1 西暦2222年12月25日 0800 アメリカ合衆国 ワシントン州 ロッキー山脈北域
西暦2222年12月25日 0800
アメリカ合衆国 ワシントン州 ロッキー山脈北域
アメリカ合衆国軍秘匿 亜人部隊 第一中隊第一小隊所属 ウィリアム班
冷涼に澄んだ空気が、嫌でも意識を覚醒させる。
一面白に覆われた世界は何の匂いもなく、吹き荒ぶ風は頬を刺すように痛い。
クリスマスの山は、当然のことながら深い雪に覆われていた。
この威容に今から登ろうというのはバカなんじゃないだろうかと思って見上げていたら、清々しい太陽が昇ってきて目に痛い。
「わー、綺麗な朝日!」
シャルが本気とも芝居ともわからぬ微妙な声音で、感嘆の声を上げた。
「わー、ホントね」
リリーもこれまた何とも形容しがたい賛意を示すが、こいつの性格上、心からの言葉でないことは想像に難くない。
「ほ、本当だね」
唯一、どもるソフィだけはいつも通りの通常運転だった。
「そうだな。それじゃあ爽やかな朝日を拝んだところで、行くとするか」
セリフだけは晴れやかに、足取りは重く俺は一歩目を踏み出す。
イエッサー、は、はいとリリーとソフィは素直に応じるが、
「って、誰かツッコミなさいよ!」
シャル一人だけが、やかましく騒いでいた。
「や、面倒だし?」
「ご、ごめん、シャルちゃん」
あっけからんと流すリリーと正反対に、馬鹿正直に反応するシャル。
「確かにそうだな」
俺の肯定にシャルは溜め息交じりながらも頷き、
「でもアイゼン付けると疲れるから、もう少し先にしないか?」
「そんな話じゃないのよっ!」
続けた俺の台詞に、また喧しくツッコんでいた。