必然★~タンザ視点~★
頑張って書き上げました~!
今回も見ていただきありがとうございます!
〈夢の宿〉と書かれた大きな建物の前で私は、初めてのことにとても緊張していた。
わざわざ森の案内人が案内した場所なのだ。
緊張するのも無理は無いと思う。
確かに、迷い人を導くとされているがそれは全て「迷子になった者を出口まで案内をする」とされているのが一般的な森の案内人の役割だ。
そんないつもとは違う案内に私は戸惑うも自分を叱咤する。
もうここしか無いのだから。
最後のチャンスなのだからと。
そして、その大きな扉の片方を開けて中に入る。
中は、木材の建物だから簡素だと思っていたのだが、どちらかというと豪華に感じられた。
だが、落ち着きがありとても居心地が良い。
不思議な感覚で見ていると、奥から女性がやってきた。
(女性か…これはマズいかもな…)
さっきの街での女性達の態度や顔を思い出す。
森の案内人が導いてくれたからかなり期待していたのだが、いかにも争い事とは無関係そうな上質な服装を纏った彼女を見て少し落胆するも、僅かな希望を持って質問を投げかけた。
勿論、そんな希望は打ち砕かれこの宿のオーナーだと答えられたのだが。
それでもタンザはもう縋り付くしかなかった。
これ以上、時間をかけると仲間の命が危ない。
そう考えるとなりふり構ってはいられなかった。
必死に頭を下げて懇願する。
すると、彼女は話しを聞くと言ってくれたので事情を説明する。
私が冒険者であることも。
ケガ人達のことも。
場所がないことも。
パーティーギルドメンバーには醜い者や他種族がいることも。
話せる限りの全てを伝えた。
彼女は少ししてから
「わかりました、その全ての怪我人及びパーティーメンバーの方ををこちらで受け入れます。準備しますので、今すぐ私をその方達が居るところまで連れて行ってください!」
と言った。
森の案内人が案内するほどなのだから、最低でも重傷者くらいは受け入れてくれるだろうとは思っていた。
それが例え女性であったとしても。
だが、彼女は重傷者だけでなく全ての仲間を受け入れ、さらには、ケガ人達の元へ連れて行けという。
荷物を持ち準備をし終えて私を見上げている彼女に、自分がいかに可笑しな事を言っているのか理解しているのかという意味を込めて止めた方が良いと伝えると
「いいえ、行きます!必ずあなたの仲間の方たちを救いますから!お願いです!仲間を救いたいのでしょう!?」
と強い眼差しで私に訴えてくる。
(あぁ、この人はちゃんと私の気持ちを理解した上で言ってくれているのか。私の方がこの人のことを理解していなかったのだな)
そう感じ取った私は直ぐさま、仲間たちの元へ走り出した。
到着した初めは、予想以上に酷い状況を見て、やはり顔面蒼白になっていたが、すぐに気を持ち直して全員に伝わるように彼女が声を出す。
「聞いて下さい!!今からあなた達全員を私の宿に連れて行きます!!絶対に助けます!!だからお願いです!!懸命に生きて下さい!!足掻いていてください!」
彼女は誰とも知らない彼らを、生かすために、勇気づけるように声をだした。
私も含め団員の誰もが驚いた。
ケガ人達でさえも、体は動かせずとも意識が向いているのが分かる。
団員達は何故女性がここにいるのか、どうやって助けるというのか、どうして見ず知らずの相手にそこまで出来るのか、と思うところはあるだろうが何か必死に考え、助けてくれようとしている彼女の姿に誰もが何も言えなかった。
静けさが辺りに広がる中、彼女は気にも止めずに物を渡しながら説明してくれた。
渡された水のような物は秘伝の薬でどんな症状でも治す事が出来る物であることを。
それをケガ人達全員に飲ませて回復したら、指輪を使って部屋に送るのだという。
さらに、彼女自身が回復魔法を使えるため、特に酷い重傷者を治していくのだと。
正直、半信半疑所か嘘だと思った。
そんな偶然が重なるわけが無い。
偶然にも秘伝のスゴい薬があって
偶然にも動けないケガ人達を運ぶための指輪を持っていて
偶然にも彼女が回復魔法を使うことができるというのかと。
だが、彼女の目は本気だった。
もしかしたら、ここに居る誰よりも仲間を救うという気持ちが強いのではないか、と錯覚させるほどに。
ここまで来れば彼女に託すしか無かった。
そこで私は彼女に了解の意思を伝え、傷は大きいものの比較的軽症な物達に、言われたとおりの量の薬を飲ませていく。
すると、どうだろうか。
完治とまではいかずとも、半分近くはすぐに治っていく。
これなら確かに症状が軽い者なら完治するだろうと、感心しながら次々に薬を飲ませていく。
それから私は、元気になった者達にも協力してもらい、後を任せ少し休憩していた。
回復魔法を使える者は数人、メンバーにもいるのだが、ケガをしたり、クエストの時に魔法を使ったりして、今のところ彼女以外はいない。
そのため、彼女だけがずっと団員達の治療に当たってくれているのだ。
(それにしても本当に…凄まじい効果だなぁ、薬にしても指輪にしても)
彼女が回復魔法を使って、重傷者達に声をかけ、治した後は体に触れ宿まで移動させる。
異様な光景ではあったが、虫の息だった仲間達が安心した表情でスヤスヤと眠り消えていく姿を見て安堵していく。
彼女がいてくれて本当に良かった。
森の案内人よ、心から感謝する。
そんなこと思っているうちに、月が見え始める前にはその場に残っていたのは彼女と私の2人きりとなっていた。
タンザ視点終了です。
次からスゥ視点に戻ります。
そして、やっと彼が登場します!
お楽しみに~★笑




