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信じること

今回も長くなっちゃいましたね。

ルノマリアとの絡みオンリーの回になりました。

ぜひお楽しみください!

 

「どうか私を信じてくれませんか?」


 私はルノマリア様を見て返事を待つ。

 少しして、今まで無言を貫いていたルノマリア様は呆れたように息を吐き出した。

 やはりダメなのだろうか。

 はっきり言って、それは無理もないことだ。

 出会ったばかりの人に「信じろ」と言われれば私だって疑う。

 それでも私は嫌だと言われてもここから動く気は無い。

 そんな気持ちを胸に待っていると


「…石」


 風に掻き消えてしまいそうなほど、小さくか細く弱々しい声を出して、ルノマリア様は教えてくれた。


「石ですか…?」

「…小さい袋に入れてるの」


 そう言いながら、片手で親指と人差し指をくっつけて円形にして、大きさを教えてくれた。


「何処でなくしたのか分かりますか?」


 ルノマリア様は首を横に振りながら答える。


「…さっき…気づいた。…ラウンジと…ここは…探したんだ…」


 ゆっくりとポツリポツリと教えてくれる。


「分かりました、私も探してみます。私は探しているので、取りあえず、ルノマリア様は先にお風呂に入って来て下さい。まだ、入ってないんでしょう?」


 ルノマリア様はまだ、ダガーベルトを腰に付けていた。

 お風呂から出ていた他の団員達は、腰から外して、近くに置いていたのを見たのだ。

 しかし、またルノマリア様は首を横に振る。

 それを見た私はさらに言った。


「ルノマリア様、これ以上探すのでしたら体が冷えて明日に支障をきたします。この条件が飲めないのでしたら私は、ルノマリア様をお止めしないといけなくなります」


 そう、私がルノマリア様に気づいてから、1時間以上経っている。

 もう日付を跨ぎ、皆寝ている時間だったのだ。


「もし、お風呂に入って体を温めて、しっかりと髪を乾かすのでしたらこれ以上お止めはしません。むしろ、お手伝いしますから」


 そう説明すると渋々ではあるものの、ゆっくり頷く。


「私のわがままを聞いて下さってありがとうございます」


 本当はこのままずっと探したかっただろう。

 なりふり構わず探すほど大切な物を、他人に任せるのは嫌だっただろう。

 それでも、優しいルノマリア様は頷いてくれた。

 なら、少しでもその優しさに報いるために探そう。

 そんな思いを抱きながら、こちらを見ながら歩くルノマリア様を見送った。


 正直、見つけることは簡単なのだ。

 ルノマリア様がお風呂に入っている間に、私は全知全能で石を探せばいいのだから。

 問題があるとすれば、魔力があまり残ってないことだ。

 今日だけで、創造魔法から食べ物や道具、水や風を作り、治癒や転移を連発して、最後に調子に乗ってここに泊まっている人達全員のステータスを鑑定したのだ。

 いくら私が魔力12,000でずば抜けて高いとしても、スキルも魔力消費が大きいものから小さいものまで1日で何回も使用していると限界が来るのは当然のことだった。

 スキルは1~10くらいの魔力が減るのが普通で、20以上必要のスキルともなればかなりの魔力が無ければ得ることもない。

 普段の私からすると全知全能を発動するための魔力は大きくは無い。

 他の人からすると大きいものかもしれないが…。

 全知全能を発動するための魔力は500

 私の今の魔力が600

 かなりギリギリである。

 本来、その人の魔力の1/50まで魔力が無くなると意識を失う恐れがあるので下手をすれば、倒れるだろうが…私はルノマリア様の優しさを無下にするのではなく、報いたかった。

 覚悟を決めて、全知全能を使う。

 魔力が持って行かれ、少しフラついてしまいベランダの手すりに手を着いてしまうが、倒れはしなかった。

 それに、探して居るであろう石の場所も分かった。


(良かったぁ、これで取りに行ける!)


 そして私は、壁に手をつきながら石のある場所に向かった。


(あった!!)


 小さな袋から石が入っていることを確認する。

 宝石ほど輝いている訳ではないが、石にしては少し綺麗な程度の普通の石。

 それでも、必死になってこれを探すルノマリア様にとってはどんな物よりも大切な物だったのだろう。

 そんな石を見つけた場所は、食堂だった。

 あの時、私が隠蔽を発動して皆のステータスを見ていたとき、ルノマリア様は食べ終わって席を立ちポケットから落としてしまっていた。

 しかも、運悪く私が隠蔽を発動して気配を消していた近くに落としてしまったので落としてしまったことに他の誰も気がつかなかったのだ。


(私のせいよね…私、長いこと食堂でそのままでいたし)


 見つからないのも当然である。


(まぁ、見つけたから早くルノマリア様に渡さないと)


 あとは早くこの石をルノマリア様に返して、早く寝るだけだ。

 私の限界は近づいていた。

 早く部屋に行かないと、気を失って倒れてしまいそうなほどで、今歩いているのもやっとの状況だった。

 だが、私は何としてでも渡すのだと自分を叱咤して、ラウンジまで歩いた。


 ラウンジに向かっているとルノマリア様と鉢合わせた。

 約束通り、冷めないように頭をしっかり乾かし、カーディガンを羽織っている。

 会えたことが嬉しくてつい小走りになってしまう。


「ルノマリア様!石を見つけましたよ!」


 私は石を片手であげながら、見えるようにルノマリア様に報告した。


「きゃっ!」


 フラフラの足を無理に走らせたので、何もないところで躓いた。


(あ、ヤバい。当たる)


 そう思っていた。

 しかし、早々とルノマリア様が私を抱き留めたのだ。

 お風呂上がりの良い匂い、柔らかいカーディガンから眠気に誘われるが、私は石をルノマリア様に見せる。


「ルノマリア様!食堂に落ちてましたよ!これでもう大丈夫ですね!」


 これであんな瞳でいることは無くなると思い、笑顔で石をルノマリア様の手の中に返してあげた。

 すると、ルノマリア様は見た目に反した強い力で私をぎゅうっと抱きしめられた。

 慌てていると、首の所で蹲っているルノマリア様は顔から涙を流しながら嗚咽を堪えつつ


「……本当にありがとう…スゥ」


 と言ってくれた。

 初めて名前を呼ばれて嬉しくなる。


「ふふっ…どういたしまして」


 暫くの間、抱きしめられたままでいた。

 だが、私の限界は超えかけていたので硬い胸に手を当てて体を離した。

 とても名残惜しそうに、でも花が咲いたように笑うルノマリア様はとても美しかった。


「それでは、明日も早いので今日はもう寝ましょう。それではルノマリア様、おやすみなさい」


 お辞儀をして返事も待たずに歩き出した。

 後ろを振り返らずに、部屋に向かう。

 だが、その途中で私は意識を手放して倒れてしまった。

 とうとう限界を超えてしまったのだった。



 フワフワとした意識の中、少しずつ視界がはっきりとしていく。

 頭はぼーっとして、しっかり考えることは出来ない。

 だが、そんな私でも分かることがあった。

 頭が回らずただ目の前の事実だけを素直に受け止めるしかなかった。









 私はルノマリア様に()()をされていた。


次回から2作続けてのルノマリア視点の予定です!

いつでも感想や誤字脱字報告、ワクワクしながら待ってます笑

書いて下さった方も本当にありがとうございます!頑張ろうって力になってます!

いつも同じ言葉ではありますが、次もよろしくお願いします!

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