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学び★~3人視点~★

長らくお待たせしました!

今回も楽しんでもらえると良いなと思ってます!

【ルノマリア視点】


 とても不愉快だ。

 自分自身でも驚くほどのドス黒い気持ちが渦巻いていた。


 スゥが気にしていたゼノールという男。

 初めは「これがスゥの言ってた奴か」と、その程度の認識だった。

 ゼノール(そいつ)がスゥを気にしたように話すから、苛立ちが募り初めてしまった。

 抑えながらも、事情を軽く説明してそいつの質問に答える。

 徐々に募る苛立ちを逆撫でするように、さらにゼノール(そいつ)はスゥの居場所を教えろとわめき始めた。

 気づけば苛立ちは最高潮となっていた。


(表情を見る限り、この男も私と同じでスゥに好意を寄せているようだ。でも、だからこそ、ゼノール(こいつ)をスゥの近くに置いておきたくない)


 "独占欲"


 この言葉が今の私を支配していた。

 そんなこと無理だと分かっているのに。

 この世界は女性が少ない。

 さらに、美しい者がとりわけ優遇される。

 だから、醜い者の結婚率が地についているのが現状だ。

 私の母のようになる女性が多い中、スゥは身分や種族、見た目すら問わず、分け隔て無く優しい。

 そんなスゥは結婚が出来る18歳を向かえる時には、確実に多くの夫を娶ることになるだろう。

 もしかしたら、既に夫となる恋人達が居るかもしれない。

 私が入る余地すら無いかもしれない。

 私のような醜い者から好意を寄せられても、迷惑かもしれない。

 でも、今のスゥと過ごしている優しい時間は本物だ。

 私は、この2人だけの時間がこの上なく好きだ。


 それを邪魔するゼノール(こいつ)は嫌いだ。

 加えて、私のように支援系スキルを一切持たない獣人が寝ているスゥを看病すると言った。

 さらに、日が短いからという理由で任せられないと言う。


(この男、スゥの症状を悪化させて殺す気か?優しいスゥが気をつかうのは目に見えているだろう。そんなことも分からない奴にこそ、スゥやこの宿を任せる訳にはいかない)


 お互いに殺意をぶつけ、攻撃しようとした一瞬の時、副団長による強烈な制裁が下され止められてしまった。

 私はその時初めて副団長の制裁の意味を知る。


「てめぇらはバカか!!?ここで喧嘩してみろ!あの魔力と殺気でやり合えば、この宿を傷つけ崩壊させてしまっていたぞ!?宿だけじゃない!!俺達は逃げて軽傷は負ってもそれだけだ。だが、スゥはどうなっていた?体調の悪いスゥは逃げ出すことも出来ず重症だ!!下手すれば、死んでいるぞ!!!それをわかってんのか!!?クソ共が!!」


 それを聞いて愕然とした。

 そうだ。

 私の高密度高火力の魔力

 あの男の凄まじい殺気から滲み出た戦闘力

 そんなものがぶつかればこの宿も、スゥも、失っていたかもしれない。

 感情のままに行動した結果、スゥの命を危険にさらした。

 その事実が胸に深々と刺さっていた。





【タンザ視点】


 はぁ、疲れる。

 2人とも周りが見えていないじゃないか。

 こんなことでは先が思いやられる…。


 朝、起きて食堂に行くとルノマリアが珍しく話しかけてきた。

 内容は、昨日スゥが魔力欠乏症で倒れてしまったから、代理をすると言うものだった。

 まず、こいつが話すこともそうだが、スゥを大事にしたいという気持ちが芽生えていたことにも驚いた。

 誰とも関わりを持たず、生きる屍のようだった。

 そんなやつが自ら意思を持って行動している。

 ()()()が拾ってきたときはどうしようかと思ったが、生き生きとしているルノマリアを見て感動に浸っていた。

 のだが………――。


 目の前の2人に私は怒鳴りつけていた。

 後先も考えず喧嘩をしようとしたからだ。

 私が思うに、ルノマリアは本気で彼女を愛しているのだろう。ゼノールも本気ではあるが、自分の気持ちには気づいてないようだった。

 どちらにせよ、自分のことばかり考えているようでは彼女に迷惑をかけるだろう。


「彼女のために行動するというのはとても良いことだし、私達も大いに賛成だ。だがな、彼女のためと言って自分たちばかりになっているようでは返って迷惑を被る事になる。わかったか?」

「「…」」

「返事は?」

「ああ」「分かった」


 返事は返ってきたが、顔が如何にも頭では理解しているが感情面で納得できないといった顔で、まだお互いを横目で睨み合う。


「なら、今回のペナルティとして、1つ、お前ら2人は今日一日一緒に行動して手伝うこと、2つ、ギルド全員でやる事を分担して手伝うからその補佐をして回ること、良いな?」

「「嫌だ」」


 まるで子どものように我が儘を言う2人にだんだんと私まで苛立ちが募る。


「い・い・よ・な??」


 ニコッ


「「…はい」」


 顔から色が無くなっていく2人は放置して私は分担を決めていった。


 料理担当 ~10人

 洗濯・掃除担当 ~10人

 食材(クエスト)担当 20人~


 とりあえずは、こんなもんか。

 食材は私達が大半を消費してしまったから、補充しておかなければ食べるものはないだろう。

 洗濯・掃除、料理は数が多いから少しでもスゥに恩返しに休憩して貰うためだ。


「では、各自得意な分野に入れ。私は指揮を執るため食材担当に入る」


 私を皮切りにそれぞれが移動していく。

 最後に、残った2人にも指示をだした。


「お前らは最初に食材担当を手伝え。その後、洗濯・掃除担当に行って、最後に食材担当だ。異論は認めない。では、各自解散!」


 こうして長い戦いの1日が幕を上げた。





【ゼノール視点】


 はぁ…。

 何で俺はルノマリア(こいつ)と1日一緒に行動することになったのか。

 まぁ、元はと言えば俺達が悪いのだが…。


「じゃあ、早速行動を開始する。食材担当出発するぞ」


 昨日話しかけてきたタンザという男は、そう言って俺達を連れて冒険者ギルドに向かった。


 俺は、子供の頃から生きていくためのお金を稼ぐために、大小様々なクエストをこなしていたため今ではソロでA+ランク。

 別に目指していたわけではないが最高ランクSにあと一歩というところまで来てしまった俺にとってBランクパーティーの補助など、容易い。

 たくさん魔物を狩ればいいんだろ。

 さっさと終わらせてスゥに会いに行こう。


 パーティー推奨のクエストを受注して、森で魔物化した熊や魚、鳥などを狩りに行く。

 魔物化した生き物は凶暴性や攻撃力が上がるが、その分栄養価が高い。

 これをスゥに食べさせてあげれたら、体調も改善するかもしれない。

 ソロの俺は1人でどんどん先に進み獲物を仕留めていった。

 団員達は置き去り状態になっていたが気にも留めなかった。


 まずは、これぐらいで良いだろう。

 自分で持ちきれなくなってパーティーに戻るとまた般若の顔をしたタンザと眉をひそめるルノマリア(あいつ)がいた。


「お~ま~え~は~!!何をしてるんだ!!」


 ドスドスと足音が聞こえそうな勢いで詰め寄ってきた。


「何をって、狩っていただけだが?」

「何故1人で行った?」

「その方が速いからだ」

「今、お前は、ソロじゃない。パーティーの1人だ。全体を考えなくてはならない。見てみろ」


 タンザが指さす方には団員達がいた。

 団員達は、何処か疲弊感溢れていて、怪我人もいた。

 だが、それは普通のことだ。

 これがどうしたというのか俺には分からなかった。


「…見ただけじゃ分からないか。なら、鑑定してみろ」


 俺は言われた通り鑑定を発動させた。

 すると、全員魔力が明らかに少なかった。

 よくよく見れば、殆どが魔法士タイプで剣や身体能力で戦う者は極少数だ。

 怪我人だったのは剣士タイプの者ばかり。

 ここでようやく、俺は自分が何をしてしまったのか分かってしまった。


 この森は魔法攻撃が効く魔物もいるが、効きにくい魔物もいる。

 しかも、比較的魔法攻撃が効きにくい魔物が多いこの森でのクエストでは剣士タイプがパーティーの要とされる。

 そんな状況の中、1人でも抜けてしまえばパーティーの連携にも問題が生じるのは当たり前だった。

 剣士タイプの団員を見ても、俺よりはステータス値が低い。


(俺のせいか)


 そして、俺の尻拭いをいていたのは他の誰でも無いルノマリア(あいつ)だった。

 何がお前には任せられないだ。

 任せられないのは俺の方じゃないか。

 この時初めて、ルノマリア(あいつ)に感謝しつつも、劣等感と悔しさを感じた。


これからも、どんどん投稿していきますのでよろしくお願いします。

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