現る
皆様お久しぶりです。
まだ毎日投稿出来ませんが、今後もゆっくり頑張りたいと思います。
今後もよろしくお願いします!
ゼノ様とルノ様との食事を終えた私は、疲れたであろう皆をお風呂へ勧めて、従業員全員でラウンジで休憩を取っていた。
「いやー、今日は疲れましたね~」
「そうですね。ですが、強くなっていることが分かって嬉しくもありましたね」
「俺達は一から特訓のし直しだな」
「「おぉ~!」」
皆に無理に特訓をさせていると思っていた私は安堵した。
むしろ、皆が進んで励んでいる。
そのことにバナじぃも気を良くしたようで、悪い顔で笑う。
「みっちり、鍛え直してやるわい」
「「「怖っ!」」」
「特訓の話はこれくらいにして、皆、今日はお疲れ様。今回は私達の勝利だから、ご褒美の旅行で何処行くか決めよっか!奮発するから何処でも良いよ~!皆はどんな所に行きたい?」
「わしはゆっくり出来る場所がええのぉ」
「「僕たちは何処でも良いよ~」」
「わ、私もです」
「俺は武器がいっぱいある所だな」
「…私は他種族の国に行ってみたいです」
取りあえずは、ゆっくり出来て、武器がいっぱいある他種族の国か。
「他は分かるけど、ノースさんは何で他種族の国に?」
「本の知識だけではなく、実際に現地に行って文化を知りたかったからです。遠くになってしまうので、良ければですが…」
「あぁ、そこは大丈夫。遠くに行くための指輪があるから」
「そうなんですか!?ありがとうございます!」
ノースさんは興奮気味になっているが、他の皆からは溜息をつかれる。
皆さん、私が言うのも可笑しいですが、諦めてください。
これが、私なのです、はい。
「レイはええのかの?」
「うん、レイは不参加だから」
「「え~、レイさん来ないの?」」
「うん、ゴメンね」
ショボンとする双子をよしよしと頭を撫でる。
「残念ですが、仕方ありませんね。では、具体的に場所を決めましょう」
頭の中の大先生で調べると、2カ国の条件に当てはまる国が見つけられた。
「皆の意見に当てはまるのは、ドワーフの国テヒンか、エルフの国ラメルだね」
「そうなりますね」
ドワーフの国にあるテヒンとは、観光地として有名で他種族からも人気の都市の1つだ。
ドワーフは物作りが得意のため、至る所に武器屋や雑貨店が存在する。
何よりも温泉もある。
これは私も元日本人として異世界のお風呂には、ぜひとも入りたいところである。
「テヒンは分かるが、ラメルは何でじゃ?」
「エルフの国は魔法が発達してるでしょ?ドワーフの国は武器屋の質は高い。品質は下がるけど、エルフの国は魔法が使える武器が多くあるの。何よりラメルには、自然が多いから色んな生き物と触れ合える場所もあるらしいし、ゆっくりも出来るからよ」
「「へぇ~」」
まぁ、大先生によれば、だけどね。
もちろん、差別が比較的少ない場所でも調べたが。
どちらにせよ、どちらもゆっくり過ごせるのは間違いないはずだ。
「俺はテヒンだな。前から行ってみたかった」
「私はラメルですね。魔法も生き物も興味深いです」
あらま。
早速、意見が分かれたようだ。
「他の皆は?」
「わしは行ったことが無いラメルじゃな」
「私は、温泉に浸かりたいので、テヒンで」
「「僕たちはスゥが行きたい所で良いよ!」」
結局、最後に残った私に委ねられてしまった。
うーん、と決めかねている私にバナじぃが言う。
「スゥは何かしたいことは無いのかの?」
「私のしたいこと…」
私がしたいことなら、今、やっている。
悲しい扱いをされているイケメンを、少しでも助けたいから宿屋をしている。
…いや、確かに助けたいからというのは事実だ。
だが、私も人と関わりたいから宿屋を始めたはずだ。
そして、この世界にいるはずのちぃに会うためでもあった。
なら、私は…。
「よし!決めた!」
「お、どっちにしたんだ?」
「両方!!」
「「「「「え」」」」」
天使くんがちぃは種族も姿形も違うかもしれないと言っていた。
記憶は無いだろうけど、きっと会えば分かるはずだから、色んな場所に行けば良いんだ。
そうすればきっと、いつか会えるはずだから。
「お金はあるから大丈夫!4泊5日でテヒンとラメルに行こ?」
「「賛成!」」
「オーナーが良いというなら喜んで」
「武器屋巡りをするのが楽しみだ」
「楽しみですね!」
「他国に行くのは久々じゃわい」
こうして行き先を決めた私達はラウンジで盛り上がっていると、団員がちらほらとお風呂から上がって来たので日程はまた明日決めることとなり解散した。
今回は疲れ果てたらしく、お風呂から出た団員達は食堂やラウンジに集まる事無く、部屋に向かっていき、私達従業員も部屋に戻っていた。
私は離れで1人お風呂に入りながら物思いにふけっていた。
「皆、本当に強くなったなぁ…」
二次審査をした頃よりも動きが洗練されていて、威力も上がっていた。
これなら対抗戦力としては十分だろう。
「仕事も私が教えなくてもほぼ大丈夫だし」
役割は1人1人がしっかりとこなしているため、私は提案係となっている。
まだ始めて日が浅いから、知名度が低く客足が少ないのが難点ではあるが、タンザさん達が来てくれるのでまだ安全圏だ。
優しい人達に囲まれて幸せだ。
でも、それで終わって良いのだろうか。
私はちぃみたいな人を救えるような人になりたい。
前世の私のような人を少しでも減らしたい。
前世と違って今回の私は何でも出来る。
なら、その力を生かさなければ。
何よりも前世の私が報われない気がした。
「今の私に他に何が出来るのかな…」
この広い世界の、何処に、誰が、何に苦しんでいるのかすら詳しく分からない現状で今の私に出来るのは、目の前の苦しんでいる人に手を差し伸べてあげることしか出来ない。
もどかしい気持ちを残し、私は部屋に戻って明日に備えて眠りについた。
朝となり私はいつも通り食堂で朝食を皆で食べ、今は1人になっていた。
他の皆は従業員も団員達も含めて、バナじぃの特訓を受けに出掛けていったのだ。
早々とノースさんが洗濯も終わらせてくれていたので、やる事が無い私は宿の入口付近に綺麗に咲いている野花に水をあげていた。
宿を作った時には、まだ所々に細々と咲いていた花々は、今やかなりの数の花が大きく咲き誇っていてとても綺麗な光景と化していた。
これに入り口近くまで花のアーチを作ったらどうだろうと考えていると、草の擦れる音が道の右側から聞こえた。
カサカサッカサカサッ
その音はどんどんとこちらに近づいてきている。
近づく音には草の擦れる音と共に、金属がカチャカチャと鳴る音や数人の人の足音が聞こえ始める。
少し物々しいと感じた私は、身を固くしながら音のする方を見ていると、道に出てきたのは3人の男性達だった。
フードをしているので顔は見えなかったが、マントが風で少しめくれ3人とも体格が良く、鎧を着ていることと剣を所持していることが分かった。
見た目からして騎士の方々だと予想される。
そして顔は見えないから分からないが、何やらとても疲れたような疲労感を漂わせていた。
そして3人とも「はぁ~~…」ととても深い溜息をつく。
事情は知らないがそれが不憫に思えて、私は声をかけた。
「あ、あの…どうかしましたか?」
私が声をかけると急に距離を取られ、剣を向けられた。
驚く私をよそに3人も私を見て驚くも、怪訝そうに私に問う。
「私たちに何の用だ?」
「え、えと、とても疲れているようでしたので声をかけただけなのですが…」
「…女性が1人で何故こんな所にいる」
「後ろに私の家と仕事場があるので…」
私と後ろの宿を見て本当のことだと判断した3人は剣を収めてくれた。
「すまない。無実の女性に剣を向けて怖い思いをさせてしまった。どうか許してはくれないだろうか」
3人は律儀に頭を下げてくれた。
「いえ!大丈夫ですので、どうかお顔をお上げください!」
私の言葉に申し訳なさそうに頭を上げてくれた。
「何とお優しい。本当にすまなかった」
「良いですよ。それより何かお困りですか?」
「…安全な場所がなかなか無いだけだ」
また深い溜息をつく3人は遠い目をしているような気がした。
もしかして、怖い人にでも追いかけられているのだろうか?
「えと、私、宿を経営してて今は冒険者の方々も泊まっていらっしゃるので、良ければウチに泊まりますか?」
「そ、それは嬉しいが…ん~…」
私に背を向けて身を寄せ合いながら、何やら3人で会議が始まってしまった。
困ってる人には助けてあげたいが、それを無理強いするつもりは毛頭無い。
返事を聞くために待っていると決意したようで私に体を向ける。
「失礼だが私達の顔を見せてから決めさせてもらっても良いだろうか?」
「はい。構いませんよ」
3人は目配せをしてパッとフードを取り、私を見つめた。
私はとても驚いた。
彼らは目は瞼の肉で覆われ前が見えているのか心配になるほど細く、眉は太く繋がっていたり極端に短かったり。
鼻は豚鼻で低く大きい。
ほっぺは殴られたのかと疑うほど赤い。
口もたらこ唇で裂けたのではと思うほど大きい。
ほぼ顔のパーツは非対称。
つまり、初めて見る今世でのイケメン達だったのだ。
読んで下さりありがとうございます!
何度も言いますが、この小説は完結まで書き続けますので間は空いても投稿していきますので安心して下さいね。
今回も楽しんでもらえたら幸いです。
また次回もお楽しみ頂けるよう頑張ります!




