EX.93 「凶血騒ぎ」
「さて、こっからどうするべきかな······」
土地勘······ここは土地勘と言っていいのか深海勘と言ったほうがいいのかよく分からないが、とりあえず土地勘としておこう——————が全く無いのでウロウロ動くのも間違っているような気がする。
「とりあえず······リアさん。ここで一番大きい建物とかないかな?」
俺がそう聞き、リアさんが口を開こうとした時だ。
「女将、船!」
「!?」
人魚の女性のとある一言で、リアさんは俺たちを押し出し水中に引き込む。
いきなり何を!?と言おうとしたところだったが、人魚さんが言いたかった事がよく分かった。
確かに船だ。
ただ、大きすぎる船だ。
今から巨人並の大きさの七福神が、さも3D映画のように飛び出てきてもそこまで驚かないだろうと思えるような大きさ。
『ネプチューン三兄弟様の御成ァ〜〜〜り〜〜〜!!』
パッパパパパラパパパッパパパ〜とラッパの景気の良い音と共に、サイレンの声が聞こえる。
「キャアーーーー!王子様ぁ〜〜!!なぜここに〜〜?」
「?」
「王子?」
ここはリュウグウ王国。王——————ネプチューンの三人の息子。
一人はウバザメの人魚——————ウバボシ。
一人はリュウグウノツカイの人魚——————リュウボシ。
一人はチョウチンアンコウの人魚——————チョウボシ。
上から長男、次男、三男となっている。その全員が戦闘のスペシャリストであり、父であるネプチューンと同様の実力を持っている。
「不法入国者の報告を受けているのですが、ここへ来てはいませんか!?」
「来てたら言ってくれリリルリル〜来てなかったら仕方ないレロレロ〜」
「リック、リックゥ〜〜!ヨ〜サヨ〜サ!わーーーーあ!おいらもここで遊びてぇなぁ〜」
(なんかあの太ってる人。頭悪そうですね)
(しっ、静かにしろ。頭は悪そうはともかく空気は読むことも必要だぞ)
隠れ(押さえつけられ)ながら俺はレインボーを制す。
あれが、あそこのトップあたりか······見つかったら不味そうだな。
「······いっ、いいえ!!ここへは誰も来ていませんが······」
「そんなにも重要な人物なのでしょうか!?」
「王子達がわざわざ降りてくる程の!?」
「うむ······まあ、まだ私の思う者達と確定したわけではないのですが」
「確定ではなレロレロ〜〜〜」
「踊ろうぜぇ〜〜〜!!リック、リックゥ〜〜!!」
(··················)
「何の騒ぎだ?」
少しばかり遠く離れたその場所で、海獣を連れた魚人が三人現れた。
「!?······あれはネプチューン軍の三王子じゃあねぇか······!なぜあいつらがここに······!?厄介だな······」
すると、海賊帽をした魚人が連れてきたカサゴの魚人に「銃を構えろ」と言う。
「しかし······ここから狙ってもおそらくあの三人には効かないと思われますが······」
「バカ言え!あそこをよく見てみろ!おそらくだが、頭だけ出しているのはニンゲン達だろう。匿っているあの人魚に向けて撃て。あの金髪が見えるあれが一番当てやすいだろう?」
「あっ、アイアイさー!」
カサゴの魚人は旧型のライフルに無理矢理付けたようなスコープに目を付けて覗き込む。
「——————ふむ······そうか、どうもありがとう。他を当たってみよう······海境警備隊の見間違いか······遊戯中、邪魔をしましたね······」
「いえ、そんな事〜〜♡」
「また今度踊ろうぜ〜〜」
「お邪魔しまレロレロ〜〜!」
岩場に上がっていた人魚達がネプチューン軍の王子達に対応し、水辺にいたアキヒト達を隠す事に成功した。しかし、
彼は聞いてしまった。
岡田は聞こえてしまった。
暴発覚悟で無理矢理消音器を付け、極力音を消し、ハルトを匿っていた人魚に向けて放たれた凶弾の存在に。
「銃!!」
もはや反射的に言ってしまった。ゆえに、助けてくれた人魚は守られたが——————
「ぐっ······」
身代わりの盾としてふさがったハルトが撃たれた。
「ハルトォオオオオ!!」
「キャーーーーーーーーーーーー!!ハルトちゃん!?」
「すぐに止血しねえとまずいぞ!!」
「くそっ!もう少し早く気付けたら!!」
人魚によって陸に上げられたハルトに皆が集まり、応急処置をしようとする。
「あれは······!!間違いない······!!ニンゲン"セブン·ウォーリアーズ„のメンバー達!!ヘラクレズ!!」
「はっ!!」
貝の鎧を身に着けた屈強な魚人達がわらわらと船から出てくる。
「···············!!」
「どうする、先にあいつらに捕まっちまうぜ!!」
「でも、ここでネプチューン軍と争うのはまずいぞ!!」
「よりによって王子達とは······!!」
ちょっと待ってください!!······不法入国は悪かったよ!······でも、捕まえるのは後にしてください」
「!」
そう、ハルトを撃った張本人が話す中、モフは大声をあげて頼み込む。
「その前に今すぐ誰か······!献血してくれませんか!!?このままにしてたら······もう数十分で仲間が死んじゃうよ!血液は『N型』!かなり珍しいけど、この中に誰かいませんか!?それとも魚人や人魚は僕たちと流れる血は違うのか!?」
「··················!!」
「おい!誰か······!お願いします!!ハルトに血ィやってください!!」
「急いで!!誰かいませんか!?」
必死の願いも虚しく、魚人も人魚も押し黙って何も話さなかった。
すると、
「モフちゃん!人魚も魚人も人間と同じ血液だよ、輸血も出来る······だけど」
「ハモハモハモォォォ!」
「!?」
リアさんが何か言おうとした時に、凶声が轟く。
声につられ、皆が目にやったのはサンゴに乗る一人の魚人。
「人間共がァ〜〜!バカ言ってやがるゼェ〜〜〜!!クソみてぇな"下等種族„のてめぇら人間ニィ!血ィくれてやろうなんて物好きはこの魚人島にゃあいねぇヨォ!!そんなもの差し出せば人間を嫌う者達から"闇夜の裁き„を受けるからなぁ!!」
「!?あいつは······?」
「え!リアさん!?」
「フカボシ王子!!あの男は魚人街のハモンドです!!」
「·····················」
「ダラダラトォ大量に血を流し、何もできずに死に絶えればいい!!この国には古くからの法律があるのさ!!『人間に血液を分かつ事を禁ず』!!」
「何だって······」
その言葉に一番反応したのは岡田だった。俺たちももちろん同等位の衝撃を受けている。
血液を譲っちゃいけない······ってことか······。
だけどそんな状態でどうしてリュウギョウは共和であり、同盟を組もうと思ったんだ······?
「これはいわばお前ら人間の決めたルールさ!長い歴史において······我らの存在を化け物と恐れ······!!血の混同をお前たちが拒んだ!!魚人の英雄ポロネーズ·ライダーの死も然り!!種族構わず奴隷解放に命をはった男が······!!」
『······我らはどうして人間と魚人で分けて、隔てて、殺し合うのか······!?』
『それは俺達はお前達とは違うからだ······!!』
「後の『第一次英雄対戦』の末。血液さえあれば確実に生きられた命を······いとも簡単に落とした!!」
「!?」
「心なき人間達に共血を拒まれ······死んだ!!」




