EX.95「龍宮城へご招待」
「さァ着いたよ!!」
「お〜い!今五木イワシが安いよぉ〜」「ほらそこの兄ちゃん所味人参とかはどうだい?」「ほらほら〜、この焼き串を食べてみたら〜?美味しいよ〜」
「へぇ〜、深海でも焼き肉とかあるんだな」
「そりゃあそうさ。光や酸素があるのに牛が無いことは、道理が通らないだろ?」
「まあ、確かに」
餌とかは必要だし、水も違うから大変だけどね、と彼女は笑う。
確かに、深海として光があること事態少し疑問に持つべきだろうが、ここには疑問が満ち溢れている。
真っ先に俺たちはどうやってここに来れたのか?とかだ。溺れて1万メートル程の深海にどうやって辿り着く事が出来たのか。
もちろん水圧だってあるし、酸素が足りる訳がない。
どうやったら死なずにここに来れたのか——————。
その答えはきっと、リアさんが持っている。だけど、聞く気にはなれなかった。
ある程度はヒントを出してもらっているのだろうか、それとも環境そのものがヒントなのかは分からないが、きっと答えはある。
おそらくだけど、その方法を使って地上に上がる事が出来るだろうが······。
「しかしまあ、お腹空いたな。こんなにも美味しそうな食べ物が並んでいるのに」
「ん?ああ、ここらへんは地上円はある程度扱っているはずだよ。ほら、あそこはジンバブエドルって書いてあるじゃない」
「なぜにジンバブエドル······日本円はありませんか日本円」
「だったらさっきの焼き串のところは扱っているわよ」
「お〜、じゃあ買ってくるわ!!」
目ざとく······いや、耳ざとく聞きつけたアキヒトが防水性らしい財布を持って先程のところまで走り出す。
「············って言うか、中身あるのか?」
「あるはずだって!ほ〜···············ら······」
アキヒトの財布の中には10円以下の小銭しか残っていなかった。
「······なかったな」
「うん······」
「あっごちそうさまでした」
「でした!!」
「うるっさああい!!忘れてたよ!忘れてたんだよ!三名に根こそぎ財布を食いちぎられた事を!!」
「だってぇ〜〜、アキヒトくんに驚かせられたんだよ?それくらいの賠償金位もらってもいいじゃん」
「いいじゃん」
「こういう時だけ仲良くなるな二人とも!!あと、レインボーに関しては全く関係無かったじゃんか!!」
「私以外の女に抱きついた時の私の精神的苦痛を鑑みてくださいよ。パフェの三つや四つ良いじゃないですか」
「うっわ······お前、女癖最低だな······」
「うるせぇ!!別に好きでやったわけではないわ!!」
「本音は?」
「ちょっとドキドキしてました。——————痛い痛い!レインボー、耳噛むな!!」
「ふしゃあ!ふしゃあ!!」
猫のような鳴き声を上げながら、噛み付いてくるレインボー。······噛みちぎってないだろうな?めちゃくちゃ痛いんだよ。
すると——————、
「あれ?何だ、何か騒がしいな」
岡田が言うように確かに騒がしい。具体的に言うなら「あの方よ——————」などと騒いでいる。
「何かが起こるの!?」
同じく慌てていたリアさんが意味を含んだ言い方をする。
「何かってどう言う事だ、リアさん!?」
「そ······そりゃあ見てみなさい上空に······!龍宮城からあの方が」
「ん······」
なんだあれ、クジラ?
上空からクジラとその上に乗っている人物がいた。そしてその上でこちらに降りている······落ちている?
「あの方がなぜこの外海に!?」
「何か······あの子に······?」
「あの子······?」
「どういう事なの!?軍隊も連れずたった一人で!?」
「国の一大事ぃ〜〜〜!?」
「まさか大人間が深海に襲いかかってきたのか!?」
「島が戦場に!?」
「こんなことあり得ない!!とにかく大問題だ!!避難しろ〜〜!!」
「ほっほっほっほっネェ〜〜プチュ〜〜ン!!」
リュウグウ王国国王海神ネプチューン。
その大きさは一つの民家を軽く超えるような巨大さ。
「······でっかい男の人魚だな、コレ」
「くじらかわいいです!!」
「······私人魚は女性だけだと思ってた」
「いや、くじらは真正面から見たら怖いな!!」
なぜそんな感想が出たというと、そのくじらが目の前に着地してジロッと見てきたからだ。
「ホエエエエエエエエエ〜〜ル!!」
「うるっさ!!」
「おい、ロドス。この者で間違いないないんじゃもんな?」
すると、くじら同様に空に浮いているサメがコクコクと頷く。
「おい!"英雄„の人間達っ!!おぬしらを龍宮城へ招待するんじゃもん!!」
「りゅっ、りゅ······龍宮城ぉ〜〜〜〜!!」
@@@@@
『魚人街【ノア】付近海底——————』
「漕げ早く!奴らに気づかれちまうぞ!!」
「海底で海流掴むの大変なんすよぉ!!」
ボロボロの船でどでかいオールで必死に前に、上に進む中。一人の存在が現れる。
「レ············レオナルド·ディザスター!!」
「み······見つかった!!」
すると、見せつけるかのように両腕に付けた手錠を前に出す。
『——————しかし、大変なモノを手に入れたもんだっヒ!!』
ダイオウイカの魚人。ステロイド·ロッヒは先程レオナルド·ディザスターが大量に飲んだ薬を一つ掴みあげる。
それは、凶薬"H·A„——————
ドン!という轟音と共に船体が大きく傾く。
その船に乗っていた人間もなだれ込むように転がっていく。
「ど······どこに行きやがった魚野郎!!」
「船体に突っ込んで風穴空けやがった!!」
すると?ギャアアアア!!と断末魔が聴こえ、船の中にいると確信し、それぞれ武器を持ち出す。
「仕留めろ!敵は1人だァ!!」
人間が迎撃を始めようとした所、船の床がミシミシとひび割れだす。
そこから勢いよくレオナルド·ディザスターが現れる。
「隊長ぉ!!」
「魚人と戦りやった事ならある!うおおおおあ!!」
隊長と呼ばれた人物は能力で形成した鉄の鋏を腕に付けて、レオナルドの強靭な顎に立ち向かう。
だが——————
あえなく潰される。
その後、誰かが銃を撃っても剣で襲ってもかすり傷程度しか与えられない。
すると、レオナルドは船の中で一番大きな柱に噛みつく。
「そうかあの手錠······!!ても使わず俺たちを沈めるって意味だ!!」
『魚人の腕力は生まれながらに人間の10倍!!』
カレイの魚人。ゼオがロッヒと同じように『H·A』を掴みあげて言う。
『——————しかし、このH·A一粒飲めば!さらにその倍20倍の腕力······!!2粒でさらに倍!!この夢の力の代償は削り取られる命!!——————しかし······我々は死を厭わず"計画„を実行する!!』
『ニンゲンに打ち砕かれたポロネーズ·ライダーの命!!リスターブの意志!!暗く無残な魚人の歴史はこの世代で終わらせる······!!我々『新·解放軍』がな!!!!』
「あいつ······何をする気だぁ!?」
レオナルドは引きちぎった船柱を船に向けて——————放つ。
その後も変わらず惨劇は続き、残ったのはほぼ無傷のレオナルドと命さえ保っているものの、意識は軽く失っている人間達の姿。
レオナルドは手錠を千切って。
「地上へ浮かべて来い······」
と部下に言いつける。
「ジャらラララ······生きて貰わにゃ困る······!傷跡を残し······生き延びて地上に伝えろ。海中でお前たちの身に何が起きたのか······誰に遭ったのか······!その恐怖を地上のニンゲン共に伝えろ!!」
「俺たちは世界の中央『魚人島』を腑抜けた海神ネプチューンから奪い取り!!お前らニンゲン共を暗い海の底へ引きずり下ろす!!魚人こそが『至高の種族』であることを思い知らせてやる!!」
@@@@@
『リュウグウ王国一等地【ギョバリーヒルズ】——————』
「······行ってしまった············」
「ネプチューン王自らの送迎で『龍宮城』へ招かれるなんて······」
そう言って魚人達は空を見上げ、ネプチューン王の影を見守る。
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「ほっほっほ!!落ちるでないぞ!!ネプチュ〜〜〜〜〜ン!!」
ネプチューン王の大きな声にくじらが「ホエエエエエエエエエ〜〜ル」と反応する。
「ほっほっほ、そのサメ······メガロは義娘が大層可愛がっておるペットじゃもんぬ!!実のところじゃもん······その娘がとある占いを見せてな、とある人間がこの魚人島を救うと言って聞かないんじゃもん。だからこそ、ちょうどここに居合わせたおぬしらを呼んだんじゃもん」
「へ〜?占いかぁ〜······俺はあんまり信じないけどそう言うのって必要だもんな」
おみくじみたいに、とアキヒトがネプチューン王と話す中、同じように連れてもらったリアさんがガチガチになりながら岡田に不安そうに話しかける。
「い······良いのかね?私まで『龍宮城』へ······」
「『友人も構わんじゃもん』って言ってたんだから大丈夫じゃないですか?」
「でもさ······」
「あ、······モフちゃん達忘れてた」
「あ」「まあ」
ここがコメディの世界だったのなら二人の星座が現れてぐっ、と親指を立てているだろう。しまった······、と頭を抱える岡田。
「ほっほっほ!実は先に息子達を使いにやったんじゃが、とんと戻って来んのじゃもん、それでわしが来た。わしも宴の料理が楽しみで早く楽しみで早く始めたいんじゃもん!!」
「あ······俺、二人に怒鳴られるだけじゃすまないかも······」
「——————ああ、言い忘れたがお前たちの仲間を既に一人招いておる」
「え?」
「『そやつは他の奴が暇だから釣りでもする』とか言って、釣り竿を持ち始めてな······全く、身勝手な男よ」
「なるほどねユウスケか」
「ユウスケだな」
「最近、登場数が少ないからやさぐれているのかな?」
「確か······名前が······ユーリ!!」
「ユウスケだろ?えっ、偽名?」
「他の仲間達も直に兵たちが捜し出して城へ招くので安心するんじゃもん!」
「ところでおじいちゃん!」
「"海神„!!ネプチューン様だから!!神経削るのだけはやめてカレンちゃん!!」
カレンは周りを見渡しながら、とある疑問を投げかける。
「ここは深海1万メートルなのに、この魚人島の場所だけどうして明るいの!?」
「ほっほっほっ、魚人島のある場所が明るいのではない······世界で唯一光の指すこの海底に······遠い昔······空間として『初代魔女』アリア·メリアが創り出した島じゃ。そこに人から生きる世界を奪われた魚人達が住み始めた······それが魚人島······!」
「ほお······だからここには植物があるんですね。植物は最低限『水』と『空気』と『光』が必要だから······」
岡田は自慢の目で町に生えている木々を見て言う。
「——————ここには、地上の光をそのまま海底に伝える"陽樹イヴ„という巨大な木の根が届いておる」
「光を!?——————つまり1万メートルを超える光る根っこをもつ樹があるってこと?」
「そうとも学者達はなにかと理屈付けておるが地上で受けた光をその根に灯す神秘の樹じゃもん。その樹の根の呼吸はさらに空気をも海底ねと供給する」
「へ〜〜······確か"陽樹イヴ„って『世界一神秘的なイルミネーション』としてクリスマスには重宝されてたな。なんとも12月25日に訪れると幸せが現れるって······まあ、昼あたりの話だけど」
「ほう!地上ではそのように扱われているのか」
ネプチューン王がそう、嬉々的な感情の声で話す。どうやら今の言葉は気に害さなかったようだな。
すると、ぐわりと上を向き、どでかいシャボン玉のような膜を見ながら。
「地上に陽が差せば海底も明るく······地上の夜には光を失う。何の慈愛か······我々もまた、当然という顔をして······太陽の恵みに生かされておるんじゃもん!」
「······へえ、『世界樹アダムス』と繋がりがあるのかな?名前が神話のあの話に似ているし」
アダムとイブの事だろう、世界樹アダムスと陽樹イヴ——————確かに似ていると言われれば似ていると言わざるを得ないが。こんな偶然もあるのだろうか。
「ほら、見えたぞ。あれが入口じゃもん」
そこには天井に備え付けられた、一種の盾を思い浮かべんような入口——————なんとそこには近代的なインターホンまで付けられていて。
ネプチューン王がそのボタンを押すと、またまた聞き覚えのある『ピンポーン』という音。俺は少々絶句したものの、こう言うのってどこにでもあるんだぁ〜、とかなり知能を削る事で現実から目を背ける事に成功した。
『はい』
「わしじゃもん!!」
「こ······!!国王様っ!!只今通路を降ろします!!」
すると、海水のような物が、何層にも綴った膜から降りていき入口に辿り着く。
「——————さァゆこう!!」
「楽しみ!龍宮城」
ものの数秒にも満たなかったが、海水のレールは続いていき。それが明けた時には——————
「おお!」
思わず感嘆の声をあげるような絢爛豪華な綺麗で華麗な建物が建っていた。
『開門します!!お帰りまさいませ!!国王様!!』
そうアナウンスが聴こえると、巨人族でも入れるような大きな門がゆっくりと開いていく。
「わが城じゃもん!!ゆるりとしてゆけ!!」




