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変化★~とある団員にて~★

読んでくださりありがとうございます!

初登場な2人です。

度々登場予定なので、少し気に留めといてくだされば幸いです笑

【団員その①】


 俺は"大地の剣"の団員ロック。

 このギルドパーティーは、ほぼ全ての団員が醜い容姿をしている。

 例に埋もれず、俺もその醜い容姿の1人だ。


 醜い俺を毛嫌いする世の中の女はクズばかりと俺も含め皆が思っていたが、俺達は聖女のような女性と出会ったのだ。

 特別美しくも可愛くもない容姿だが、心根が誰よりも美しい。

 存在自体が国の、いや、世界の宝だと思った。

 女性経験が豊富で無い俺でも分かる。

 あの人は、この世界の女共とは格が違う。

 あの人と一緒にいたい。

 そう思いを寄せるのは私だけではない。

 奥さん大好きな副団長以外の妻子持ちでない団員全員が思っていることだ。


 そんな彼女が倒れたと聞いたときは、俺達のせいかと自分を責めた。

 1人で宿も俺達の世話も切り盛りして、体調を崩すなんて目に見えていたはずなのに!!

 そこで副団長が俺達に彼女の手伝いをしようと提案した。

 もちろん、俺達は一二もなく頷いた。

 彼女の為ならば、彼女に救って貰ったこの命を差し出しても構わないとさえ思っている。

 こうして、細かい作業が苦手な俺は食材(クエスト)担当に買って出たのだが、それからが大変だった。


 俺は剣士タイプで魔法はからっきし。

 自分で怪我を癒すことは出来ない。

 ルノマリア(回復担当)がいてくれるから、薬や回復魔法で何とかなるものの、前衛組はずっと前線で戦わなければいけないため疲労が溜まる。

 そうなれば必然的にペースは遅くなっていった。


 これも全てゼノール(あの男)がどんどん1人で突っ走って行ってしまったせいだった。

 ステータス値は皮肉なことにゼノール(あの男)の方が圧倒的に上。

 獣人という事もあって身体能力が俺ら人族よりも遙かに高かった。

 まぁ、それに期待しすぎていたというのもあるが、それにしても1人で行ってしまうとは思いもよらなかったが。


 帰ってきたゼノール(やつ)は、大量の倒した魔物を持っていた。

 正直、俺達とは比べものにならないと思った。

 だが、同時にどうしてと怒りも湧いてきた。


(どうしてあれだけの力がありながら、1人で進んだ!?大勢で協力すればもっと早くに片づくのに!俺達もたくさんのケガをして、メンバーも魔力を消費することもかなり軽減されたのに!魔力消費には体力も削られるため、下手をすれば命すらも落とすことがあるというのにこの男は!!)


 怪我の手当てを途中にして、俺が文句を言いに行こうと行動する前に、副団長が動いた。

 本日何度目かの説教だった。

 すると、どういうことか。

 ゼノール(あの男)は素直に反省して俺達全員に向かって頭を下げて「すまなかった」と謝罪するではないか。

 顔を見ても本当に申し訳なさそうにしており、耳も尻尾も垂れていた。


(野郎に興味はねぇが、顔を除けば可愛げがあるじゃねぇかよ)


 ルノマリアと同じくらいの醜さだ。

 ずっとソロで行動していたから、パーティーの連携方法が分からなかったのだろう。


(仕方ねぇ。先輩として教えてやるとするか。さっきの憂さ晴らしも兼ねてだが)


 さっきの怒りは何処へやら、心はスッキリとしていて、少しワクワクしながらゼノール(あいつ)の元へ歩き出した。






【団員その②】


 ウキウキとした友を見送り出した俺は仕事に戻った。


 俺、ビューロ・マクレーンは魔法士タイプの冒険者だ。

 貴族の出ではあるが、男爵家の3男で醜さの余り婚約者も出来ないことから冒険者になる許可をもらえた。

 親の慈悲で勘当はされなかったから貴族名はあるが、殆ど何の意味もなしていない。

 平民も同然だった。

 それでも冒険者として普通に暮らしていた。


 そんな俺は今、恋をしている。

 平凡な容姿の優しく丁寧な女の子。

 彼女、スゥは、正しく男の理想そのものだった。

 母や社交界で見た令嬢なんかじゃ比べものにならない。

 というか、比べてはならないような稀有な存在だ。

 そんな彼女に傾倒しているのは私だけじゃない。

 副団長以外の団員はそうだ。

 そして、今、目の前で醜い顔をさらにしかめている私の仕事仲間であるルノマリアもその1人だ。


「何でそんなに機嫌が悪そうなんだ?」

「…」


(やはり答えないか…)


 俺に限らず誰とも話さないルノマリアだが、唯一素で話しているのを見たことがあるのはスゥの前だけだ。

 長年一緒にいる俺でさえ出来ていなかったルノマリアの心を、簡単に開かせることが出来たのはかなり驚きであった。

 さらに、その彼女を巡ってあのA+ランクのゼノールと()り合おうとしたことも顎が外れそうになった。


 そんなルノマリアは、只今絶賛不機嫌であった。

 大方、ゼノールのことだろう。

 まぁ、仕方の無いことか。

 あれだけの迷惑を被られたら誰だって怒りたくはなる。

 加えて俺達以上にスゥに心を傾けているルノマリアは、俺達よりも早くに泊まって知り合いになったというゼノールを目の敵にしている。

 所謂、嫉妬だな。

 ルノマリアは技術は俺より上だが、入団したのは俺の方が先だったので後輩にあたる。

 後輩が少しずつ人間味を帯びてきていることに感動していると、小さな声が俺に向かって発せられた。


「………ない」

「ん?」

「…私は狩れない」


 俺に初めて話しかけてくれた後輩に唖然としつつも、言葉を返していく。


「…狩れないとは?」

「…私は回復に特化してる。あれ程多くの魔物を仕留めるのは難しい」

「あの量はゼノールが獣人だからだ。身体能力に特化してる。あと、比べる対象が悪い。普通でもあれは異常だ」


 どうやらスゥの事だけじゃなく、能力にまで嫉妬しているらしい。


(何だろう。まるで、子どものようだな)


「ルノマリア、種族によって向き不向きがあるのは知っているだろう?ゼノールは身体能力が高いが、お前と違って魔力は少ない。違いを探すよりも、自分の能力ををしっかり生かすことが出来るかどうかを競え。そうすれば、お前はゼノールよりも上だと証明することに繋がるんじゃないか?」


 初めて後輩(ルノマリア)にアドバイスしてドギマギしていたが、予想以上に効果はあったようで、目がキラキラとこちらを向いていた。


「…ありがとう」


 そう言って颯爽と次の怪我人の元へ向かっていった。


(…はぁ、好きな女の子を取られたくはないが、後輩を育てるのも先輩としての役目か。今までが可笑しかっただけで、これで通常に戻ったんだ。ロックも新しく後輩のような奴が出来て嬉しいのだろう。結局、俺もロックと同じということか)


 そんな俺も友と同じように上機嫌でその場を後にした。



 その後、ゼノールが協力したことにより大幅にスピードアップをしたパーティーは昼過ぎには宿に帰還することが出来たのだった。

 宿に持ち帰った魔物の肉は、団員全員が本気になって食べても3日はもつほどの量で、逆に保存場所に困ってしまったのは仕方の無いことだった。


先輩として威厳は見せたいロックと

後輩が心配な母親的存在のビューロでした。

次回もよろしくお願いします。

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