すれば直ぐにでも分かるし、大きさも全然違う。
それでも見た目はそっくりなので、鑑定するまではさっきの出来事を思い出して緊張するよ。
いや、片手片足を潰されたら普通トラウマになるよな。
俺は、こうして潰された手足が元通りに治っているから、失っていた現実感が薄く大丈夫なだけかもしれない。
「凄いよな。回復ポーション」
欠損部位まで治してしまうんだからな。
ポーションの効果の強さ(小中大)で効果に限界はあるが、これからもダンジョン攻略を続けていく上で、怪我を負っても病院に頼らなくても良さそうなのは助かる。
さっき死に掛けたばかりだというのに、もう先のダンジョン攻略について考えている自分には少し呆れてしまった。
しかし、熊に追い掛けられても森に行くのをやめなかった様に、こんなに面白く好奇心刺激されるダンジョンから離れる事は出来そうになかった。
そうすると、これからもスライムを見る度に、こんなに緊張してしまうのは不味いな。
いつかきちんと実力をつけて、終末の使徒レプリカに勝てると感じたら、また試練の扉に挑戦してトラウマ?を克服しよう。
まあ、挑むなら最低でも神槍と打ち合えるようには、ならないと話にもならない。
挑む条件は同じような神を冠する武術系スキルを手に入れる事か。又は俺の持っているこの瞳のスキルを使って、自力でその領域に到達するかだな。
後はいるか分からないが、現代でその力量に到達している人物に弟子入りして学ぶ事、かな?
実際に神槍を見た者の感想として言わせて貰えば、普通の人間があの領域に到達しているなんてあり得ないと思うけどな。
やはり一番の近道は、武術系スキルで神を冠するスキルを手に入れるのが手っ取り早い。
他二つは地道に頑張る感じで、どれだけ時間がかかるか分からないからな。
そして、あくまでもこの武術は防御方法に関する話で、攻撃手段は別に用意しないといけない。
終末の使徒レプリカのスキルの中に物理無効ってエクストラスキルがあった筈だ。
物理攻撃は効かないので、武術は防御に使う事しかできない。
攻撃には、もし洗剤を使わないのなら、魔法で戦うしか方法は無い。
この終末の使徒に挑む戦いはあくまでトラウマ?の克服の為なので、その戦いで必殺の洗剤を使うのはどうかと思った。
なら魔法で挑むしか無いか。
そんな事を考えたけど、どの道終末の使徒に挑む事が出来るようになるのは、かなり先の話になる。
最低でも対等のlv90台になってからだね。
そんな事より、今は目の前に居るこのスライムは、唯のスライムだ。
【種族:スライム
性別:無し
lv: 2
スキル:酸Ⅰ 捕食Ⅰ
HP:120/120
MP:0/0 】
なんか久しぶりに普通のステータスを見た気がする。
見た目は同じだけど、あんな理不尽なステータスをしていないだけで、こうも安堵するとは思っていなかった。
まあ、それでも直ぐに洗剤をかけて倒すんですけどね。バイバイ、雑魚スライム。
スライムに洗剤をかけていつも通り倒す。
「ん?倒したけど?」
いつも通り倒したが、何故か掛けた筈の洗剤が減らずそのまま残り、そのスライムはドロップアイテムを残して消えた。
どう言う事だ?
いつも通り計量スプーンの3分の1をかけて、丁度このスライムを倒しきる致死量だった筈なのに。
lvが上がったからは違うよな。実際lv24まで洗剤の量は変えてない。
それに体積ではなくlvによるものなら、今頃俺は殺されている筈だ。
他に考えられる原因と言えば、あの終末の使徒レプリカを倒してから変わった事から考えれば、終末の使徒レプリカを倒した事によって俺の何かが変わったのかもしれない。
鑑定してみて自分のステータスを確認してみる。
終末の使徒レプリカを倒してから自分のステータスを見たのは、アイツを倒した後片手片足が潰れてより死に掛けていた時だったな。
もう死ぬと思っていたので、ステータスの内容は上がったlvとHPにばかり気を取られて詳しく見ていなかった。
【名前:佐々木光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:62
スキル:鑑定偽装Ⅹ P
振動魔法Ⅱ A 9/100(10kHz、1/10EP)
エクストラスキル:神眼 AP (1e8EP)
ユニークスキル:固定ダメージ1
HP: 8114000/8114000
EP: 16012999/1.16008e8+5000 】
お、エクストラスキルが変わってる。
エクストラスキルが天眼から神眼に変わっていた。
EPが1億超えたからかな?
それよりも他に変わっている所と言えば、ユニークスキルを新たに取得している事だな。
ユニークスキル固定ダメージ1。これは終末の使徒レプリカが持っていたスキルだ。
このユニークスキルを終末の使徒レプリカが持っていたから、俺は何とか生き残る事が出来た。
終末の使徒レプリカを倒した事によって、討伐者の俺にそのユニークスキルが与えられたのか?
という事は、今の俺の攻撃は一撃につき1ダメージしか与える事が出来ないって事になる。
例えどんなにlvを上げたとしても、lv1のモンスターを倒すのに100回も攻撃を入れないといけない。
スライムを倒したのに洗剤が減らなかった様に見えたのは、このユニークスキルの効果だろう。
多分、粉末洗剤の一粒一粒にユニークスキルの攻撃判定が適応され、粉末一粒で1ダメージ。
計量スプーン3分の1で、いったい幾らぐらいの粒があるだろう?
少なくとも100粒よりは確実に多い事だけは確かだな。
謎は解けたが、凄く使い難いスキルを押し付けられた気がするのは気のせいだろうか?




