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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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アキバトEX 「あの夜の出会い」

「いたぞ!あっちだ!」


「くそっ、流石に目立つか······全包囲で捕まえろ!!」


「ラジャ······ギャッ!」


黒いミリタリースーツを身に着けた、隊長らしき人物に応じた人間が、とある闇によって短い断末魔と共に消された。


2008年。そのあたりにようやく『第四次英雄戦争』が終わりを期した時期。


しかし、たとえ戦争が終わったとしても、その復讐として隠れながらにして殺しを始めている者もいた。


だが、今回のは隠密と言う割にはあまりにも過激過ぎた。どちらかと言えばテロに近い物だった。


けれどもその殺戮に気づけた者は少ない。何故ならそこの森は『隠れじの森』と呼ばれるサイレント·フォレストの中に建築された村。そして、事件の中心地であったのは『時雨の村』であったのだ。


もとより刀を扱う村。この村出身は誰もが皆、剣士として世界の味方となっている。


だが、この時代以来。この村出身の英雄はユウスケしかいない。


そう——————この事件で皆、殺されたのだ。


          @@@@@


直樹がこの村にやってこれたのはまさに奇跡と言っても良いだろう。いや、むしろたまたま。なにか嫌な予感と共に突如現れたサイレント·フォレストの中に入って行った。


ちょうどこの辺りで残党刈りを行っていたのもあり、最低限の装備を整えていたおかげで、意識外からの攻撃を防ぐ事が出来た。


実に直樹はアキヒト同様に鎧を着るのは毛嫌いしており、黒の機動服を着ている。装備は最上級神器のモデル刀の『ブラック·アウト』。直樹が使う、いわゆる使い捨て武器ではなく、最上クラスの耐久力を誇り、直樹の『無次元(インセンティブ)』の発動する闇を纏う事の出来る、直樹の持つ武器の中で唯一の武器。そして、腰にその武器の鞘に背中には刀の入るにはおかしなサイズの鞘。


つまり鞘の二刀流。いや、ニ鞘流。


直樹は闇夜の中、周りに林立している木にもたれかかり、いたる所についている傷を癒やそうとする。


呼吸を整えている最中、傷口から緑色の光が放出し、糸の様ななにかが防いでいく。


あざを通り越して完治していく体を再び動かす。


声を聞く限りでは少なくとも二人以上いる。その内片方は聞き覚えのある声だな······。


何年も戦っている身としては聞き覚えの声などいくらでもいる。表も裏もだが。


少し音を出すか······?


直樹は懐から炸裂弾を取り出して後ろヘ飛ばす。投げつけたあたりにはおそらく先程殺した人間が転がっているだろうが、お構いなしだ。


既にこの戦いの中で30人程度は殺している。問題は殺した数ではなく、殺された数だ。


辺りを見渡せば、絶命している人間や体の一部しかないような者もあり、心が残っていたら吐くかそれくらいの反応はしていただろう。


殺しの仕事は心を使ってはいけない。そう知り合いの殺し屋(部下)に教わった。


だが——————。


「そこか!」


「ギャッ!!」


ブラック·アウトを投げクナイの様に投げつけ、闇夜に隠れた伏兵の頭部に当てる。もちろん即死。


心を使わない代わりに、より鋭敏に神経を尖らす。戦場での常識だ。


あと何人だ······?


崖ではなく、崩れた家の残骸を飛び越えよそ見をしていた兵を殺す。


そしてもう一人殺す頃には、度重なる銃弾によって傷付いた肉体が蘇生されていた。


そのロジックには答えがある。


直樹の背中に下げた鞘は、持つ者にある程度の癒やしをもたらす鞘だ。ただの革ではなく、直樹が持つブラック·アウトと同じように最上級神器を保有し、包み込む役割を持つ鞘。


『奪う者』と『救う者』。『壊す物』と『癒やす物』。


剣と鞘が永劫的に変わらないのは、人間で言うと骨の外側に筋肉や皮があると同じような事だ。


そして、その恐るべきところは再生能力。


適合した人物が持てば、腕がとれた時も、内臓が溢れた時も瞬時に再生する。


元に戻る。


しかし、直樹は適合した人物ではないため。その恩恵は微々たるものである。


その間も物語は進み。直樹は村の残骸の真ん中に訪れたときだ。


燃えている木々の匂いの中でも、極めて別の匂いがする。


畳の匂いだ。


嗅ぎ分けられるのかと言えば難しい話だが、ほぼ直感的に何度も嗅いだ匂いが記憶のレパートリーから引き出される。


そして、畳があったであろう修練場らしきところは、まるで自身があったかのように崩れ落ちている。


······元々サイレント·フォレストは()()()()()()とは聞いたことがあるが、もしかしたらその根が腐ったのか······?


「まあ、良いだろう」


「!?」


私の言葉に過剰に反応した人物がいた。


燃え盛る木々の中、生存者誰一人いない中で探偵するのは厄介だったんだ。——————と直樹が言い、背後を振り向く。


「新任······いや、“死„の席の魔王か。まだ死んでいなかったのか」


「あんたがあっち側にいなかったら、こっちの計画は万全だったんだ!!」


憤りを見せる——————レオニダス·アップル。だが、その考えは甘いんじゃないか?


「少くとも私が居なくともこの日本はやれていたと思ってはいるが······この国には私よりも化物が何十人もいる」


そう言うと私は懐から飴玉を取り出して噛み砕く。そろそろ脳が疲れを見せ始めた所だったからな。


「特にかぐやさんが恐ろしいな······本気を出した私と互角だ。君たちから見たら若輩な私でも実力で考える脳はあるはずだが?」


「いちいちカンに触る言い方するな······。まあ、いい。あんたがいなくなった後、ダークホースが現れたよ。そのかぐやの首すらかるいんじゃないか?」


「ほう。私ではなくかぐやさんにか······登ったものだな」


「そりゃあそうじゃねぇか······そいつが登る頃にはお前は墓の中でね!!」


そう言うと、レオニダスは鎖鎌に繋がれた分胴を投げつける。


俺は——————。


私は——————、


その光景に目もくれずに、視えた『死の間際』を視取り。そのルートに添うように刀を振り削ぐ。


それは、音速や光速を遥かに超える不可避の一撃。


それは、死すら気づかぬ一瞬の一撃。


そうだな。ここいらで捨て台詞でも言っておこうか。


私の愛する彼女に向けて。


「私はこの世界の味方だ」


「··················」


ピッグマンの巨大な肉体を持つレオニダスは何も言わずに、斬られていった。


            @@@@@


残党が残っていないか、レオニダスとの一瞬の攻防が終わった後に直樹はそう思いながら回り道に進む。


すると——————、


「これは······酷いな············」


そこには多数の剣や槍に突き刺され、地面に倒れることさえするされない。そんな人間の姿があった。


せめて供養でも、と。直樹が近づき祈り始めようとした瞬間。


ガシッ。


「!?」


瞬時に自らの右腕を握りしめたその腕を斬りとりかけた自分を必死に押さえつけながら。雀の声のようにか細い声に耳を澄ます。


「生きて······いる、の?」


「君は?」


今すぐでも死んでもおかしくない状態で、彼女は私の腕に万力をかけるように握りしめたまま、話す。


「わた、しのなまえは······()()()。あの子を······あの子を助けてください······わたしは、もう、しんでしまう······だから······」


「その子は何処に?」


「あそこに······」


彼女が眼球を動かした方向には、先程畳の匂いがした修練場らしき所だった。


「だが······」


「あのこには······()()があるの······わたしは、わたしはみとどけたかった······。だけど······」


私は——————、


夢を持つ人間を見捨てられる程、腐った人間だったか?


「分かった」


すると、彼女は——————()()()は安堵の顔を見せたように見えた。


「あり······が、とう······」


そうして、ようやく彼女の力が抜け、こちらの世界からあちらの世界へと旅立っていった。


私は、セピアがつい直前まで名も知らなかった少女に、もう一度、例のあの子に巡り会えるよう。願った。


そうして、瓦礫をかき分ける。


「あ······う、ええ······あ、うええ······」


すると、声が聞こえだす。


生きている!!


『助けて』を言えないような状態である事は間違いない。直樹は更に掘るスピードを上げる。


最初に手が、それに伝って腕が、そして頭が······。


その顔は見覚えのある顔だった。


見覚えのありすぎる顔だった。


それは、負の遺産である『第四次英雄大戦』の最初の戦場外の犠牲者であり、もっとも尊い人物。


それは——————、


「あ、あああああああああ!」


気づいた時には涙が溢れていた。


『なおきぃ〜だっこしてぇ〜』


その昔、生意気にも自分を呼び捨てにして、呼びつけた小さな男の子。


アキヒト·レオン·ハザァード、その人だった。


見間違える訳がない。鈴音の名付け親である人物でもあるからだ。


「ああああああああああああああああああ!!」


この子は······この子は守らなくてはいけない。


失踪した3年間を自分は知るわけではない。だが、最終的に此処に訪れた。さらに不幸な事にこの村も襲われた。


セピアに言われずとも、この子は救わなければいけない。


だが、彼は今でも息を引き取り始めている。


薄く、小さくなっていく彼の呼吸を聞いて直樹は焦り始める。


しかし、助けられる方法は一つある。


直樹は背中に背負っていた鞘を取り出す。


これは、『ムーンフェアリーの鞘』。


直樹は確信がついていた。何故ならアキヒトを見つけるきっかけとなったのは、とある剣が標のように突き刺さっていたから。


これは——————『ムーンフェアリー』。


鞘の片割れ。


傷つける事のみ許された刃と癒やす事だけを強いられた鞘。


適合してくれるだろう······。いや、適合してくれ······!


直樹はアキヒトの胸の中心辺りに鞘を置き、力を込める。すると、先程の蘇生·再生の力と違い、青色の光がただち始めた。


「『永久(エターナル)結合(フュージョン)』——————!!」


まるで沼に、水に沈むように埋もれていく鞘。


そして、一体していく——————。


天使の雫がこぼれ落ちるように、癒やしの泉が溢れ出すように、魂が——————その肉体が再生されていく。


ぽっかり空いた身体の穴が塞がっていき、溢れ続けていた血液がせき止められていく。


未だ目覚めぬ少年を抱き上げ、標となってくれたムーンフェアリーを腕力で持ち上げ、声の無くなった森を抜けていく——————。


             @@@@@


「そう言えば君。あの鞘はどうしたんだい?」


鈴音を此処に連れてきたところ、ちょうどそこにいたかぐやさんに捕まり、茶を飲まされていた時だった。


不意に言われたその言葉に、私は無表情を貫こうとはしたが、最終的に諦めを見せる。そもそもあの鞘はかぐやさんの貰い物だったのだ。


「······持ち主に、返しただけですよ」


「ほう。あれは神が作りし剣の一部だぜ?本物の神様にあったのかい?」


「ええ······そうですね」


貴方は神様には気軽に会えるでしょう、と呆れながら思うが。ここは、騙さして貰おう。


「まあ、いいか。もうあれは手放した物だし」


良いのか!良いものなのか!?


直樹が珍しく心の中でツッコんでいると、かぐやはお茶を啜りながら。


「本来聞きたかった事は違うことだしね」


「違う事ですか······?」


「例の養子だよ」


「はあ、養子は二人いるので分かりませんね?」


ハルトも向かい入れて良かったと、不謹慎な事を思ってしまう。さらに前に口を滑らしたばかりなのだ。


「そりゃあもちろん一人目の方さ」


「······························」


知らないでは無理か······ならば。


「息子二人はこんな所に何度か足を進めている事を知らないですしね······。そもそも負担をかけたくない。特にかぐやさんはそういう所、危険じゃあないですか」


「ははあ······この清廉潔白なこのボクを危険呼ばわりかぁ〜。大人になったねぇ······」


「まあ、悪人が改正したと考えてください」


「························」

「························」


数分の睨み合いのさなか、鳥が逃げまどい、ネズミの大行進が行っていたことは知らない。


「······まあ、いい。それよりも今後の事だ。もう、50代目は諦めた方がいいかもね」


「はあ」


「本来継ぐはずの49代目の子供は全て失踪。上二人の子供は親が拒否。そうだっただろ?直樹くん」


「ええ、鈴音をわざわざ危険な真似をさせたくない」


そうして私は図書館の中でメイドに本を読ませている鈴音を見て言う。


「だったらもう終わりかもね。英雄の頂点としての姿は——————49代目には長生きしてもらわんと困る」


「············ヒメさんは?」


「おや!結婚している身で、奥さんの妹に不倫か?」


「本気で殺しますよ」


「おう······ハテナマークが無いと、ここまで殺意がビンビン伝わってくるね······」


椅子をズリズリずり落ちるかぐやさんを見て、私は嘆息をつく。


「まあ······いつかは教えてくれよ?その二人を」


「······ええ」


その約束は、守れたと言うかは結論を言えば守れなかったと言うのが正しいだろう。


アキヒトは自らの力で私達両親の嘘を見抜き、『聖戦戦争』へ行ってしまうその瞬間まで知られなかった。見つけ出したのは彼女直々の実力だろう。


『さよなら』


これがアキヒトの最後の会話だったことを私は今でも悔やんでいた。




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