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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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アキバトEX 「翼をください」

空を飛ぶ——————それは、かの飛行機を作ったライト兄弟が初めて果たした偉業だった。


本来人類は空を飛ぶことが出来ない、人間だからだ。


だからこそ空を飛ぶ技術を学んだ。そしてそれを実践した。


結論は成功、鉄の塊が当時は(もちろん最初の事だが)虫が乗ったのだが、後に人間を乗せて飛ぶようになる。


しかし、現代は能力者社会。


もちろん飛べない者は存在するし、飛行機管制官やパイロットなどの職業は潰えていない。


だが、能力を使って空を飛ぶ人間もいるし、とある努力によって空を飛ぶことだってできる。


飛行機なんて使わなくとも、技術なんて使うわなくとも、努力すればきっと——————。


ライト兄弟が飛行機を作った1903年からおよそ100年後の現代。


人間は何も使わずに空を飛ぶことが出来ている。


彼らはそれを『天空飛行』と呼んだ。


          @@@@@


「飛ぶのって、楽しい?」


それは、俺たちが魚人島につく前の物語。とある日にカレンの疑問によって行われた物語。


「飛ぶ······ってどう言う事だ?俺は別にゼロ戦に乗ったことなんて言った事も無いんだけど」


「乗ったことあるの!?」


「いや、無いけど」


「なぁ〜んだ、無いんだぁ〜」


そう言ってお茶を啜るカレン。俺もそれに乗じて啜る。


「······って、じゃないよ!何勝手に終わらせようとしているの!?」


「チッ、最小文字数になる所だったのに」


「番外編なんだからちゃちゃっとしてよ」


「別に知らん」


「そっかぁ〜知らないかぁ〜」


そう言ってお茶を啜るカレン。俺もそれに乗じて啜る。


「いや!その光景さっきも見ました」


「チッ、空気の読めない第三者め」


さっきと同じようになあなあで終わらせようとして、最終的に乗ってくれる思った矢先にこれだ、空気の読めないモフめが、一度その体解いてやろうか。


「いま頭の中でとんでもないこと思いませんでした!?」


「ちょっとカレン消しゴム用意して」


「ん······あっこれか、は〜い」


俺はカレンに手渡された消しゴムを持ってモフにじわりじわりと近づく。


「ちょっと待ってください!漫画じゃないんですから!パソコンでうたれた文字ですから!僕の存在自体を消しゴムで消そうとするのだけはやめてぇぇ······!!」


断末魔は意外に短かった。何故なら真っ先に口を消したから。


モゴモゴを口らしき所にある空白を動かそうとしているモフを見下ろし、満面の笑みで。


「多分だけどお前······もう出番無い」


「———————————————!!」


何か抗議しようとしているのだろうが関係ない。モフよ、所詮君はその程度の人形だったのだね。まだまだ人間にランクアップ出来ないよ。未だに獣人がケモミミ少女と呼ばれている間は——————!!


閑話休題。


「それで······なんで、飛ぶ事に興味を持ったんだ?」


そう俺が言うと、カレンはよくぞ言ってくれたと言わんばかりに目をキラキラさせて、


「なんか空を飛ぶって楽しそうじゃない!」


「いや、まともに飛べるまで酔い止め薬の毎回だった」


「現実を見せないで!!」


カレンはガバーッ!と目を覆い、現実から目を逸らそうとする。


「見なくても聞こえるだろ?」


「そうだけど!!」


「お兄ちゃぁ〜〜〜ん。ちょっとここ教えてほしいんだけどぉ〜······あっ、カレンさん!どうしたんです?こんな所まで!」


「こんな所って······そこまで遠かないだろ······」


言うて近くのマンション暮らしだからな、カレンは。


「いやね。アキヒトくんに空の飛び方教えて貰おうと思ったのにね、駄目だって言ってくるのよ」


「いや聞かれてもないし、言ってもないぞ!」


「あ〜〜あ〜〜あ〜〜あ〜〜」


俺がそう反抗すると、カレンは耳を何度も防いだりして聞こえないふりをする。


「お兄ちゃん教えてあげたら?別に減るもんじゃないでしょ?」


「いや······別に減るもんじゃないけどさ······怪我されちゃ困るからさ······」


「なんで?そこまで焦る必要ないじゃん。確かに怪我はだめだけど、多少は必要でしょ?」


「えっと······でもなぁ······」


俺がそう言い淀んでいると、横からカレンが、


「ちょっと聞いてほしい事があるんだけど——————」


省略。


「えっ!カレンさんアメリカに帰っちゃうんですか!?」


一度入って来たときは焦ったが、カレンからはまともな事を言っていた。······まあ、その割には俺以外のメンバーには誰一人として言ってないんだけど······。


「えっと······でもね。ハルトくんや他のみんなにはだまっといてくれれば嬉しいなぁ······」


頬を掻いてさっきの俺みたく言い淀むカレンに、スズは彼女の手をガッチリと掴んで。


「もちろんです!我が兄不肖よ妹。もし、バラす事があってしまえば、兄にどんな事をしても構いません」


「ちょっと待て!なんで俺が犠牲になるんだ!?」


そしてお前は何故リスクが無いんだ!?


聞きたいことたくさんだよ!!


「モフ!もちろん黙っておくように!!」


「——————!!」


おそらくだが「モフ!!」と言いたかったのだろう、現在ゴマフアザラシの人形の姿に戻ったモフは、口を消された顔でそう言った気がした。


でも······スルーはしないで欲しいなぁ······。


既に俺抜きで話が進んでしまっている現状を見て、俺は少しため息をつく。


             @@@@@


「キャッ!!」


「アキヒト。正妻の前でよくこんな愚行が出来ますね」


「別に正妻じゃねぇだろ。レインボー······それと、なにか力加減ミスったか、カレン?」


「あっ、大丈夫大丈夫。ちょっとびっくりしちゃっただけ······」


ところで俺がカレンに行っている動作は、カレンを後ろから抱きしめていると言う動きだ。もちろん、あのカップルがよくやっている様な彼女の肩からマフラーの様に抱きしめるのではなく、単純にジェットコースターの安全装置の様に掴まえていると言う方が正しいだろう。そして、俺が手を出した先は肩の上ではなく、下腹のちょっと上辺りだが······。


俺はカレンに「準備できたらないくぞ?」と言うと、カレンは「YES(イエス) SIR(サー)!」と元気よく言って、俺はレインボーが作ったレールを最初はゆっくりと浮かび、そのまま——————


轟音を轟かせながら、天高く飛んでいった。


             @@@@@


「わ、わ、わ、わ、わ、わわわわわわわわわぁぁぁ!」


弧を描いて超高速で飛んでいく飛行物体。その根源である人物にカレンは抱きしめられながら飛んでいるのなら、根元を見れば一種のホラー映像だ。


飛行機の様な密閉性のある安全な物ではなく、人力。人の力だ。


だが、飛んでいる人物は飛行機よりもハイスペックで安全性はどの世界で見てもトップの人物だ。


彼女の目に見えない程のスピードと繊細さによって、髪の毛を解いた事もあり自由自在となった触手は塵や芥、空気中に微量になだれ込むゴミすらも楽々といなしていく。


そして彼女はそんなものを見る余裕もなく、ただただ小さくなっていく神戸の街を見下ろしながらちょっと後悔している所だった。


アキヒトくんの忠告でやめとくべきだッタァァァ!!


「———————————————!!」


声にならない絶叫で圧倒的なスピードをぐんぐんと上げていくこの機体ならぬ人体。ジェットコースターの比ではないのは即で分かる様な感覚だった。


このままスピードを上げていくアキヒト。


本来宇宙に行くためには約マッハ23のスピードが必要なのだが、アキヒトのそのスピードには達していない。


何故なら一緒にいる彼女にはそれほどのGに耐えられないと思っていたし、そもそも宇宙には用がない。


アキヒトが用があるのはその一つ手前。オゾン層により紫外線から身を護られていない『中間圏』だ。


アキヒトは青く、蒼く、碧く眼を光らす。


その『真実の眼』に映されたのは、夏祭りでよく見る金魚すくいのポイの様に薄い膜——————あれがオゾン層だ。


アキヒトは『(ダークネス)』の技。『暗黒膜(ブラックゾーン)』を纏い、突き進んでいく。


「よしっ、着いたぞ」


そこには——————、


「わぁ·········!」


天然のプラネタリウム。いや、それよりも遥かに明瞭で立体的な星星。点々と彩っていく無数のイルミネーション。


そんな光景の真下にアキヒトとカレンはいた。


ブラックゾーンは単純に太陽光を完璧に防ぐ物ではなく。アキヒトが『害』と認めた物を強制的に排除することが出来る有数能力。もちろんこれは紫外線も含まれていて、カレンもアキヒトも日にただれることはない。


そして——————、


「ほいっ!」


「わっ······、わっ!!」


アキヒトはカレンの体から手を離し、軽く押した。すると、カレンはスケートに乗っているがごとく、スルスルと空を滑っていった。


「これが空を飛んでいる感覚だよ。行きと帰りは確かに辛いけど、ここに来ると本当に楽しいんだぜ」


「うん······うん!凄い楽しい!!」


子供が初めて貰ったおもちゃで遊ぶ様に、キラキラした笑みを浮かべながら無重力の中を泳いでいく。


所詮、最初はここでいい。ここが向いているのだ。


『無数の重力』と書いて『無重力』であるこの場所なら、地球の一定的な重力から逃れられている分、スムーズに空を飛び回るイメージを作り出す事が容易だ。


『天空飛行』も背中に翼が生えているというイメージを持って初めて飛ぶことが出来る。無限の星空を、無数の光景をイメージして、そこへ行くことが出来る。


俺はくるくると回っているカレンを見てほくそ笑む。


もとより『天空飛行』を扱える身としては、ここに来るのは少し面倒だが、ここまで喜んでもらえるようなら後は楽だろう。


これの覚えが遅かったユウスケは30分程俺に掴まって動けなかった位なのだから。


「そう言えばカレン。なんで空を飛びたいと思ったんだ?」


それはカレンが初めて言い出したときに俺が疑問を持った言葉。あの時は「楽しそうじゃない」と言いくるめられたが、今は行けるだろう。


カレンは少し悩む素振りを見せて、


「そうだなぁ······みんなで色んな景色を見るためかな!」


「見るため······?」


「そう!富士山にも行ってみたいしスカイツリーだって、ニュースでみたけど軍艦島も危ないらしいから行ってみたい······まあ、とにかくそんな景色をみんなで見るの!そしたらさぁ、7倍楽しいじゃない!!」


それはあまりにも幼稚な考え方。


だけど——————、


「ふふっ······、ははっ!はははは!確かにそうだな!みんなで見たら楽しいかもな!!」


「そうそう、だからこそのけぼりにならない様に頑張ろうと思ったんだよ!」


「じゃあ頑張らないとな」


俺は笑ってカレンを応援する。


夢見でも幼稚でもない。それは、純粋な『希望』なのだから。


止める必要がない。むしろ止めてはいけないだろうな······。


              @@@@@


「よし!時間も時間だし、そろそろ帰るか」


手を叩いて、未だ浮遊中のカレンに帰りを促す。


別に能力を使って時間を調べた訳ではないが(もちろん調べる事は可能)、携帯という近未来のとても便利な機械があるので関係がない。今は15時、おそらくだがハルトがカレンの分を用意していてくれているだろうが、早いにこした事はないだろう。


「ん〜〜もうちょっといたいなぁ〜」


「ダメダメ!酸素切れるよ」


「えっ!?」


俺の衝撃的な言葉にカレンは慌てて口を塞ぐ。


酸素が切れるのは、大方間違っていない。『中間圏』は空気がほぼ無いのだ。だからこそ、俺はここに来るまでに小型濃縮酸素カプセル(一個30分)を5個分用意したのだが、そろそろ時間的に切れ始めるだろう。


「早く!早く!!帰ろう!疾風のごとく!!」


「ほんとにその位で良いのか?」


俺はニヤリ顔でしたため、再々カレンに聞く。


「もっ、もちろんだよ!」


なので——————。


「えっ······と。これはどう言う状況かな?」


「ん?もちろんカレンが暴れない様に拘束しているだけだよ」


「んなぁ〜〜!拘束している、なんで!?なんでこんな状況に!?」


「それじゃあ帰りまぁーす」


俺はカレンをその両腕ごとホールドし、手を動かすのを阻止する。何故なら——————、


「うっわあああああああああああああ!!!!」


行きの比じゃない恐怖を与えるからだ。


そう、逆さでの落下だ。


本来伸ばしている翼のイメージを少しの間収束して、高速落下を堪能していただくコースとなっております。


俺は体を氷で覆い、落下時の熱に耐えるようにする。もちろんカレンの絶叫も反射するようになる。


「わわわわわわわわわわわわわわわわわ、わっはぁぁ!」


「えっ、それどう言う状況?」


落下時のカレンさん。


気絶と目覚めの繰り返しを何度も行い、ようやく何度も見たこともある宮田家の姿が見えてくる。


見知らぬ物と言えば、ドーム状に作られた着地点の様な物の近くにスズちゃんが手を振っていることぐらい······。


いや結構余裕あるなわたし!!


あっ、でもだめだ。カクッ。


ハッ!!また死ぬ所だった!えっ?死んでた?


カクッ、ハッ!カクッ、ハッ!カクッ、ハッ!カクッ、ハッ!


巻き戻しをおこなっているかのように再三繰り返される気絶と目覚め。気がつけば、ほぼ真上で。


私は恐ろしい物を見ました。


そう、スズちゃんが作ったであろうドームがカパッと開いていたのです。さの食虫植物のように。


その中にきれいに入って行った私達を見て手を振っているレインボー。私は死ぬと思いました。


すると。


ピタッ······ゴォォォォフウウウ!!

 

急加速で落下を続けていたアキヒトが、まるで一時停止を押されたように動きを止めた。もちろんカレンも。


「はい、終了。スズ!ドーム開けてくれ!!」


「は〜い!」


そう言うとドームがひらひらと解かれていく。


そう言う事ですか。このドームは爆風の威力を弱めるために——————。


「私······どうだったかな?」


「う〜ん!失禁しない程度には大丈夫だったかな」


「——————///!!」


「ちょっ!つねるなつねるな!!」


腰が抜けて、動けない状態の私でもここまでなら出来るんだぞ。


「ケーキ」


「え?」


「ケーキ奢って」


「······はいはい分かりましたよお嬢様」


「あっアタシも食べたい!」

「わたしも食べたいです!!」


「はいはい分かったよお前ら」


「じゃあ、今度の土曜日にするか」


根負けし、更に他方からの援護射撃もあったおかげでケーキを手にすることが出来た。


土曜日は海に行く前日。


その前にアキヒトくんのサイフをすっからかんにしてやるぜ!


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