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マスク警察(8)

<34>

 「≪カッパボウル≫での事件解決。よくやってくれた。人質の従業員の方たちも怪我がなくてよかった。」デュークとツカサは、村中署長に今回のディスカウントスーパーでの事件解決を報告しに来ていた。「今回の事件は、例の≪ビーチク≫は、使われていないようですね。」ここのところ、≪ビーチク≫こと≪ビーナス・サイマティクス≫が関係する事件が続いており、この件に関しては、警察も敏感になっていた。


「村中署長。少し二人だけで、話がしたいのですが。」ツカサに目配せすると、「では、これで失礼します。」ミカサが、所長室を退室するのを待って、デュークが村中署長に話を切り出した。

「村中所長、先日の新内閣イベントの日ですが、署長はどちらに。」

「どうして、そんなことを。」

「済みません。ちょっと確かめたいことが。」デュークは、村中署長の表情を読み取ろうとしたが、全く動揺していないように見えた。

「確か、あの日は、警備の作戦本部に控えていたな。一緒に居た者に聞けば確認できると思うが。今ここで、確認するか?」

「いえ、済みません。わたくしの勘違いのようです。おかしなことをお聞きして申し訳ありませんでした。失礼します。」デュークは、所長室から退出した。


 村中所長は、嘘を言っているように見えない。あの日洋上で出会った、孤高のスナイパーの笑顔が、署長に似ていたのが、ずっと心に引っかかっていたが、自分の愚かな勘違いと分かって、少しほっとしたデュークだった。




〈35〉

「マスクをずっと着けてるとさ~、口の周りにボツボツが、出来ないか?」デュークとツカサは、アスカ区を徒歩でパトロールしていた。良い天気だったので、パトカーではなく、歩いてパトロールしようと提案したのは、デュークだった。


「マスクが、常に肌と擦れているのでダメージが重なって肌のトラブルに繋がるようですよ。始めは、マスクのおかげで、口元のメイクをしなくていいので、ちょっとラッキーとか思っていた女性も、肌トラブルで、かえって、保湿したりケアが大変になっていますよ。」

「あと、マスクしたまま、日焼けするとさ、口の周りだけ白く残ってて、あれは、本当にやっちまった感が凄いよな。」


「私は、男の人が、マスクの下に、髭を蓄えてるのが、ちょっと嫌いですね。食事の時に、マスク外したら、急に髭ボーボー人間になるじゃないですか。日陰で何か栽培しているみたいで、個人的な意見ですけど、あれ苦手ですね。」デークはツカサの話を聞きながら、今日家に帰ったら、髭剃らなくちゃと思っていた。髭ボーボー人間と呼ばれないように。


 パトロールの途中、「アスカ保育園」という保育園があり、園児たちの歌声が聞こえてきた。

「まさに、天使の歌声ですね。」ツカサとデュークが、保育園をのぞき込む。「子供の声って、本当に良いよな。癒されるよな。汚れちまった心が浄化されるようだよ。」「そうですね。先輩の心は本当に汚れ切っているので、8時間くらい聞いたほうが宜しいかと思いますよ。」「それは、厳しいな、ツカサ君。」「冗談ですよ。4時間くらいかな。」「良かった。・・・良くないよ。」


 デュークが、ふと、園庭の隅にあるウサギ小屋が気になった。1匹のウサギが、柵を壊すほどの勢いで、大暴れしている。「ツカサ、ウサギって、夜行性じゃなかったっけ。」「確かそうですね。夕暮れ時に暴れだすウサギはいるみたいですが、まだ日の高い時間にあれだけ暴れているのは、ちょっと珍しいかもしれないですね。」「病気なのかな?」二人は、保育園のウサギが気になりながらも、次のエリアを目指して進んだ。


 駅前の商店街に差し掛かかったとき、ベビーカーを押す、女性に声を掛けられた。「先日は、お世話になりました。」デュークは、全く気付かなかったが、ツカサが気付いた。「コンビニに、居た方ですね。もしかしてベビーカーの赤ちゃんは・・・。」「そうです。あの時おなかに居た子です。お陰様で無事生む事が出来ました。」先日のコンビニ籠城事件の時に、少女を連れた、妊婦が居た。それが彼女だった。あの後、無事男の子を生んだという事だ。ベビーカーの中で、すやすや眠っている。ツカサとデュークがベビーカーをのぞき込む。「可愛い。先輩もこんな時代があったんですね。」「おっさんのまま生まれてきたわけじゃないからな。多分あったんだろう。」女性と別れ、二人は再び歩き出す。


 澄み渡る空に、さわやかな風が流れる。本当に気持ちのいい天気だ。デュークがツカサに声を掛ける。「徒歩のパトロールにしてよかったろ。季節の移り変わりや、人との出会いがある。パトカーで通り過ぎていたら気づけなかったり、出会えなかったことに出会えるんだ。」「本当にそうですね。ただ、ちょっと遠くまで歩き過ぎました。ここから警察署に戻らなければいけないことを思うと、憂鬱です。タクシーで帰りたいです。」「・・・それな。」




<36>

 「先生、あの薬の成分の、分析結果は出ましたか。」サウナで竜崎智也からもらった謎の薬を、小柳郁郎太は知り合いの医師である藤丸要先生に中身の成分を分析してもらっていた。


「判別できない成分も含まれてはいるが、含有しているのは基本的に、その辺に売っている普通のサプリメントの成分と一緒で、何ら問題ない内容ですよ。」「・・・そうですか。お忙しい先生の手を煩わせてしまって申し訳ありませんでした。」「いやいや、あなたとは、あなたのお母様からの長い付き合いだ。この位の事は、やぶさかでないよ。」


 あの医師を信じて頼んだが、どうやら藤丸先生は嘘をついている。私は、あの薬を自分で飲むことはなかったが、保育園で飼っている1匹のウサギに与えてみた。ウサギには悪いことをしたが、あの薬が普通のサプリメントでないことはわかっている。彼は、この薬について何か知っているに違いない。彼は竜崎と繋がっているかもしれない。


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