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前世~中編~

第一話に続き第二話も楽しんでくれると幸いです。前世編は次でラストです。

 施設の子供たちの中で見た目からして最も健康状態が悪かった私はすぐさま検査をさせられた。

 まぁ、昔から検査は何度も受けているため慣れっこだったが母が壊れてからもう何年も病院は来ていなかった。

 1日かけて検査を終えた私はへとへとになり、すぐにあてがわれた病室に行った。

 ガラっと扉を開けると2人部屋で他にも人がいた事に驚いた。

 さらに遅い時間だったため、とても焦った。寝ている子を起こしてしまったのではないかと。

 恐る恐る息を殺してそーっと隣のベッドを見るとそこには私と同じ10歳くらいの女の子がいた。

 ふわふわとした肩の高さまである茶髪の髪は艶があり、何より肌が私と違って白くすべすべであった。

 服は淡いオレンジのワンピースを着ていてとても可愛らしかった。

 私は彼女を見て嫉妬した。

 環境が違うだけでこんなにも姿形が変わる物なのかと。

 どうして私はこんなにも不幸ばかりなのか!

 なぜ彼女は今こうして幸せそうに眠れているのか!!

 嫉妬からどんどん怒りがフツフツとこみ上げてくる。

 そしてその怒りを自分で鎮火させ自虐的に笑う。

 どうせ聞いたところで分からないし、分かりたくもない。

 今、誰に何を言い何を言われようとも過去は変わらず現状もなにも変わらないのだからと。

 私は私でしかないのだから。


 次の日、目を開けると2つの大きなクリクリとした丸い瞳がじーっと私を見ていた。


「…何?」

「あなた昨日ここに来た子?」

 首をコテンと傾げながら私に問う。

「そうよ」

「じゃあ今日からここで寝るの?」

「そうよ」

「食べるのも?」

「そうよ」

「歯磨きも?」

「…そうよ」

「じゃあ今日から私の家族だね~」


 …どうしてこうなるのだろうか。

 私は彼女を珍獣を見る目で見ていたが、彼女はそれでも気づかないで話を進める。

 そもそも家族なんてものを私は信用していない。

 それは、自分の親を見ればよくわかることだ。

 ただその親となった人の血が流れているだけ。

 それだけの存在だ。

 一時期は愛されようと努力した。

 家事を全部引き受け、良い子だと思われるように大人しくしていた。

 まぁ、それでもそんな努力意味は無かったのだけれどね。

 そんなことを思いながら彼女の話に耳を傾ける。


「私はね~『ちぃって呼ぶ』」


 彼女の言葉に私が重ねて言ってみた。

 彼女を見てパッと思いついたあだ名だった。

 覚えやすい珍獣の頭文字を取っただけだが、私にとっては分かりやすかった。


「ちぃ…!可愛い!いいね!素敵なお名前ありがとう!じゃあ、あなたは…そーちゃんね!」

「…理由は?」

「だって、私が質問したら絶対『そうね』って言うんだもん!だから、そーちゃん!」


 …結論、悲しいことに私たちは考え方が似たもの同士であるらしい。


 その日から毎日鬱陶しいくらい私に引っ付いてきた。

 ちぃはテトテトと後ろから何度も「そーちゃん!どこいくの?」と着いてくる。

 基本的、私は無視している。面倒くさいのだ。

 でも、どれだけ無視しても突き放した行動を取っても着いてくる。

 それが何日も続けばさすがの私も心が痛む。

 その姿はまるで…昔の私のようだったから。

 だから私は聞いてみた。


「…何でそんなに私に着いてくるの、ちぃなら他の友達くらいいるでしょ?私じゃなくても良いじゃない」


 するとちぃは満面に笑みで


「そーちゃんはね、他の子と違ってちゃんと私を見て待ってくれるの!お話ししたら聞いてくれるし、ずっと側にいてくれるの!だから私はそーちゃんが大~好きなの!」


 それを聞いて私は唖然とした。

 もしかしてちぃを昔の私と重ねて見てしまったため、いつの間にかそんな行動を取ってしまっていたのかと。

 そして、あんなに酷い態度だったのに、ちぃと違ってお世辞にも可愛いとは言えない姿、それでも大好きだと言ってくれた。

 それは私がかつても、そして…今もなお欲していた愛情だった。

 私という存在を見て欲しかった。誰かや何かをじゃなく私を。

 それが今やっと、認められた気がした。

 気づけば涙がポタポタと溢れて止まらなかった。

 ちぃは「わわっ、ど、どうしたの!?そーちゃん、悲しいことあったの??」とぎゅうぎゅう抱きしめてくる。

 それさえも私の涙腺を崩壊させるには十分すぎるものだった。

 さらに泣く私を見てなぜかちぃも泣くという意味の分からない状態に、看護士さん達もオロオロするばかりである。

 泣きながらも私はちぃに伝えたかった、この気持ちを。

 きっと、こんなこと言われても分からないだろうけどそれでも!


「ちぃ」

「ヒック…なぁにそーちゃん…ヒック」

「…ごめんね、ありがとう、私、…ちぃと友達になりたい」


 あんな態度取った私がいうのは間違ってると思う。

 それでも、私を見てくれたちぃには、何度断られても、裏切られても、側にいたいと思ってしまったから、私は初めて勇気を振り絞って言ったのだった。


「…………。」


 返事が無くって胸の奥がぎゅっとしたけど、それでも私は頑張ると決めたのだ!何度だって!もう一度見てもらえるように!


「ちぃ、あの『うぇーーーーーーん!!』え?」


 今度はちぃが、号泣していた。

 訳が分からなかった。今度は私がオロオロするばかりである。


「どうしたの?よしよし…ちぃ?」


 頭を撫でると今度は大人しくなった。大丈夫かなぁ、ちぃ。


「そーちゃん…私ね、会ったときから友達…ううん、家族だとおもってたよ?それはね、今でも変わらないよ?これからずーっとだよ?私はね、そーちゃんが大好きなんだから」


 …うん、そうだったね、ちぃは最初から言ってくれてたね。

 そしてあの日とそれ以上の笑顔でまた言ってくれるんだね。


「私の家族だね」


 あの日返してなかった返事を遅くなったけど今返すよ。


「うん、私たちは友達以上に仲の良い家族だね」


 ちぃ、私は幸せな気持ちで溢れてるよ。

 ありがとう。


少しずつ感情が出てき始めましたね~。

何気、あざとかわいいちぃちゃん好きです笑

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