温もり★~双子視点~★
双子頑張ってます。
~シロ視点~
やっと面接が始まる。
いらないと言われなかった僕たちはまだ希望はあるはず。
そう思っていたけど、レイさんの言葉で僕たちの希望は薄くなっていた。
レイさんは、紙に書いた人から面接に来るように言って部屋に戻っていった。
紙を見てみたけど、やっぱり文字が読めない。
大人に文字を教えてもらおうとしても、逃げていった。
紙が書けないと面接に受けに行くことも出来ない。
やっぱり、無理だったのかな。
2人で隅にいると、僕たち以外にはもう誰もいなかった。
面接が終わっちゃったと思って泣きたくなった。
でも、僕たちに近づいてくる気配を感じて振り返ると、そこにはレイさんがいた。
「どうかしましたか?」
顔から表情は見えないけど、オレンジ色が見えた。
オレンジ色は先生やお爺ちゃんがよく見せた嬉しいときに出る色だった。
何で喜んでいるのかわからないけど、僕たちに悪い感情は持ってないと伝わってきた。
僕たちは、レイさんに文字を書けないことを伝えた。
だから、面接を受けることが出来なかったのだと。
そうしたら、僕たちの代わりに書いてくれると言ってくれた。
しかも、面接も受けさせてくれると。
僕たちは驚いた。
誰も僕たちにそんな言葉をかけてくれたことはなかったから。
僕たちを置いて部屋に移動するレイさんに僕たちは急いで付いていった。
名前と年齢と出来ることを答えて、最後に望みを聞かれた。
僕の望み。
迷うことは何もなかった。
お爺ちゃんや先生、出来るならレイさんと一緒にいたいと思った。
クロも考えることはやっぱり同じだったみたいで、僕たちは『僕らの大好きな人達の側にいることです』と答えた。
これが出来るならどんなことでも頑張ろうと思ってた。
そう思っていたらブレスレットを僕たちに手渡して合格だと言われた。
最初、夢かと思ったけどくれたブレスレットを見て、本当なんだって思えた。
もう、涙が止まらなかった。
まだ働けるとは決まってないけど、僕たちを外見だけで判断しなかった。
話を聞いてくれた。
この人がいる仕事場なら働きたいと強く思った。
その日は嬉しくって僕たちはしばらく書いてなかった絵をお爺ちゃんに出した。
二次審査に受かることが出来たら、お爺ちゃんに少しは恩返しが出来るようになったら良いな。
そう思いながら、二次審査の日を迎えた。
森の入り口で待っていると、レイさんが現れた。
今回もダメだった人が出たみたいで、その人達を追い返す。
レイさんは追い返した後、僕たちのブレスレットに1回分の回復魔法を付与してくれた。
付与は出来る人が少ないのに、出来るレイさんに憧れた。
僕たちもいつかレイさんみたいになりたいと思った。
付与をした後、レイさんは僕たちを見送って消えた。
レイさんは、年に何回か会える程度って言ってたから、次に会えるのはいつになるかわからない。
でも、また次に会えたら強くなった姿を見せられると良いな。
そうして、僕たちはオーナーがいると言っていた宿を探しに森へ入っていった。
森に入ったら、小型の魔物が何匹かやってきた。
僕たちは、いつもやっている通りに動いた。
魔物を倒した後、おじさん達を見るとやっぱり紫色になっていた。
紫色は怖いって思ってるって事。
でも、紫色の他に青色が少し混ざってた。
そして、1人のカッコいいおじさんが僕たちを心配する。
どうして心配するのかわからなかった。
思ったことを聞いたら、おじさん達は僕たちは怖いけど悪い存在じゃないって、仲間だからと言ってくれた。
ここに来て、嬉しいことばかり起こる。
おじさん達、ありがとう。
途中、ビックリな事もあったけど、僕たちは宿を探し続けた。
少しして、足音が聞こえた。
かなり速い速度で、こっちに向かっている。
音がする方向に僕たちは身構えた。
スゴい勢いで草むらから出てきたのは、森の案内人だった。
おじさん達も僕たちも初めて見る森の案内人に、驚いたけど僕たちを見て来た方向に歩き出した。
付いてこいと言っている気がして、僕たちは急いで付いていった。
道は人が通るような道じゃなくて、噂に聞く獣道だった。
遅い僕たちを見て、早くしろという目を向ける。
必死に付いていくとやっと人が通れる道に出た。
森の案内人はその道に出ると、僕たちを放って走り出して、大きなお屋敷に立っていた人にすり寄っていた。
女の人だ。
女の人には何も良い思い出がない。
僕たちはおじさん達の後ろから女の人を見る。
女の人は、森の案内人とお友達なのか仲良さそうにしていて、果物をあげると嬉しそうに森の案内人は去って行った。
女の人は僕たちを見て、自己紹介をしてくれた。
女の人はスゥという名前で今回の仕事のオーナーだった。
女の人がオーナーだったことにも驚いたけど、僕たちを全員合格と言った事にも驚いた。
女の人なら醜い僕たちを嫌うはずだから。
ビックリしておじさん達と話してる内容なんて聞こえてなかった。
おじさん達と話し終えたスゥは僕たちを見て近くにおいでと話しかけてきた。
僕たちはスゥを見て、ビックリした。
今まで見たこと無いくらい、綺麗なオレンジ色やピンク色が濃く出ていた。
少しレイさんと似ている気がした。
恐る恐る近づくと、お爺ちゃんの話を聞いていたんだと教えてくれた。
そして、会いたかったと嬉しそうに笑いながら言う。
さらには、先生やお爺ちゃん以外に誰にも触ろうともしなかったのに、スゥは僕たちを抱きしめてくれた。
何が起こっているのかわからなかった。
会いたかった?
僕たちに?
誰からも必要とされなかった僕たちを?
スゥは僕たちを抱きしめながら、ずっと一緒、と言う。
頑張ったね、と褒めてくれる。
ここに来てくれてありがとう、と感謝される。
欲しかった温もりがそこにはあった。
今まで必死に手を伸ばしてたものが、すぐ目の前にあった。
もう声を上げて泣くしかなかった。
先生がいなくなっても、お爺ちゃんと暮らせなくなってもこんなに泣いた事なんて無かったのに、初めて僕たちは大声で泣いた。
この人と一緒にいたい。
ずっと一緒に暮らしたい。
仕事だけの関係じゃなくて、家族みたいになりたいと思った。
涙で服を濡らしてしまったことを謝ると笑顔で返してくれるから、僕たちも笑顔で返したらまた笑ってくれる。
宿を案内するって言うと僕たちの手を取ってくれる。
本当にまた泣きそうになる涙を堪えて、僕たちは僕たちよりも少し大きくて温かくて柔らかい手を握り返した。
最初に案内してくれたのは、食堂だった。
たくさんのイスや机があって、どれも綺麗で本当に座って良いのかなと思ったけど、机に並んである良い匂いのする食べ物に釘付けになって、おじさん達を置いて座っていた。
手を洗うように言われ僕たちは走って手を洗い、みんなで食べようとした。
座ってから思ったけど、これをどうやって食べたら良いのかわからなかった。
お爺ちゃんや先生と暮らしていたときは、スプーンやフォークが並んでいる事なんて無かった。
今、目の前には見たこと無い食べ物とスプーンが3本、フォークが3本とナイフが1本ある。
目の前の大人達は、料理にビックリしていて食べ始める気配がない。
そしたら、スゥが食べ始め、僕たちにも食べるように勧めてくれた。
見よう見まねで、一番端に置いてあったスプーンを取って、スゥがオムライスと呼んでいた食べ物を食べた。
ご飯を初めて食べたけど、こんなに美味しいなんて知らなかった。
おじさん達も一気に全部食べて、僕たちと同じメニューをおかわりしていた。
スゥがおじさん達のために料理を作りに行った後、僕たちはハンバーグを食べた。
オムライスも美味しかったけど、ハンバーグも美味しかった。
つい、僕たちは取り合ってケンカしてしまったけど、スゥが半分こずつハンバーグをわけてくれた。
憧れていた家族みたいで嬉しかった。
賑やかな食事の後は、色んな所に案内してくれた。
どれも、僕たちが見たことも無いスゴいものがいっぱいあった。
使い方は、少しずつ慣れないと難しそうだ。
そして、最後に僕たちが住むお家に向かった。
次回で双子視点、ラストです。
お楽しみください。
只今、久々の妄想フィーバーです。
というか、最近、暇人なので燃えてます(≧∇≦)b
少々、お付き合い下さい笑




