儚い夢
今回も読んでくださりありがとうございます。
素人感全開ではありますが、面白いと言って貰えるように頑張っていきます!
私は3人を見て驚いていた。
何処の宿からも受け入れて貰えなかった"大地の剣"のようなイケメン達かと思っていたらまさかの不細工達だったのだ。
そこで私はふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「あの、1つ聞いても良いですか?」
「何だ?」
「安全な場所なら街に降りればあるかと思いますが…?」
「いや、あそこは危険だ。…女性達に囲まれて捕まってしまうからな」
「あぁ…それはお疲れ様ですね…」
私からすれば不思議だが、彼らは今世でのイケメン達だ。
女性が少ないこの世界で女性に囲まれるほどの美貌では、あの街の宿は危険すぎるのだろう。
…しかし、彼らが人気なのか…。
私が少し遠い目をしてしまったのは気にしないで貰いたい。
そんな私を見て彼らは言う。
「…見る限り貴方は我々を見ても何とも思わないのか?」
「あ、はい。安心して下さい。一切何も感じておりません」
「「「……」」」
彼らは複雑な表情をしていた。
酷い言い方ではあったかもしれないが、安全を伝えたかったので許してほしい所だ。
「…では、そちらで泊まらせて頂く」
「分かりました。では、こちらです」
受付を済ませた私達はラウンジでそれぞれのことを話し合った。
話している内に分かったのは、私とさっきから話している麻呂みたいな眉の人はドマロード・マールイ様という方で伯爵家の次男で騎士団の2番隊隊長をしており、他の2人はその護衛だったという事だ。
3人ともとても気さくな方で話しやすかった。
しかし、最近は不細工に慣れていたせいか、マールイ様達の顔に圧迫感がありやや距離を取らないと悪い意味で心臓に悪かった。
「…貴方は本当に出来た人だな。社交界の女性と全く違う。ここまでゆっくりと女性と話すことが出来たのは貴方が初めてだ」
「そうなんですか?女性は話を好むはずですが」
「確かに女性は話すことが好きだが、自慢話ばかり聞かされる。私の話をここまで話せたことは無かった」
細い目が完全に瞼の肉に覆われた。
少しだけ口角が上がっていることからたぶん、微笑んでいらっしゃるのだと思う。
「喜んでもらえて良かったです。…沢山お話ししてしまいましたね。私は仕事があるので失礼します」
「ああ」
私はそろそろ皆のために料理を作らなければならなかったので、マールイ様達をラウンジに残し食堂に向かった。
「ドマロード様。とても素晴らしい方でしたね」
「私も同様に思います」
「ああ。本当に…」
ドマロードはスゥが立ち去った方をじっと頬を朱に染めて、見つめていた。
今まで数少ない女性と会う機会はいくらでもあった。
貴族の令嬢はこぞってドマロードの顔に惚れて、婚約を申し込むようにマールイ家に依頼書が届いた。
それは王家である王女からも。
女性から男性へ婚約の申込みは、男性が甲斐性無しと見られる風潮があった。
加えて、王侯貴族の女性はプライドが高い。
自分から申し込むなど恥であると考えているので、申し込むようにという依頼書が送られてくるのである。
しかし、ドマロードは現在誰とも婚約をしていない。
それは、王家ですら破ることの出来ない法律があったお陰であった。
『誰であっても男女共に満20歳まで結婚及び婚約を強要してはならない』
というものだった。
これは大昔、ドマロードのようなイケメンや女性達の考えを尊重し、幸せになれるように神が世界の人々に対して唯一約束したことであった。
これを破った者には天罰が下されるとされている。
それ以降、国は法としたためそのような者はいなくなったのだ。
「…気に入られたのでしたらあの方を妻に迎えては如何でしょうか」
「は?何を言っている。彼女は平民だぞ」
「彼女はオーナーとして働けるほど優秀です。養子として何処の家も迎え入れることが出来ると思いますが?」
「いや、しかしだな」
「それに、今年でドマロード様は19歳になられます。あと1年で20歳。このままではあの王女と結婚されますが、宜しいのですか?」
「うぐっ」
貴族の令嬢は高圧的でわがままではあるが、多少の教育はしている。
例えば、自分より身分の高い男性は身分に見合った女性を選んでしまう可能性があるため、見目を気にすること。
他者より劣らないようにすること。
そうやって幼少期より令嬢は教えられるのだ。
しかし、王女は身分で上に来る者などおらず、他国との外交も王や王子が出るのが基本。
最上級の食べ物も服も物も欲しいものは全て手に入る。
そして、王女は何処の国も念願であるため王も王妃も甘やかしてしまうのだ。
結果、どの国の王女も普通の貴族の令嬢よりも、ゴテゴテと宝石を身に纏い、化粧もけばけばしく、脂肪をため込んで太ってしまっており、加えて性格も令嬢達と変わらないので、王座を目指す者以外の人にとっては必要最低限しか関わりたくない存在なのであった。
美醜を気にする世界では女性も男性も同じなのである。
「それはそうだが…」
「ならば、自ら行動するしか無いのでは?」
「…はぁ。…少し1人にしてくれ」
ドマロードはそう返事をしてから、護衛を下がらせて1人になった。
そして考える。
確かにスゥを妻にすることが出来れば、自分は穏やかに暮らしていけることだろう。
だが、それは自分の自己満足に過ぎないのだ。
ドマロードは分かっていたのだ。
自分の幸せを優先させた結果、起き得る未来を。
貴族の汚れきった性格を。
闇の部分を。
スゥが社交界に私と共に現れたら、女性陣から何を言われ、何をされるか分からない。
最悪の場合、命すらも危うい状態に陥るだろう。
私はそれから守れる自信があるのか?
幸せに出来ると言えるのか?
結論はただ一言。
「無理だ…」
口調は頑張って貴族風に話しているが、本来、気の弱い性格のドマロードには言い切るための自信など欠片も無かったのだ。
「…淡く儚い夢だったか。ならばせめて、影ながら守らせてもらうとしよう」
そうして、ドマロードは部屋へと移動する。
自分の幸せを考えてくれる護衛2人への言い訳を考えながら。
スゥの知らないところで、ドマロードの初恋は自ら幕を閉じたのだった。
その頃、スゥは食堂で料理を作り終え、特訓を受けているはずの皆を待っていた。
昼は少し過ぎており、予想よりも遅い。
バナじぃがいるのだから大抵のことは大丈夫だろうが、何かあったのではと不安に思っていると、ちょうど玄関扉が開いた。
「皆っ!良かった!お帰りなさ…いっ!?!?」
そこにはバナじぃ以外の皆がボロボロになって横に倒れており、中にはちょっと廃人と化している人までいた。
その光景はまるでゾンビの死骸の山であった。
「ただいま。会いたかったぞ~、スゥや」
「私も会いたかったけど…皆に何したの?」
「ほっほっほ。秘密じゃよ★」
パチンと綺麗なウインクを飛ばして、スキップでもしそうな程、バナじぃは上機嫌に食堂に向かっていった。
何をしたのか非常に気になるが、知らない方が幸せなこともある、ということなのだろう。
しかし、ここはエントランス。
お客様を迎えるための場所なので、いつまでもここで倒れられていると困ってしまうのだ。
なのでここは心を少し鬼にして接する。
「皆さーん!お疲れだと思いますが、昼食を食堂に用意しているのでそっちに移動して下さーい!さもなくば、今日の昼食も夕飯も全部抜きにしますよ~!?ひっ!!?」
そういうと、皆が一斉に生き返…立ち上がりユラユラと食堂に向かっていく。
…もう、ゾンビの大行進である。
ドマロード様達が部屋での食事を選んでくれて本当に良かったと思う。
流石にこれを見たら魔物と間違えて、切り捨ててしまいそうだ。
ゾンビ、もとい団員達と従業員達は昼食を食べた後、すぐにお風呂に入り部屋に戻り、そのまま夕飯どころか晩飯まで食べずに次の日まで眠り続けた。
…死んだのかと不安になり全知全能を発動させた私は可笑しくないと信じたい。
この日の朝、日の出前の暗い朝にマールイ様達一行は出立された。
護衛2人が落ち込んでいたのは不思議だったが、また来ると言って下さったのでお客様が増えたことが嬉しかった。
朝日が完全に昇った頃、やっと皆が起床した。
従業員達も冒険者である彼らも全員、筋肉痛に見舞われたらしい。
だが、今日が出立日であることは勝負に負けたので変わらなかった。
ゼノ様やルノ様達に会えなくなるのは少し寂しかったが、最後に挨拶をしてから少し涙ぐみながら遠ざかっていく彼らを見送った。
"大地の剣"とマールイ様一行が去ってから1週間後。
私達は4泊5日の旅行の準備を整えて、出発当日を迎えたのだった。
自分で幸せに出来る自信が無く小心者が故に、自ら諦める道を選んだ麻呂さん。
麻呂さん、めっちゃ応援してます。
幸せになれ!麻呂さん!
確かにこれはモテるなと思いながら書いてました笑
またいつか登場予定です。
(麻呂さん=ドマロードです笑)




