不適合者
やっとの登場です。
お爺さんことバナじぃと話してから3日後の朝。
とうとう従業員面接の日となった。
「準備は出来たし、そろそろギルドに行きますか」
私は自分に偽装をかけた。
髪は短く、色はグレー、瞳は紫、身長を少し高くして若干不細工寄りの大人の姿に変身した。
服は前もって買っておいたピシッとした男性用の服を着れば、完了である。
そう、私は今回の面接でオーナーとしてではなく、男の副オーナーとして面接官をすることにしたのだった。
女だからと甘く見られても困る。
不細工にしたのはただ話しやすくするためにしただけだったが、この姿なら今後も何かと自由に行動するのに便利だと考えたからだ。
「あ、これも忘れちゃダメだよね」
私は偽装と隠蔽を発動させて、自分のステータスを作った。
名前:レイ(20)
種族:人族
体力:700
魔力:500
攻撃力:300
防御力:200
瞬発力:400
スキル:身体強化,回復魔法,水魔法,風魔法,炎魔法,鑑定
称号:なし
人族にしてはかなり強いステータスにした。
今後何かするときに役に立つかもしれないし、今回の面接でもバカなことをする奴らの牽制にはなるだろう。
姿を変えて荷物を持ち、私はギルドへと向かったのだった。
予定時間より1時間も前にギルドに到着した私は、まずフードを被って受付に行き、代行証明書を渡して借りた部屋に入った。
そして準備していた鏡を机に置く。
この鏡は私が幻影と真実の目を駆使して作った物だ。
これは真実の目の効果で嘘を言えば私だけに分かるように反応する。
そして、その人の本質を幻影によって見ることが出来るのだ。
これなら悪い考えを持った者が分かる。
悪い笑みを浮かべながら時計を見ると、30分前を指していた。
そろそろかと思い私は全知全能を発動させギルドに集まった大勢の志願者達を見た。
「お、お前も来たのかよ」
「当たり前だろ。こんな割の良い仕事ねーからな」
「だよな、これで働くことが出来たら俺、あの仕事場辞めるわ」
「俺もー」
沢山の人が集まってきており、そんな話をしていた。
「無理だぜ、お前らじゃ。だって、俺が合格するんだからよ」
男性達の話に割って入ったのは、この世界では美しいとされる顔を持った男性だった。
「俺はお前らよりも美しいからなぁ?醜いお前らじゃ相手にされねーよ」
私は1人部屋でドン引きしていた。
確かにこの世界では美しいのだろうが、私からすると不細工が「俺イケメン」発言をしていることに鳥肌が立っていた。
他の男性達は、苦虫をかみつぶしたように話し始める。
「そーかもしれねーが、分かんねーだろ」
「そうだぜ、夢を見るくらい良いだろ」
「夢を見るだけ無駄だとは思うがなぁ?」
口が悪いその男性は汚く笑いながらイスに座ろうと移動する。
が、歩いていた背の低い深くフードを被った男性に当たった。
「あぁ?何俺に当たってんだよ」
すると、もう1人のフードを被った同じくらいの背の男性がその人を庇うように立ちはだかった。
「そっちから当たって来たように見えました」
「止めなよ!」
「俺に口答えするのか、てめぇ」
口の悪いその男性は顔を見ようと2人のフードを無理矢理引っ張った。
「「!!!」」
2人はフードを守ろうとしたが、時既に遅し。
大勢いる志願者達にも、私にも見えてしまったのだ。
白と黒の髪のオッドアイで片目が赤色の幼さが残るイケショタの2人の姿を。
「うわっ、こいつら魔族か!?」
「いや、聞いたことあるぞ。あいつら、あのボロ屋に住んでる"醜い双子の悪魔"だ!」
「何でこいつらまでいるんだよ!」
ほとんどの志願者が口々に双子に罵声を浴びせる。
それを聞きながら2人はお互いを守るように近寄って手をつないでいた。
「悪魔なら俺が倒してやるよ!!」
さっきの男性が手を前に出して魔力を集め始める。
それもかなりの量の魔力を。
さすがに周りも慌て始めた。
「おい!止めろ!ギルドが壊れるぞ!?」
「しったことか!それに、悪魔を倒したら、この面接も受かるかもしれねーぞ!?」
「何!?」
「考えてもみろ、悪魔を倒したという功績があれば、倒せた奴が欲しいと思うに決まってんだろ?」
「いや、それはそうかもしれないが…」
「だったら、お前らも手伝え!」
周りの人達は迷いながらも男性のように武器を構えたり、魔力を集めていく。
「はっ、最初からそーすりゃあ良いんだよ!」
これだけの人数から敵意や殺意を向けられ、双子も怯えていた。
逃げれるように準備はしているが、足が震えている。
しかし、そんな彼らに声をあげる人々もいた。
「お、俺は寄ってたかって虐めんのは良くねーと思うぞ!」
「そーだぞ!いくら悪魔でも人殺しはダメだろう!?」
声を上げた男性達は、冷や汗を流しながら自分たちに攻撃が向けられないかと恐れていた。
「…ふんっ、確かにそうかもしれねーな。じゃあ、今回は大目に見てやるよ、悪魔め、命拾いしたな」
偉そうな態度で双子を見下す男性の言葉で、周囲の人達も収まったようだ。
だが、私の怒りは頂点に達していた。
時間になったので私は扉を開けて、志願者の前に出る。
志願者達も私が面接官であると出てきた扉から分かったらしく、静まり返っていた。
「それでは、本日面接を務めさせていただきます、副オーナーのレイです。以後、よろしくお願いします。さて、面接を始めさせていただく前に志願者の中に"不適合者"がおられましたので、通達させていただきます。私に触られた不適合者の方は直ちに退場なさって下さい」
そう言った私は、次々に攻撃をしようとしていた男性達に触っていった。
「以上、私が触った人は面接を受ける資格が無いと判断しましたので、帰って頂いて結構です」
「おい!ちょっと待て!」
声を上げたのはさっき、双子にちょっかいをかけ、私が1番に触ったあの男性だった。
「何で俺が落ちるんだよ!あの悪魔が何で残るんだよ!可笑しいだろうが!!」
血走っている目で私を睨み付け、手を前に出して私を攻撃する構えをした。
正直、呆れて物が言えなくなる。
「…はぁ。説明しなければ分かりませんか?副オーナーの私に攻撃をしようとしている時点で分かるでしょうに。人を人とも思わない人は必要無いのですよ」
「黙れ!!」
大きな炎魔法を私に向かって放つ。
だから私は、相殺できる水を作り出して対抗した。
対応できることに驚いたのか、ここにいる全ての人が固まる。
この人達は、ステータスという物を見ないのだろうか?
「これで分かっていただけましたか?では、ご退場願います」
実力を見せつけた私は不適合者達を睨みつける。
「覚えてろ!」と雑魚がよく言う台詞を残し、彼は顔を強ばらせ逃げるように走って出ていった。
こうして残った人数を見てみると、3,4割まで減っていた。
「では、残った方で面接を始めます。質問などはありますか?」
「「はい!」」
元気よく手を上げたのはあの双子だった。
「はい、何でしょう?」
「2人で受けても良いですか?」
「僕たちは2人で1つだから」
なるほど。
受かるときも、落ちるときも一緒が良いということなのだろう。
何とも、微笑ましい。
「はい、構いませんよ」
「「ありがとうございます!」」
深々とお辞儀をする2人。
すごく可愛らしかった。
「他に質問はありませんか?…なければ、面接の説明をします。今回は大きく減ったとは言え、まだ定員よりもかなり人数が多いので、二次審査まで行うことにしました。一次審査は面接です。面接で質問をするので返して下されば結構です。一次審査の合格発表はその場でお返しします。二次審査は一次審査の合格者にまた日を改めて、発表します」
残った志願者達は二次審査まであることに驚いてはいたが、すぐに納得してくれたようだ。
「では、これより一次審査を始めます。テーブルに記入用紙を用意していますので、記入出来た人から順に部屋に来て下さい。順番は関係ないので、ゆっくりお越しください」
説明した私は、そのまま部屋へ戻り志願者達を待った。
こうして、一次審査の面接は始まったのだった。
他にも脇役キャラを今後、登場させる予定ですが、誰か良いアイデアを持ってる方いませんでしょうか?
ぜひぜひ、ご意見・ご感想等お待ちしております。




