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感謝

ちょっといつもより長くなっちゃいました。

楽しんでくれると良いなと思います!

 タンザさんと私だけが最後に残ったので話をしながら歩く。


「タンザさん、お疲れ様でした。協力していただき、ありがとうございます」

「いやいや、そっくりそのまま言葉を返させて貰いますよ。あなたが居なければ、仲間たちはどうなっていたか。あなたと()()()()()には本当に感謝しておりますよ」


 話しをしている中でふと私の知らない言葉が出てきた。

 大先生に()()()()()について教えてもらうと

 その森によって生き物は様々らしいが〔迷い人を導くとされている森の生き物〕だと出てくる。

 へぇ、生き物なんだ。

 異世界だから人とか幽霊とか妖精とかだと考えていた。


「タンザさんを()()()()()が私の所まで導いてくれたんですね。ちなみに、ここの()()()()()ってどんな生き物だったんですか?」


 尋ねてみると驚いたように逆に私が質問される。


「え、会ったことないんですか!?…てっきり私は、繋がりが深い人なんだと思っていました」


 恥ずかしそうに桃色の瞳を細めて、苦笑された。


「私、そんなスゴい人じゃないですよ?ただの宿屋のオーナーですから」


 と面白くって笑いながら返す。

 すると、タンザさんはとても真面目な様子で聞いてきた。


「…その事なんですけど聞いても良いですか?…薬やその指輪について…勿論、他の人には一切他言無用にすると約束しましょう…どうでしょうか?」


 私はその言葉に少し固まった。

「やっぱり」とそう思った。

 まぁ、気になるよね。

 予想はしていた。

 私だって、同じ立場なら聞く。

 そして、この人達は本当の事を話してもちゃんと守秘義務として約束を守ってくれると思う。

 …だが、本当のことは誰にも教えるわけにはいかない。

 それがタンザさんのようにどんなに善良な人だったとしてもだ。

 罪悪感はかなりあったが、薬と指輪について説明する。


「…薬は、私の家が先祖代々受け継いでいる物です。効果は非常に高く、どんな症状でも治す事が出来ます。…しかし、作るのにはかなりの年月が必要で量産が出来ず、私の家系しか作れることは出来ません。…昔、これを世に出そうとした方がいたようですが、それを巡り多くの争いが起こったようです。それ以来、門外不出となりました。指輪も似たような物ですね。だからこの指輪は、今は私しか使うことが出来ません」

「なる程…ちなみに、その指輪を鑑定してみても良いですか?」

「良いですけど、出来ないと思いますよ。私も出来ませんでしたから」

「…なるほど。本当ですな、大変珍しい物をお持ちですね」


 …そう、私はきっとこうなると思って、一応薬と指輪に「鑑定権限」を使ったのだ。

 鑑定出来ないというのは嘘。

 鑑定権限は鑑定よりも上位のスキルで、相手が鑑定することを拒否出来る。

 あの時、私は焦ってはいたが、治癒の水、指輪、包帯を創造魔法で作る際に手元に隠蔽を発動させ、同時に作った物を興味本位で鑑定しようとする人を恐れて鑑定権限も使っていた。

 私は早く助けないとという気持ちと、とにかく秘密を隠さないとという気持ちでいっぱいいっぱいだった。

 そんな自分に吐き気がする。

 嘘ばかりで身を固め、私を信頼してくれる人を騙し、信じようとしない。

 そんな自分が嫌いだ。

 そんな自己嫌悪に浸っていると、横から明るい声で


「やっぱり、あなたが居て下さって本当に良かった。薬も指輪も私たちの為に使ってくださって感謝しかありません」


 とタンザさんが言う。


 …きっと、私はこんな大嫌いな自分と一生向き合っていかなければならないだろう。

 これから先、どんなに自分が嫌いになっても。

 バレて周りから大切な人達が離れていったとしても。

 今、私は私がやったことでこんなにも嬉しそうにしてくれる人をこれからもずっと見ていたいと思い幸せを感じているのだから。

 この日、改めて天使と神様に深く感謝した。


 宿に着くと人で溢れかえり、賑わいを見せていた。

 着いてすぐに「ここはどこだ」と戸惑っている彼らにタンザさんが説明した。

 ここは宿で治療のため今日から彼らを受け入れること。

 薬や指輪のこと。

 それらのことに関するこのとの秘密絶対遵守のこと。

 話しを聞いた納得した彼らは秘密は守ると約束してくれた。

 しかし、何故か不安そうにしていた。

 何で??

 不思議に思っていると


「おいっ!」


 と慌てて誰かを止めようと声をだしたので、目線を上げる。

 そんな仲間の制止を無視して1人の男性が私の前で立ち止まった。

 彼を見て本日2度目の感謝の念を天使と神様に送った。


 彼は、冒険者だと知っていなければ分からないほど、男性にしては白い肌、細身ではあるものの筋肉があるのだと分かる体、肩までありそうな髪を後ろで一括りにしたサラサラとした金髪、アクアマリンのような透明度が高く少し青みがかった瞳に長いまつ毛、中性的で消えてしまいそうなくらい美しく整った顔立ち。

 ()()()()が、私の前に立っていた。

 とても美しいその人に私は見とれていた。

 そして、そのイケメンが無表情で口を開く。


「……ありがとう」


 と言ってくれたので、驚きながらも私は


「どういたしまして」


 と笑顔で返した。

 すると、最後に微笑んでから、割り当てられた部屋に戻っていった。


 彼がいなくなった後、周りは騒然としてた。

 私は訳が分からなくて、タンザさんを見る。

 彼もまた驚き固まっていた。

 少ししてから、タンザさんが正気に戻った所でようやく教えてくれた。


 さっき話しかけてくれた彼はルノマリアと言うらしい。

 旅の途中で"大地の剣"にタンザさんが誘って所属してもらったのだと。薬の調合や治療の腕は一流で回復担当をしているが、誰とも打ち解けず、話さず、感情を顔に出した所を見た人は今まで誰1人として見たことは無かったらしい。

 さらに言えば、他の団員達はあれ程の醜い者(イケメン)を見て倒れたり、悲鳴を上げて逃げるわけでも無く、笑顔で返した私に驚きを隠せなかったらしい。


(あぁ、不安そうにしてた理由ってそれか)


 この"大地の剣"には比較的醜い者(イケメン)が多い。

 つまり、普通の女性たちの態度を知っているので、自分たちのせいで助けてくれた人を傷つけたく無かったのだろう。

 しかし、彼らよりも醜い(イケメンな)彼を前にして、何もなく平然として返事をしたから驚いたのだろう。

 私からすれば、超絶イケメンが目の前に来てくれて、しかも、ありがとうと言ってくれて悶絶して発狂することはあれど、恐怖や嫌悪感から拒絶することはないのだ。

 むしろ、押し倒されても良いくらいめちゃくちゃWelcome状態なのだが。



 そんな妄想に浸っていると扉の辺りからまたざわめきが生じた。



 ゼノール様が帰って来たのだ。


2人目のイケメン登場。

ゼノールの帰還。

さて、次回どうなるのでしょうか。

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