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絶望★~ルノマリア視点~★

ルノマリアの過去編です。


 私の母様は妖精族の中でもとても美しい人だった。

 歩けば男性達は必ず振り向き、口を開けて惚ける。

 そして「妻になってくれ」と毎日のように美しい男性達から言われるほど行く手数多であった。

 そんな母様は貴族だった。

 社交界デビューした当初は、その美貌に美しい次期王太子候補達3人全員から婚約の申し出が出て、母様はその3人からのを受けた。

 誰が妖精王となっても、自分は女王になれるのだから当たり前だ。

 そして、後の7人も自分のメリットになる美しい男性達からの申し出は全て受けた。

 私はその中の10番目の夫である、父様との子供だ。

 母様譲りの金髪、父様譲りの薄青の瞳。

 しかし、顔がとても醜かった。

 このことに母様は大激怒した。


「私の人生唯一の汚点だわ!ステータスにも成りやしない!あなたとはもう離婚よ!!」


 そのことに父様は必死に説得した。


「この子は醜いがそれ以上に勉強をして、きっと君のステータスとなってくれるだろう。私達を切り離すのは時期尚早ではないかい!?」


 それを聞いた母様は、10年以内に結果が出なければ離婚すると言い、父様を別邸に追いやった。

 元々父様は夫の座にはついたが、母様の寵愛を貰うことは出来ていなかった。

 だから、最初に自分との間に子供が出来たので、これで少しは母様の心を掴めると思っていた。

 そう思っていた矢先のこれだ。

 父様は母様との関係を修復するため、私にとにかく勉強させた。


「お前は賢くなくてはならない」

「誰よりも努力しなければ生きる価値などない」

「お前は父様と母様の仲を引き裂くつもりか?」


 とひたすら私に言った。

 私も父様が引き取ってくれているから生きていられるのだから、頑張らなければと思い、手に血豆が出来るほど勉強した。

 だが、私も子供だった。

 母様や父様に褒められたかった。

 認めて欲しかった。

 一緒に暮らしたかった。

 そんな思いから休憩時間になると1人森の奥で泣いていた。

 そんなある日、いつものように泣いていると私に話しかけてきた少年がいた。


「お前泣き虫だな、仕方ないから俺が友達になってやるよ」


 その日から私達は友達となった。

 初めて見た家族や使用人以外の人。

 私を見ても逃げたり、吐いたり、目をそらしたりしない人。

 友達だと言ってくれた人。

 そんな人今までいなかった。

 とても嬉しかった。

 だから、悩み事や勉強のこと何でも話していた。

 このとき私はまだ7歳。

 父様が母様と約束を果たすには、あと3年の猶予しか残されていない。

 必死に勉強しなければいけないとは分かっていたが、誘惑には抗えなかった。

 休憩時間の度に名も知らない少年と話した。

 私が9歳になるまで。


 少年といつものように話していると、最近、出来るようになったことを1番に教えた。

 植物魔法についてだ。

 妖精族の限られた人しか使えない特別な魔法だ。

 母様や父様ですら使えないスキル。

 これで勉強から解放されて、父様や母様にも認めてもらえると思うと嬉しくて話したのだ。

 すると少年は


「植物魔法は確かに貴重だが、それはお前だけが使っている訳じゃねぇ。少なからず他の人も使えるスキルだ。お前の父さんに言っても変わんねーだろ」


 と言った。

 私はその言葉に落胆した。

 植物魔法があってもこの状況からは逃れられないのだと。

 だが、少年はそれよりも魅力的な提案を私に言った。


「いつまで自分が居られるか分からない奴の所に居るより、自分で生きていけるようになった方が良いんじゃねーの?俺が手助けしてやるよ」と。


 私はその提案に乗った。

 父様や母様には罪悪感が残ったが、私はどうしても自由に生きたかったのだ。

 そして、少年と作戦を立てた。

 明日に作戦決行という前日の昼。

 少年は最後だからとプレゼントをくれた。

 綺麗な()を拾ったからと。

 私の為の物は初めて貰った。

 これを私の宝物にしようと決めた。

 最後に少年は「じゃあな」といつものように去って行った。

 そして、次の日の夜、私は見つからないようルートを進んでいく。

 荷物と言えるものは食料やお金だけ。

 敷地を出て少年が安全だと教えてくれた場所へ向かった。


(見えた!あの小屋だ!)


 少年が教えてくれた通りの木が陰を作り、夜の闇と相まって見えづらい。

 周りには人気も感じられず、屋敷からも遠い。

 見つけた瞬間、その小屋に入った。

 これで一晩は凌げると思い小さなランプを灯した。

 暫くして、扉が勢いよく開かれ男達が私を押さえつけた。


「うわー、こいつ予想以上にブスですよー、こんな奴、本当に居るんすかー?」

「グダグダ言わずやれ、いるんだよ、それに命令だからな」

「へいー」


 何が起こったのか分からないが、私を捕らえようとしているらしい。


「…父様の命令か?」

「答える義理はねーよ、だがまぁ、俺は優しいからなぁ?特別に答えてやるよ。俺たちに命令したのは、女王陛下さ。汚ぇお前は要らねんだとよ」


 あぁ、私がどれ程勉強しても最初から無駄だったという訳か。

 何のために私が何年も苦しい思いをしながら勉強したというのか。

 乾いた笑いしか出なかったが、元より期待はしていなかったから大したことは無かった。

 次の声を聞くまでは。


「お前も良い仕事してくれたなぁ、後で金はたっぷりやるよ」

「あざっす!」


 私のよく知る声が聞こえた。

 ふと地面に押さえつけられながらも顔を上に上げると

 そこには少年がいた。

 何故と声が震えながら問う。


「ああ?初めっから俺は必要なさそうな奴を売ろうと探してたんだよ、じゃなきゃ誰がお前の友達なんかになりたがるんだよ、すげー気持ち悪ーのに。植物魔法が使えてなかったらもっと早くに売ってたぞ」


 少年は私がよく知っている嫌悪感に満ちた目で見ていた。

 それを見てやっと理解した。

 母様に命令され、彼は仕事で私に近づき、私の情報を彼らに売って奴隷として売るつもりなのだと。

 絶望だった。

 父様が母様の為にと私に押しつけた物は全て無駄。

 唯一の友達だと思っていた少年は、奴隷商に私を売った。

 なら、私は生きる意味など無いでは無いのか?

 もう誰も信じられなかった。

 結局、人は顔で判断するのだと改めてよくわかった。


 それからは、何も抵抗しなかった。

 何をしても無駄で、信頼できる人もこの顔である限り誰1人出来ないのだと思ったからだ。

 奴らは怪訝そうに不気味そうに私を見ていたが、何もしないのならと放置した。

 ただ命令してくるがままに従った。

 そして、奴隷商に売られた。

 だが、余りにも醜いこの顔で、植物魔法が使えるとしてもいらないとされ、いつも売れ残った。

 死にたくって与えられる食料を口にしなかった。

 お陰で、どんどん醜くなり最終的には奴隷商にすら捨てられた。

 道端に捨てられた私は、その場を動かなかった。

 夜には魔物が出てきて、私を殺してくれると思ったからだ。

 しかし、そんな私の前に私と同じくらい醜い青年が現れ、助けられてしまった。

 その青年は私に優しくしてくれたが、信じられなかった。

 言葉にするのも考えるのも面倒になっていた。

 そんな私を見かねて彼は友達の所に案内すると言って、私はその友達に会わされた。


「初めまして。私はタンザ。冒険者をやっていて、今は旅の途中なんだ。…君は…珍しいスキルを持っているね。良ければ私のパーティーギルドに入らないか?」


 タンザと名乗った男性は、私を冒険者へ誘った。

 他に行く当ても無かったので承諾した。



 これが私の運命を変える選択だった。


ルノマリアは母親が女王なので、一応正真正銘の第一王子様です。

しかし、家、つまり王家から嫌われているので産まれてすぐに廃嫡になりました。

加えて、貴族籍には入れてもらえなかったので平民扱いです。


次回もお楽しみください。

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