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帰還

はい、お待たせしました。

ゼノールの登場です!

 

 ゼノール様が帰ってきた。


 ザワザワと団員の皆さんがゼノール様を見て話し始める。


「あいつだよな」

「すげー、ここに泊まってるんだな」

「俺、ちゃんとあいつ見たの初めてだわ」


 どうやらゼノール様はとても有名人らしい。

 私は扉を開けて唖然として立ち止まっている彼の元へ赴いた。


「お帰りなさいませ、ゼノール様」

「…あぁ、ただいま。…人数がかなり増えたな」

「えぇ、ケガ人が多くいらっしゃるので宿を提供したんですよ」


 ゼノール様と話していると横からタンザさんがやってきた。


「どうも、こんばんは、初めまして。私はタンザ。訳あって、この宿で団員達全員お世話になることになったんだ。まさか、君に会えるとは思っていなかったよ」


 そう柔やかに話すタンザさんを横目にゼノール様は俯きがちに答える。


「あぁ」


 ただそれだけだった。

 周りからすれば素っ気なく無愛想だと思わるだろう。

 でも、私は見えていた。

 俯きがちに伏せる瞳は、私と初めて会ったときと同じく、戸惑うように揺れていた。

 きっと善意ある人と関わることが少なかったから接し方が分からないのだろう。

 そう考えた私は全員に提案した。


「皆さん、お腹が空いていませんか?今から食堂で料理を出しますから、一緒に食べましょう」


 一緒に食事を囲むことで仲良くなろう作戦だった。

 しかし、そう言うとしんっ…と静まり返った。

 が、直ぐさま「「「うぉぉぉおおおお!!」」」という雄叫びが響き体がビクッとなる。

 そして、すぐに私は比較的大柄なイケメン達に囲まれた。


「あんたが作ってくれるのか!?」

「ありがとう!君は聖女だ!!!」

「世の中にこんな素晴らしい女性がいるとは」

「俺と結婚を前提に付き合って下さい!」

「バカ、先に言うんじゃねーよ!」

「俺!生きてて良かったっ…うぅっ!!」


 などなど色んな人から声をかけられる。

 さすがの私もこんなに大勢の人が一気に押し寄せてくるとは思わず慌てていると、いきなり後ろに手を引かれよろけてそのまま抱き留められてしまう。

 慌てて顔を上げて見ると、私は硬直してしまった。

 何故なら、助けてくれたのは、さっき部屋に戻ったはずのルノマリア様だったのだ。


(うわっ…私、こんなイケメンに抱きしめられてる!!?しかも、めっちゃ美人さんだよ~っ!!)


 しかも、中性的な美人顔にも関わらず触っただけでも筋肉があることが分かる胸筋と、しっかりと筋の見える腕に板挟みにされた私はもう固まるしかなかった。

 私が理性を手放す寸前でタンザさんが声を張り上げる。


「ゴラァァ、馬鹿共!!!女性に!!しかも、助けてくれたのは恩人に!!大柄の野郎が大量に群がって怖がらしてんじゃねーぞぉぉお!!!」


 ……えーと、どちら様でしょうか?

 タンザさんって二重人格だったのだろうか。

 普段の穏やかな表情からは想像もつかないほど般若の顔をしたタンザさんを見た私は、割と本気で考えた。

 そんな私を放って、タンザさんが団員達にお説教を始めていた。

 大の大人達が顔を青ざめさせ、正座をして話しを聞く姿はある意味壮観だったが、まだ私は抱きしめられたままだった。

 気になってルノマリア様の方を見ると、何も言わずにじっと私を心配そうな眼差しで見つめていた。

 まるで「大丈夫だった?」と言っているかのように感じたので


「大丈夫ですよ、ルノマリア様が助けて下さったので。ありがとうございます」


 と返して腕の中から抜け出して見た、ルノマリア様の瞳は穏やかに私の姿を写していた。

 そして、私を抱き留めた片方の手の反対の手に持っていた、一輪の花を渡してくれた。


「私にくれるんですか?」


 そう聞くと首を縦に振った。

 もしかして、ルノマリア様はこのために部屋に戻っていったのだろうか。


(イケメンかっ!!いや、イケメンだけど!!)


 可愛すぎるプレゼントに嬉しくなる。


「ありがとうございます、ルノマリア様。大切に飾らせて貰いますね」


 そして、またルノマリア様は少し微笑んで仲間たちの所へ向かっていった。


 花は受付カウンターに置くことにした。

 まだまだタンザさんのお説教は続きそうだったので、キッチンに向かう。

 料理を作るためだ。

 幸い、彼らが来る前に食材は出して置いたのでそこは問題は無い。

 問題があるとすれば、どうやって大量のご飯を作るかということだけだ。

 魔法で作ろうとも考えたのだが、今回魔力が厳しかったので作らざるを得なくなったのだ。

 悩んでいるとゼノール様がやって来た。


「…何か手伝うことはあるか?」

「ちょうど良かった!1人であの人数を作るには骨が折れるかなって思ってた所だったんです!是非お願いします!ゼノール様!」


 まさに救世主だった。

 キラキラとゼノール様が輝いて見えた。

 前のめりになって返事すると「あぁ」と気圧されつつも、また尻尾を振りながら手伝ってくれた。

 相変わらず安定の可愛さである。


 今回作るのは皆大好きカレーにした。

 これなら大勢に配れるはず!

 そうして、野菜をゼノール様と切っていく。

 手慣れているようで次々に野菜が切り終わっていった。

 後は野菜、水、スパイスを入れて煮込むだけとなった。


「ふぅ、ありがとうございました。ゼノール様」

「いや、簡単な作業だったからな…それより…」


 と何かを言いかけて止まった。

 聞きたいことがありますと言わんばかりに、ピクピクとする耳。迷っているのか、下がっている尻尾。チラチラと私を見るグレーの瞳。


(本当に何なんだろ、この人。可愛すぎやしませんかね?襲いたくなる、え、襲えってことなのかな)


 危ない思考回路に走りかけるが、ゼノール様の覚悟を決める方が早かった。


「スゥに花をあげてた奴誰だ?」

「ん?…あぁ!ルノマリア様ですね。"大地の剣"の回復担当らしいです」

「ふぅん…」

「基本、無口無表情で冷たい印象ではありますが優しい人ですよ」

「…そうか」


 それからゼノール様は少し耳と尻尾が垂らし不機嫌になったようで、会話が止まる。

(え、私何か気に障ること言ったかな?)

 つい先程まで自分の話していたことを思いだしていると


「俺は?」

「…え?」

「…俺はどう思う?」


 突然そんなことを聞かれ正直に答える。


「ゼノール様もとっても優しいので、私は素敵だと思いますよ?」

「…そうか」


 さっきと同じ返事ではあったが、カレーが出来上がるまでずっと表情は明るく、上機嫌に耳も尻尾も元気よく動いていた。


どうしましょ、ルノマリアとゼノール可愛すぎてやばいです。

自分で書いといてなんですが、この回めっちゃ好きです。笑

次回、2人のちょっとした新情報解禁します。

お楽しみに。

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