ダンジョンが出現したらしい
おはようございます。
今の時刻は19時です。
まだ、3時間くらいしか寝ていない。
多少眠くもあるが、それよりもお腹が空いて起きてしまった。
確か昨日、まだ今日だけど、昼ご飯は家に帰ってから食べようと思っていたな。
結局食べずに家に帰ってきたら、すぐに寝てしまった。
いつもこのぐらいの時間に晩御飯を食べているからちょうどいい。
ご飯を食べにリビングへと降りる前にダンジョン関連の情報を少しだけでも調べて、拗ねているだろう春(妹)に謝罪でもしておこう。
スマホからネットでダンジョンについて検索して、ネットニュースになっている記事に目を通してからリビングに向かった。
リビングの扉を開け中に入ると、春はリビングのソファでくつろぎながらテレビを見ている。母さんの佐々木和香は台所で家族の晩御飯を作っているみたいで、父さんの佐々木颯斗はまだ帰っていないようだった。
「ただいま、母さん。俺がキャンプに行っている間に色々とあったみたいだね」
「お帰り~こうちゃん。ええ、お母さんはよく分からないけど、テレビでは危険なダンジョン?って言うものが世界中で発見されたって言っていたわ~。でもそのダンジョンは入らなければ大丈夫だから、見つけても無闇に入らず警察に通報してくださいって~」
「ダンジョンね、どうせなら教えてくれてもよかったのに」
「ダメよ~こうちゃんは直ぐにこういう危険なものに飛びつこうとするんだから~」
「確かにそうだね。一昨日に知っていたらそのダンジョンってやつを探していたかもね」
「う~ん? この話がテレビで放送されたの、昨日の話よ~?」
「ああ、そうなんだ。実は帰って来た時に春がダンジョンの事を話してきて、その後ネットで調べていたんだけど寝落ちしてね。それはそうと今日の晩御飯は何なの?」
「そうなの? 今日はシチューよ~」
「シチューか、楽しみにしておくよ」
ダンジョンの事がテレビ放送したのは昨日だったのか。
俺は一昨日からダンジョンに入っていたから、てっきりそうだと勘違いしてしまった。
まあいい、母さんの天然ならすぐに俺との会話の違和感を忘れる。放っておいても大丈夫だろう。
それよりも問題なのは俺が母さんとダンジョンの事を話していても春が全く話しに入ってこなかった事だ。
これは完全に拗ねているみたいだな。
どうしたものか。出来れば父さんが帰って来る前に機嫌を直してもらいたい。
父さんは天然の母さんと違いしっかりした人なので、春が拗ねていたらすぐに察してしまう。
別に今回は俺が悪い所は全然ないと思っているが、それでもこれからも自由に隠れてダンジョン攻略する為に、家族間の波風は立てたくない。
俺から話しかけてみるか。
「あ~春。俺が悪かったって、お前の話を信じなくてさ。でも普通いきなりこの世にダンジョンが出来ました、なんて言われても信じる奴なんていないだろ? それにあの時は眠たかったし、今度お詫びに何か奢るからさ。いい加減機嫌を直してくれ」
春がやっとこちらを向き、仏頂面のまま、俺の前に手の平を出して来た。
「1万」
「は? えっマジ?」
俺が春の理不尽な要求に驚いていると、春はさらに手を俺の顔の方に突き出してきた。
まさか、お詫びに何か奢ってやると言われて、現金を要求してくる奴がいるとは思わなかった。
いや、待てよ? これは逆に良かったかもしれない。
もし春に何か奢るとなれば、それは休日の折角の自由な時間を削ってまで、春と何処かに出掛けなくてはならないという事だ。
それでは天眼さんの復活すらしていない1秒でも長くスライム狩りをしたい俺にとっては最悪だろう。
それを高々1万円でチャラに出来るなら、ここは素直に払ってしまった方が気が楽だ。
「分かった。今は持っていないが、明日にでも下ろしてきてやるからそれまで待ってろ」
「えっ? (そんなつもりじゃ。ダンジョンを探すの、手伝ってもらおうと思っていたのに)…分かった」
これで春との和解は成立だな。
約スライム2000体分の出費だが、今時間はそれ以上の価値があるからな。
点いているテレビを見るが、内容は普段と変わらない。
毎週のバラエティー番組がいつも通りにやっているだけだった。
当たり前か。こういうバラエティー番組は大体3ヶ月前には収録が終わっているものだからな。
「なあ春、ニュースでダンジョンの事、なんて言っていたか覚えているか?」
「ん~確かね昨日の朝、テレビを見ている時に、急に臨時の政府放送とかいうのに変わってさ。さっきお姉ちゃんがお母さんと話してたみたいな事を偉そうな人が喋っていたよ。ダンジョンの中には未確認生物が居て、ダンジョンに入ってきた生き物を襲うって、これ絶対モンスターだよね!」
「ダンジョンときて、そのダンジョン内の生き物がダンジョンへの侵入者を攻撃するって事は、モンスターと言っていいかもな」
ダンジョンに侵入してきた者は人以外の動物であっても襲うのか。
「しかし誰が何でダンジョンなんてゲームみたいな名前にしたんだ?」
「う~ん、ゲームやってる偉い人でもいるんじゃないの?」
「そうか」
もしくは、俺と同じで、鑑定系のスキルを持っている人が既に国側にいるのかもしれない。
ダンジョンが世界中に出現しているのなら、そのうち民間にもダンジョンが解放されるかもな。
狭い日本ならともかく他国でダンジョンの入り口を完全に国が抑えるのは無理があるだろう。
なんなら積極的に民間にダンジョン探索を勧める国もあるかもしれない。
実は俺、ダンジョンの鉱石系ドロップアイテムで純金っぽいビー玉サイズの塊を手に入れた。
もしこれが本物なら、1日で数万は稼いだ事になる。
これがスクロールならオークションとかにかければ最低数十万はすると思う。
こんなにも金になるダンジョンが世界中に出現したとするなら、これはもう国ごとの競争になるだろう。
その為、日本も遅れない様、体制を整えた上で遅かれ早かれダンジョンを民間にも解放する事になるだろう。
その時に一番必要とされる人材はアイテムを鑑定する事の出来る人やスキルスクロールと言うことになる。
国はこぞって鑑定系のスキル持ちを探すだろうな。
俺は国とかに縛られて自由にダンジョン探索が出来なくなるのは困るので、バレない様に注意していく。
これでまた一つバレてはいけない秘密が増えてしまったな。
「他には何か言っていなかったか?」
「え~と、あとはモンスターはダンジョンの外に出られないって事と~自衛隊をダンジョンに派遣して内部調査をするって発表があったぐらいかな」
「分かった。ありがとう」
これでモンスターがダンジョン外に出ない事の確認が取れたな。
それと自衛隊か。警察がダンジョンを発見して自衛隊がダンジョンに潜るって感じかな。
しかし、現代武器の銃器がどこまで通じるか。少なくともスライムは銃で倒せそうな感じがしなかったけど。
「ただいま」
父さんが帰ってきたみたいだ。
「「お帰り」」
「おかえり~」
父さんが着替えを済ませてリビングに入ってきた。
「じゃあそろそろ晩御飯にしましょうか~」
うちの家では、晩御飯は特別な理由が無い限り家族全員で一緒に食卓につくことにしている。
だから俺は腹が空いて起きてきたのに、食事をせず父さんの帰宅を待っていた。
「春、いつまでもテレビを見てないで席につけ」
「うん」
俺と春は、ソファから立ちテーブルの席に着いた。
「おお、今日はシチューか」
「ふふふ、そうよ~」
そう言えば、父さんの好物はシチューだったな。
家族全員が席に着き、手を合わせる。
「「「「いただきます」」」~」




