前世~後編~
前世編最後です。
続いて呼んで下さった方本当にありがとう御座います。
あの日から私とちぃは私が小学校に行く間以外ではいつも一緒だった。
起きるときも、遊ぶときも、食べるときも、寝るときも、もちろん歯磨きするときも。
何をするにも一緒だった。
いつの間にか私たちはこの病院の看板娘のようなものになっていた。
患者さんからも先生や看護士さんからも、微笑ましいような目で見られる。
それくらい仲が良かった。
しばらく経ってちぃが私に彼らを勧めてきた。
「見てみて!そーちゃん!この人達格好良くない!?私ね、こんな王子様みたいな人と結婚してお嫁さんになって幸せになるのが夢なんだぁ~」
目をキラキラさせ見せてきたのは、目が二重で、整った眉に、スラッとした高く小さな鼻、薄くきれいで乾燥知らずの唇、左右対称に均等に顔のパーツがあって、スベスベとした肌を持つ男性達。
いわゆる、イケメン達であった。
周りにあまりいなかったので改めてみるととてもカッコいいと思う。
「うん、スゴくカッコいい」
キラキラした瞳で背中から何かオーラを放っているようにしか感じられなかった。
「でしょ!?他にもね色んな人がいるから一緒に見よう!?」
それからは、数え切れないほどのイケメン達を物色した。
ツンデレ系、王子様系、ヤンデレ系、犬系、天然系、性格に関しては本やらゲームやらでちぃと分かち合った。
そして、私たちは第2ラウンドに突入した。
それは種族に関してだった。
例えば獣人、エルフ、ドワーフ、妖精族、魔族、などなど多岐に渡った。
あれがいい、これがいいと毎日のように話し合った。
そして、ちぃと出会って2年がたつ頃には私たちはイケメンについて網羅したのではないかと思うほど大好きになってしまっていた。
お陰様で周りからは将来の心配をされることが多くなってしまったが、ある意味2人とも本望なのだった。
ちなみに、本人達は知らないが2人があまりにイケメンを求めすぎる余り将来息子と…とのんびり構えていた人達は自分たちの息子とくっつけることが出来ない!と焦り、その息子たちに無理矢理お見合いをさせるというとばっちりを受けたことは息子たち以外誰も知らないことである。
そして、2人はまだ当時12歳で、息子達は18~25歳という年上ではあったということも親たち以外誰も知らないことである。
ある日のこと、ちぃが勉強を教えて欲しいと言ってきたため、代わりに髪のお手入れや化粧といったことを教えてもらった。
ちぃの親はずっと海外に住んでおり、化粧品メーカーを取り扱っているのだとか。
入院するまでずっと見て学んでいたらしく、ちぃはとても詳しい。
会ったことはないが、ちぃの話を聞く限り優しい親なのだろうと感じた。
対して私は、静かな方が好きなので本を読んだり勉強したりしていたら、天才だ!優秀だ!と騒がれてしまっていた。
だから、ちぃの苦手な勉強を教えてあげていた。
しかし、私は私でおしゃれが苦手だった。
でも、将来イケメンを捕まえるためならばと思わないでもなかった。
勉強を頑張っているちぃも似たような理由から頑張っている。
「そーちゃん!私イケメンと結婚してお嫁さんなるからその時は結婚式に来てね!」
「当たり前でしょう?私もイケメン捕まえるために頑張るわ。だから、ちぃも私の結婚式に絶対来てよ?約束なんだから」
「もちろん!」
こんな他愛ない会話がいつまでも続くと思ってた。
しかし、私はここがどこなのか忘れていたのだった。
私たちが住んでいるこの場所は、病院であることを。
小学校卒業を控えて準備があるため帰るのが遅くなってしまった。
そして本屋に立ち寄りお目当ての本を購入した。
ちぃと一緒に見るための雑誌買っちゃった。
…うん、仕方ないよね、表紙がイケメンだったし…。
そうして上機嫌に本を抱きしめながら私たちの部屋に行った。
「ちぃ、これ買ったから一緒に見よう~?」
そこには何もなかった。
そう、何1つも。
私の隣にあるはずのベッドも本もメイク道具も服や歯ブラシでさえも私の物以外何1つちぃの物は無くなっていた。
そして唐突にあの日のことを思い出した。
母が背中を向けてこちらを見ず2度と帰ってこなかったことを。
猛烈に嫌な予感がした。
これまでの人生で1番早く足を動かした。ちぃの主治医の先生のもとへ。
そして先生は1番聞きたくなかった報告を私にした。
ちぃは今朝、私が登校した後すぐに体調を崩したのだと。
そしてそのまま、息を引き取ったのだと。
私は先生を問いただす。
「ちぃは!!最近ずっと!元気だったわ!!体調を崩すなんてあり得ない!!嘘をつかないでよ!!!!」
そうよ!昨日も学校に登校する前もずっと夢を語ってたくらいなんだから!帰ってからも私と沢山話してて!今日も!行く前にぎゅうってしてから……っ!?!?
あの時ちぃは何て言った??
『そーちゃん、これからもずーっと大好きだよ!私はパパもママも中々会えなくて寂しくて苦しかったけど、そーちゃんのおかげで幸せになったよ!ありがとう!!!』
…ちぃのバカ。
どうして私に言ってくれなかったの?寿命がもう無いって。
最期だって。
私、ちぃに何も返せてないじゃない。
目が熱くなって、喉がきゅっとして息がし辛くなる。
気づいてあげられなくてごめん、最期に一緒にいてあげられなくてごめん、いつも返事遅くなってごめん。
「…っ私だって!私だってちぃと出逢えて幸せになれたんだよ!!?私の方がちぃのこと大好きなんだから!!」
もう届くことのないちぃに届くように。喉が潰れるのではないかと心配されるくらい、声を張り上げて私は言った。
3年後、私は元々の体の弱さと幼少期に無理をしていた罰と…ちぃを失った悲しみから精神的ストレスで衰弱しきっていた。
それでもちぃを失った3年間を生きながらえたのは、ちぃと夢中になっていたイケメン達があってこそだと思っている。
運動がてら公園に行ってベンチに座って将来有望なイケメンを探した。
それが、今の私の毎日の日課だった。
「ボールそっちいったぞ!キャッチ~!」
「わー、待ってよー!」
「もー!どんくせーなぁー!」
「ごめーん!」
そう言いながらボール遊びをしている子供達を見る。
あぁ、あの子将来きっとイケメンになるなぁと考える。
ふと、その近くの道路を通っている車を見ると運転手が助手席に乗ってる人と顔を向けながら話しているのが見えた。
近づいている子供は見えていないようだった。
気づいたら走っていた。
「危ない!」
男の子をぎゅっと抱きしめた瞬間、体に激痛が走った。
「かは…っ!!!?」
どん!とぶつかった音と共にボキッという音もした。
あぁ、痛い、骨折れたなぁ。
あ!そういえば子供は!?
全身の激痛と口の中の血の味をきにせず腕の中の子供に聞く。
「大丈夫だった?どこも痛くない?」
子供は震えながら首を何度も縦に振った。
心配そうに私を見る。
だから私は笑顔で
「よしよし、男の子だね」
と頭を撫でた。そこから私の限界を超え、意識が途切れた。
しばらくして慌ただしくなった。
病院に着いたらしい。
でもね、私はもういいって思う。
もう十分頑張って生きたと思うの。
どんどん視界も見えなくなって音も遠のいていく。
あぁ、やっとこのときが来たんだ。
あの子もいない、イケメン達を見る目も見えない、声も聞こえない。
だったら、こんな命いらないよ。
私を早くあの子の側へ連れてって。
会いたいよ、ちぃ。
気づくと真っ白な世界にいた。
自分で編集しながら泣きました。
自分で、ちぃ死ぬの、え?みたいな意味不明なことに陥ってました。笑
そーちゃんこれからどうなるのでしょうか。