出立
とうとうお別れです。
寂しいです。゜(゜´Д`゜)゜。
「では、短い間だったが世話になった事、"大地の剣"を代表して深く感謝します」
食堂で宣言してからちょうど2刻後。
私達は、宿の前にいた。
本当なら受け取る予定はなかったのだが、どうしてもと言うことで宿泊代を受け取った後、タンザさんが代表として前に出て、私に頭を深々と下げる。
「気にしないで、と言っても無理ですよね。代わりと言っては何ですが、沢山この宿を利用してください。そうすれば、私も儲かるのでお互い様ですから」
命を助けた自覚はあるが、ここまで感謝された経験が無いため早く頭を上げて欲しかった。
「あなたは本当にお優しい方ですね。分かりました。時間を作ってでも、必ずまた泊まりに来ますね」
団員達もうんうんと頷く。
やはり、彼らはとてもいい人達だ。
この人達なら、これらを悪用しないだろう。
「ふふっ、よろしくお願いしますね。あと、これらは昨日のお礼です。どうか受け取ってください」
私は全員分の葉でおにぎりを包んだ物と黄色と透明な小さな2つの石とのキーホルダーを1人ずつに渡した。
「これは?」
「1つは見た目通り、おにぎりです。昼食にと思って作らして貰いました。もう1つはお守りですね」
「お守り?」
「はい、透明な石は所持者にだけ危機的状況が近づいているときには赤、既にその状況に陥ってるときは黒、危機が去ったときは青に色が変化します。黄色の石は少しでも幸運を呼ぶようになっています。ちなみにこれも、珍しい物なので秘密でお願いしますね」
私が石の説明をすると、皆かなり驚いたようでまじまじと石を見つめた。
これも当たり前だが、私が作った物だった。
透明の石は、剣聖の称号スキルである未来予知を付与して、危険度に応じた色は幻影で作り出した。
幻影はその所持者にだけ掛かるようにしているため、その人にだけ色が見えるという仕組みだ。
黄色の石は、加護をうけし者の効果である周りの人にも幸運が分けられる事を応用して、それを少し込めた物だ。
私のように周りにいる人に影響を及ぼす事は無いが、その人だけは少しだけ効果を発揮するようにしたのだ。
発揮しすぎると、返って目立ってしまう事を考慮した結果だった。
まぁ、今回も鑑定権限を使って鑑定拒否をして、その上で隠蔽をかけているため、他の人には鑑定してもただの石という徹底ぶりに、自分でも感心するばかりだが。
すると、そこにタンザさんが口を開く。
「私共は嬉しいですが、良いのですか?こんな貴重な物を」
「ええ、勿論です。私は使わないですし、皆さんには怪我をして欲しくありませんから。それに、皆さんにはいい人達ばかりしかいないので悪用なんてしないでしょう?」
「勿論!ここまでしてくれた恩人に仇なすような事はしません!もし、する奴がいるなら、この場で即刻切り捨てます!」
「いや、そこまでしなくても…」
ものスゴい剣幕に狼狽えながらも、全員が喜んでくれたようで安心した。
口々に私に向かって感謝の言葉をかけてくれる。
嬉しく思っていると私の方に歩いてくる2つの姿が見えた。
ゼノ様とルノ様だ。
「…ありがとう。これ、嬉しい」
「私からも礼を言うよ」
「いいえ、昨日のお礼ですので気にしないで下さい」
2人は感謝をしてから、不安な顔をして私に問いかけた。
「俺達が去った後、スゥはずっと1人でやっていくのか?」
「今回は私達がいたから良かったけど、このまま1人だとまた倒れてしまうよ?」
2人は私がこれから1人で宿をやっていくことに、とても心配しているらしい。
それは、他の人も例外では無く、不安そうに私を見つめる。
だから、私は安心させるように笑顔で返す。
「はい、今回の件を反省して従業員を何人か雇うことにしました」
そう、流石に大人数は厳しいと感じた私は少しばかり不便にはなるけど、雇うことにしたのだ。
まぁ、私の宿はどんな方でもがモットーなので、面接が必須で大丈夫な人が集まるかどうかは定かではないが。
「そう、なら良かったよ」
「ああ、取りあえずはな」
安心したように微笑むが、少しだけトーンが低くなったことに少し寒気を感じた。
が、見て見ぬ振りをした。
「ゼノール、考えてることは分かるがしょーがねーだろ」
「ルノマリア、お前もだよ」
声がした方に振り向くと、満面の笑みで近づいてきたのはロックさんとビューロさんだった。
「飯とお守り、ありがとな。お前だと思って、肌身離さず持っておくわ」
「俺も、そうさせてもらうね。ありがとう」
「どういたしまして」
どちらも優しそうで私も笑顔で返していると、突然、ゼノ様とルノ様は2人の先輩を捕まえる。
「スゥ、それじゃあ、またな」
「また、すぐにでも会いに来ますね」
と言い残して隊へと向かって引きずっていった。
「あー…、まぁ、とにかく私達は行きますね」
「あ、待って下さい、タンザさん」
「はい、何でしょうか?」
「この森は危険だと思いますので、私のお友達に皆さんを安全な道で案内してくれるようにお願いしましたので、少しだけ待って貰って良いですか?」
「ええ、願ってもない話です。有難くご厚意を受け取らせていただきます」
そうして、舗装した道に移動して、私は創造魔法でそよ風を作り出し、声が森全体に行き渡るようにして、名前を呼んだ。
「ウーちゃん、おいで」
名前を呼ぶとトコトコと走る音が聞こえきた。
すぐに、私の前にゼノ様とルノ様が庇うように出てくる。
「大丈夫ですよ、ゼノ様、ルノ様。あげたお守りを見てください」
警戒していた団員達がすぐに石を確認すると、青に光っている。
青は安全である証拠。
それに安堵したようで武器をしまい始める。
私はその様子を見て、屈んで手を広げて待った。
皆から何をしているのという目線を送られるが、その直後皆が理解することとなった。
私の腕の中に、うり坊が飛び込んできたのだ。
私は衝撃に耐えられず後ろに尻餅をついてしまうが、小さな鼻を頬に擦り寄せてくる、この小さな可愛らしいうり坊が可愛くてなでなでしていた。
「ウーちゃん、くすぐったいよ~」
「プギッ!」
「「「…は!!?」」」
「え?」
突然、団員達が声を上げるので私もウーちゃんも驚いてしまう。
何事だろうか。
「…お、お友達って」
「はい、この子ですが?」
タンザさんが驚愕といった様子で固まっていた。
え、私何かしただろうか?
「…この方は森の案内人ですよね?」
「え?」
「え?」
……………はい?
私はただ朝食後に、外を見たらこの子がいて、撫でたり、果物あげたりしていたら仲良くなって、名前つけて、うり坊なら安全な道知ってるかなって思って話しかけたら「プギッ!」って頷くから半信半疑でお願いしただけなんですけど!?
「この子ってあの森の案内人なんですか?」
「はい、私をこの宿まで案内してくれた森の案内人で間違いないかと」
腕の中を見ると、鼻を高らかに上げ、えっへんと言わんばかりにしていた。
どうやら本当に森の案内人らしい。
「…ただの動物かと思ってました」
「…そうですか」
何だか、タンザさんが悟りを開いたような目をしていた。
とても申し訳ない。
「…まぁ、森の案内人の案内なら安心ですよ!細かいことは、気にしちゃダメですよ!」
もう笑うしかなかった。
それは、タンザさん達も同じようで気にしないことにしたらしい。
溜息はつかれたが、全員、森の案内人ことウーちゃんが気になるようでウーちゃんを撫で始める始末だ。
「無礼は無いようにしろよ!?」
と、タンザさんに余計な気を回して貰いながら"大地の剣"は出発することとなった。
「それでは皆さん、また会える日を心待ちにしております。お体に気をつけていってらっしゃいませ」
「「「いってきまーす!!」」」
皆、すごい笑顔で大きく手を振りながら、ウーちゃんを先頭に旅立って行く。
寂しい気持ちはあったが、また次に会える日が楽しみだった。
私は皆の姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。
ちょっとしたチート発揮でした。
次回もお楽しみくださると嬉しいです。




