6 調理
無事キャンプの設営を終えた俺達は、調理・食事と見張りの二組に分かれた。
「さっき悪くなかったって言いはしましたけど、やっぱ任務は任務ですよねー」
見張りを始めるなり、背中合わせで逆方向を向いたシャルが不満そうにぶーたれる。
「なんだ、藪から棒に」
反対の見張りを続けながら、また始まったよと思わなくもないものの、やることもないので
応じることにする。
「こんな雪山での楽しみなんて食事位しかないじゃないですか」
「それはまあ確かに」
景色は絶景と言えば絶景かもしれないが、こんなのあと三十分も見てれば飽きるだろう。
「それを皆で囲めないなんて味気ないと思いません?」
「……それもまあ、確かに」
数少ない楽しみなのだ。それ位、皆で一緒に楽しみたいというのは人情というものだろう。
「と思いまして」
と、急にテントから出てきたらしいリリーが会話に割り込んでくる。
「どうした? もう食べ終わったわけじゃないだろ」
組別行動に入ってから、まだ五分と経ってない。
「どうせなら、皆で楽しもうかと」
チラリと見やれば、リリーとその後ろに続くソフィはジップロック入りの食材やコッヘル、
コンロ等の調理器具に加えて、全員分の食器まで持って来ていた。
「いいねっ!」
まさに不満を漏らしていたことへの解決策がやってきて喜色満面なシャル。
「いいね、じゃないんだよバカ。目立つだろ」
全ての装備は雪山迷彩として白一色に統一されているものの、流石に調理器具類は迷彩が施
されず地肌を晒している物もある。
「はいはーい。それじゃ、そこ開けてください」
俺の注意を聞いた結果なのかどうなのか。熱の放出を抑えるため背中を合わせていたシャル
と俺の間にリリーはグイグイ割り入ってくる。
「ほら、ここなら目立たないんじゃありません?」
確かにそこなら両脇がテント、前後はシャルと俺で隠される。
「まあそうだが、ガスの節約もしたい」
多少なりとも暖かいテントの中の方がガス効率はいいし、テント内の暖房も兼ねられる。
「そこは私がアニマで火出しますから。その方がガス節約できるじゃないですか」
「いや、それはそれでお前がアニマ消耗するだろ」
なんて口では曹長としての建前を言いつつも、口の端は思わず吊り上がってしまっている。
「長丁場になるんですからガスは重要だと思いまーす。アニマは休めば回復しますし」
そんな俺の様子を感じ取ったわけではないだろうが、シャルも嬉々として賛成票を投じる。
「あ、あの、ダメでしょうか?」
見張りを継続する俺に、ソフィは遠慮がちに確認してくる。ホント、真面目だよな。
「調理班として、ちゃんとやることはやれよ」
「イエッサー」「は、はい」
苦笑交じりの俺の許可に、調理班の二人は返礼して支度に取り掛かった。
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