従業員専用棟
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「皆、今から鍵を渡すから絶対に無くさないでね。皆が今日から住んでもらう所は、これが無いと見えないし、入れないようにしてある特別な場所なの。皆に渡したこれは、それぞれの部屋に入るための専用の鍵だからね」
今回、私が二次審査を始める前に準備していた1つははこれだ。
私だけ離れがあって、分からないようにするのは不平等だと思ったからだ。
まぁ、そのお陰で昨日は大変だった。
流石に、個人を限定してのスキルは無かったので、久しぶりにスキルを増やした。
いつものお伽話レベルのスキルである。
新たに増やしたのは
使用者権限:対象を限定して使用を制限する。また、他の者がかけた制限の変更をすることが出来る。
という物だ。
これは、鑑定権限と同じで使用できる者はかなり少ないが限定という使用者権限の下位版がある。
それは、他の人がかけた制限を変えることは出来ない。
下位より上位の方が良いかなという考えからなのだが、私は何を目指しているのだろうかとも不安になる。
「これ、鍵じゃなくてネックレスですよね?」
「うん、でもこのネックレスを付けてるだけで建物に入れるし、自分の部屋にも入れるよ」
「マジかよ」
「うちには誰にも言えないような技術がいっぱいあるから、誰にも言ったらダメだよ?じゃないと、レイに怒られちゃうからね」
冗談で言ったつもりだったが、全員の顔から色が抜けた。
皆がうんうんと勢いよく縦に首を振る。
え、そんなにレイって怖かった?
何気にショックである。
まぁ、それは置いといて、建物に到着したようだ。
「着いたよ。ここが従業員専用棟。これから皆に住んでもらう場所よ」
皆が驚いて立ち止まった。
うん、そうなることは私でも分かる。
今回、少し張り切ってしまってテニス2コート分の広さの2階建てで広く作りすぎてしまったのだ。
当初の予定では、6人分の部屋を作るつもりが8人分になってしまったのも誤算だ。
「…これ、本当に私達が住む場所ですか?貴族の家とかじゃなく?」
「うん、そうよ?ほら、細かいことは気にせず行くよ」
「え、これ細かいですか?私達がおかしいのですか?」
「諦めろ、ノース。気にしたら負けだ」
「「わーい!大きなお家だ~!」」
私は扉を開けて皆を中に入れた。
扉を開けてすぐには宿ほど大きくはないが、皆が集まって話せるリビングとオープンキッチン。
宿とは違って、家をイメージして作ったのだ。
当たり前だが、上下水道完備で各部屋にトイレもあるし、お風呂もある。
部屋は1階に2部屋と2階に6部屋部屋置いた。
こうすることで、それぞれの部屋に均等な空間が出来上がった。
「…この仕事を受けて良かったな、俺ら」
「「ああ」」「「うん!」」
彼らも満足げにしているので、結果オーライだ。
「荷物は明日から徐々に運んでもらうとして、クロとシロは2人一緒の方が良いかなと思ってベッドを2つ置いたんだけど、どうする?分ける?」
「「ううん、一緒が良いな」」
「分かった、じゃあ部屋を案内するね。悪いけど、勝手に部屋は決めさせてもらったよ~」
そう言って2階へと私達は上がった。
「まず、マークさん」
「はい!」
マークさんは2階に上がってすぐの角部屋だ。
硬い木で出来た扉を他の人は開けられないのでマークさんに開けてもらう。
「うわぁ…!」
マークさんの部屋は森をイメージして緑を基調としたアンティークな家具を置かせてもらった。
主任としての仕事もあると思うので、書斎風だ。
「嬉しいです。以前、息子達と森で遊んだことを思い出させてくれるような部屋ですね。ありがとうございます!」
「気に入ってくれたのなら良かった。なら、次はトニーさんの部屋よ」
マークさんの隣の部屋はトニーさんにした。
トニーさんの部屋は所々に赤と金のラインを入れたシンプルな内装にしている。しかし、皆と違うのは収納スペースを大きく取ったことだ。
「トニーさんは前に、武器屋で働いていたと聞いたから武器とか好きなのかなと思って、飾れるくらいのスペースの部屋を用意したんだけど…どう?」
「ああ、確かに俺は武器が好きだぞ。集めるのが趣味で、今、物置場が無くなってきてて困ってた所なんだ!感謝する!」
おう、既にいっぱいあるんですか。
この部屋、武器庫になるのかな。
「そ、それは良かった。じゃあ、次はノースさん」
トニーさんの部屋の隣はノースさんだ。
やっぱり親友が近くの方がお互いに安心だろう。
ノースさんの部屋は、トニーさんと反対に青と銀のラインを入れたシンプルな部屋。
だが、収納スペースの代わりに本棚を沢山設置した。
イメージ通り、本が好きで幼い頃の夢が司書だったと聞いた私は、本棚を作った。
本の趣味は分からなかったので、これしか作れなかったのだが、感動して涙を流しているので良かったのだろう。
「ありがとうございますっ…!」
「どういたしまして、最後はクロとシロの部屋だよ」
2人の部屋はノースさんの横にした。
「じゃあ、2人とも開けてみて」
「「うん!」」
ガチャッと開けてみるとそこは、沢山の星を散りばめられた夜空が広がる部屋だった。
これは、大先生から得た夜空の絵を創造魔法で大きな写真を作り出して貼ったのだ。
こんなに世界は広く、綺麗な景色があるのだと教えてあげたかった。
「私、星が好きなんだよね。とっても綺麗でしょ?どう?気に入った?」
言葉を掛けても返答がない。
見れば双子は手をぎゅっと握って泣いていた。
「どうしたの!?嫌だった!?ごめんね、すぐに別の部屋にするね!」
慌てる私の手を2人は握って止める。
「「ううん、ここが良い」」
「で、でも」
「…昔にね、先生と約束してたの」
「…星を見に行く約束してたの」
「先生?」
もしかして、バナじぃの友達のことだろうか?
私は2人の目線に合わせて、話しを聞く。
「先生も星が好きだった」
「よく僕らに話してくれたよ」
「「だから、僕らも見たかったんだ」」
この2人にとって大切な約束で、とても楽しみにしてたんだろう。
でも、それが叶うことは無かった。
約束が果たされる前に、その先生が亡くなってしまったから。
だから『見たかった』と言ったんだろう。
「なら、私が本物の星を見せに連れて行ってあげるよ。こんな部屋の絵じゃなくて、綺麗な星を」
「「本当に?」」
「うん、じゃあ今度は私と約束しよ?」
叶えられなかったこと、全て私が叶えてあげる。
私には、それだけの力がある。
「もう何処もいかない?」
「もう消えていかない?」
「勿論よ、私は2人と一緒にいる。約束も守るよ。クロもシロも私と一緒にいてくれる?」
2人は私の好きな笑顔で大きく頷いて私に抱きついてきた。
「「ありがとう。スゥ、世界で1番大好き」」
宇宙で1番可愛い告白を受けた私は、悶え死にそうだった。
「私も2人のこと大好きよ」
抱きつく2人を私も抱きしめ返す。
「「スゥ、お願いがあるんだけど良い?」」
「うん?なぁに?」
「「今日は僕たちと一緒に寝てくれる?」」
「「「ぶっ!!」」」
私達を穏やかに見守っていた彼らが、突然、吹き出した。
何事か。
「2人とも、それはダメだ。絶対に」
「「何で?」」
「良いですか?いくら子供とはいえ、12歳です。女性と同じ部屋で寝るなど良くありません」
「そうだよ?私も元妻と息子達が一緒に寝るなんて事無かったからね。オーナーもそう思いますよね!?」
「え、私は大歓迎なんだけど?」
「「「は!!?」」」
「「じゃあ、今日は僕たちの部屋で一緒に寝ようね。約束!」」
「分かった、じゃあお邪魔しようかな」
「「うん!」」
こうして大人組は何故か朝まで寝られず、フラフラした状態で荷物を部屋まで運んでいたのを、私は次の日に知ったのだった。
双子の可愛さフィーバーです。
純粋ってある意味恐ろしいですよね笑
私、年上派だと思ってたんですけど、年下派に引っ張られそうです笑
皆さんはどっち派でしょうか?




