休憩
今回も読んでくださりありがとうございます!
今日は、夜9時にまた投稿しますのでお楽しみに。
一次審査終えた後、私は二次審査の準備を進めていた。
合格者達には、次の集合場所を森の入り口と伝えた。
つまり、試験会場は森だと全員が理解したことだろう。
確かに、今回私は試験会場として使うのは森全体だ。
しかし、ただ戦闘力を見るための物ではない。
一次審査では、心の美しさを見た。
優しい心を持っていなければ、うちの宿では働けない。
そして、今回の二次審査では行動力と協調性も見るために森全体を使うのだ。
いくら心が美しかろうと、行動が伴わなければ意味が無い。
そして、私は守られるだけの何もしない者は嫌いなのだ。
子供やお年寄りだったら仕方ないとは思う。
力を付けたくとも付けられないのだから。
だが、面接で聞けば皆にはそれだけの力があり、何より望みがあった。
今回、合格にしたのは人に関する望みを持った者ばかりだ。
誰かを思って働きたいと願う心の綺麗な人だ。
私はその誰かのためにどれだけ行動できるのか、協力出来るのかが見たい。
願うばかりの人よりも行動に移せる人が欲しいのは当然の摂理だ。
その為の二次審査だったのだが、私は今呆れ果てていた。
「はぁ…あれ程言わないように言ったのに広まるなんて…」
合格者の証として渡したブレスレット。
それが今、小範囲だが広まっていたのだ。
"幸運を呼ぶブレスレット"
"どんな願いでも叶うブレスレット"
"魔法の威力が倍増するブレスレット"
今のところこの3つ。
私は秘密をバラしても良いようにあえて、何も付与していない本当にただの石に紐を通しただけのブレスレットを渡したのだ。
鑑定出来ないのも、本当に何も掛かっていないただの石だからに過ぎない。
しかし、こうも罠に引っかかってくれるとは予想外だった。
そう、今回渡したこのブレスレットは罠だ。
もし、二次審査に合格して宿で働けても私の秘密がバレては元も子もないし、一時の気の迷いで裏切られるなんて真っ平御免だったからだ。
そう思っての罠だ。
当然、罠に掛かった人物も分かっている。
理由は、どんなブレスレットなのか1人1人に説明が違うからだ。
だから、今の時点で3人の者が脱落したということになる。
噂は、本物を見れば嘘だとされて消えるだろうが、今回、3人減ってしまったせいで残り人数が定員以下の5人になって楽にはなるが。
100人以上の応募者が今は5人。
どれ程、心が綺麗な者が少ないかがよく分かる。
溜息が出るばかりだ。
しかし、そんな暇はない。
明後日には二次審査をしなければいけないのだから、次の準備に取りかかった。
色々準備には追われたものの、新しくできた友達との約束を守らないわけにはいかない。
忙しかったが、何とか終わらせフードを被って昼過ぎに街へ向かった。
「あ、いた。バナじぃ~!」
バナじぃと会うのはこれで2回目。
約束通り、バナじぃと初めて会った場所に行くと前のように立っていた。
しかし、前回と違うことと言ったら前よりも少し若々しくなったような?
「おぉ、スゥよ。良く来てくれた。ちょうど話したいことがあったんじゃ。さぁ、わしの家に入ってくれ」
もう、如何にも嬉しいことがありましたと言わんばかりに上機嫌である。
あの施設の隣に建てられた質素ではあるが品の良さそうな家に入らせてもらった。
外観通りの内装。
流石はダンディなお爺様である。
バナじぃは私をイスに案内すると、上機嫌の理由を教えてくれた。
「実はの~」
長くなるので要約するとこうだ。
バナじぃは5年前、魔族から攻撃されたトラウマから魔族に多いとされる髪を持つ双子には目をずっと合わせることは出来ないが、普通に話をすることは出来る。
そんなバナじぃを気遣って双子は会うことを避けるようになった。
代わりにバナじぃには絵が届くようになったのだが、3年前から絵はパタリと来なくなったらしい。
それが今日、久しぶりに届いたのだという。
「へぇ、2人は何が描かれていたの?」
「1人の男が笑っている絵じゃよ」
ドキリ
他の絵も詳しく聞くと、やはり昨日のことだった。
仕事の面接を受けた絵。
私と出会った絵。
一次審査で合格した絵。
どの絵にも私が映っていた。
私の後ろにはいつも黄色、オレンジ、ピンクと色んな色が塗られていた。
「この後ろに塗られている色は?」
「あの子達から見た、この人の感情の色じゃな。黄色は期待。オレンジは歓喜。ピンクは親愛。どうやら、余程この人は双子に会いたかったようじゃな」
ギクッ
自分のことを言い当てられ、少し反応してしまう。
本当にあの子達にはバレバレのようだ。
絵を見ながら双子の事を話すバナじぃは本当の孫のように愛おしそうにしていた。
「バナじぃは双子のこと、大切に思ってるんだね」
「当たり前じゃよ、あの子達を拾ってきたのはわしじゃからのぉ」
「え、そうなの?」
「そうじゃよ?…あの子達を見つけたのは人目も着かないスラム街での、捨てられておったんじゃ。まだ6歳で骨が分かるほど浮いて痩せ細っていて、2人とも弱り切っていた。わしはいても立ってもいられんでな、すぐにわしの家で食事も服も寝る場所も与えたんじゃ。…5年前のあの日までは」
悔しそうなバナじぃは自分を責めているように感じた。
まるで、バナじぃのせいで2人は不幸になったのだと言っているようで辛かった。
「…バナじぃ、大丈夫よ。もう、あの子達はこれから幸せになるから。それに、あの子達はバナじぃに感謝してるんじゃないの?」
「何でそう思うんじゃ?」
「私だったらこんなに思ってくれるバナじぃを嫌いになることなんて出来ないもの。何より、あの子達は感情の色が見えるんでしょ?」
それに、私は見たのだ。
あの子達の望みを聞いたとき「僕らの大好きな人達の側にいることです」と答えたイメージを。
その大好きな人のイメージにはバナじぃも含まれていたのだから、悪く思っているはずがないのだ。
「バナじぃが申し訳ないって思ってることも、大好きだって気持ちも全部伝わってるんじゃないかな」
「…あぁ、そうだと良いのぉ」
ダンディなバナじぃは、こめかみにグリグリと手を押さえ、涙を止めようとしていた。
「いかんなぁ、わしも年じゃ。涙腺が脆くなっておるわい」
こんなに想ってくれる人がいたから、2人はあそこまで純粋に育ったのかなと少し2人を羨ましく思ってしまった。
こうして帰りの時間が迫って来たので、最後に質問をした。
「バナじぃ、双子の名前って」
「髪の色からとってクロとシロじゃ!」
「…バナじぃ、本当にそれは無いと思う」
「何!?3日3晩寝ずに悩んで付けたのにか!?」
「それで!!?」
私はバナじぃはダンディなお爺さまに"残念な"を加えることを真剣に考えていたのだった。
何やかんやで、帰る時間となった私はバナじぃに玄関まで見送ってもらっていた。
「今日はありがとう。久々に楽しかったわい。次はいつ来るのかの?」
「うーん、早くてもまた3日後じゃないかな?」
「分かった、3日後じゃな。今度はお菓子でも用意しておくわい」
「流石、バナじぃ。ありがとう」
こんな会話をしていると、突然、突風が吹き私のフードは取れ長い髪が乱れてしまう。
「うわぁ、スゴい風だね。バナじぃも気をつけてね?」
と、バナじぃに向くと口をあんぐりと開けていた。
顎が外れるのではと心配になった。
「バナじぃ、大丈夫?」
「…お、お前さん、女の子じゃったのか??」
「?うん、そうだよ?」
そういえば、バナじぃの前でフードを取ったことが無かったなぁと呑気に思っているとバナじぃがとてつもなく元気になった。
いや、若返ったと言う方が正しい。
「スゥや、困ったことは無いか?このバナじぃ、いつでもお前さんのじぃであり続けるからの。何でも言うんじゃぞ?虫がおったら、このじぃが直々に叩きのめしに行くからの」
こうして、何故かバナじぃが、デロデロに甘やかす本格的な残念なダンディお爺さまにキャラ変しました。
イケてるじぃが残念なじぃに…。
そんなじぃも私好きなんですよ笑
次回もお楽しみ下さい!




