EX.89 「ブラックジョーク」
「まあ······色々あったんだ」
「いや······だからわざわざ一話を——————」
「パパ!!さっきから何やってるの!?」
俺は優雅に座る親父にツッコミを入れようとしていたら、カレンが自分の父親らしき人物に激しく怒号を上げている。
さっきから気にしないように親父にツッコもうとしていたのに深く追求してはいけなかったのに。
「何を言っているんだカレンよ。彼は王の息子だぞ。むしろ団長がおかしい位だ」
「おい、大和。何が頭がおかしいだ。殺すぞ」
「純粋な殺意が返ってきた!?殺さないでくださいよ!!」
「······冗談だ殺さんさ············」
「だったらこっち向いて言ってくれませんかね!!」
一人悲しそうにお茶を啜る親父に大和さんが過剰に反応する。若いな······。
「今若いなと思っただろ?こいつ私よりも五つ位上だぞ」
「マジか!?」
まさかの真実に俺は驚く。だって親父には多少なりともシワがあるが、この人にはそういう類が何一つ無いんだから。
「パパとアキヒトくんはある意味女の敵だよね」
「飛び火!?」
精神的に火矢が飛んできたぞ!心が痛熱いわ!
そして同じ様にジト目カレンの火矢アタックを食らった大和さんも苦い顔をしていた。
俺は気を紛らわす様に、レインボーに巻かれているロープを解く。
そして解放された時、ふふふ······私の最終形態を見ずに終わらすとは愚かな······と何処かの宇宙の帝王の様に笑う。今からザーボンさんでも呼ぶんじゃないかという感じだ。
そんなチョーしにのったレインボーの横腹をグッと掴み戒めようかと思ったが、キャッ、とかわいい声がしてやっちまったと思う。
そして思っていた通り。
「アキヒトく〜〜ん。な〜にエッチな事をしちゃってるのかなぁ〜」
「お兄ちゃぁ〜〜ん。たとえ妖精ちゃんでもセクハラはいけないよぉ〜」
「違う!違うんだ!俺は別にそんな事をしようとする為にした訳じゃない!!」
「キャッ、そう言うのは夜になってからですよ。昼でも良いですけどね!!」
「あら〜異種間、いや異種姦ね」
「冗談でも言うのはやめて!!」
変態チックな事を言い出す母さんには流石に堪えきれなかったので、涙目になりながら叫ぶ。
「人が人に恋するのは普通だと言うのはもう遅いわよ。もう近頃じゃ妖狐と狼が結婚したり、金髪暗殺者や全身をロボットに改造された巨人族だっているんだから!」
「ちょっと現実的な夢話はやめてもらおうか!」
少しリアルだから怖いんだよ!!
「だからこそ私は異種間での恋愛も享受出来るわ!」
「私は嫌だよ!!」
「ふ······かれんちゃん。前時代的考え方はちょっと遅れているわよ」
「でも······」
「流石圭子様だ。何という考え方を······」
親子で考え方が違うのはこういう感じか······ちなみに俺は出来れば人がいい。付き合うとかなら。
ところで——————
「大和さん?母さんの事を知っているのですか?親父も似たような反応をしてたけど」
「それはそれは王の子である貴方や圭子様は我らにとって命を賭けて護るべき存在なのです」
「ちょっとよく分からない。親父ぃ〜どういう事?」
最早途中から思考が停止を要求してきたので、分かりやすく言ってくれるのであろう親父に助け舟を求めた。すると親父は腕を組みながら——————
「『第四次英雄大戦』って言ったらお前なら分かるだろ」
「························あぁ」
俺はかなり溜めて言う、あの一瞬で手汗が溢れ出そうで怖かった位に。
「とある王国がある国は既に魔王軍の傀儡だと言われ、疑心暗鬼の最高潮に達した際起こった『絶望の大戦争』。そしてそのある国は日本。とある王国であるジダル王国こそ傀儡。当時の世界は慌てたものさ、日本は当時から名のある英雄を発していたからな、最大の英雄国が裏側で潰されたと感じた」
すると、途中で大和が代わりに言い始めた。
「あの時は世界中大慌てでしたね。何故なら王の出身国こそ日本ですから、魔物こそ襲われはするが負けこそしないと思っていましたからね。それに日本にとっても濡れ衣だった。世界対日本、極東の小さな島国にあんなにも殺気立てて襲い掛かってくるもんですからこちらも対処しなくてはならない」
なんと今度は当時全く参戦しなかった筈の母さんが言い始めた。
「『虹の丘』『大気の湖』『英遇の空』『うらら都』——————そして、『王の大地』。天然物であれ人工物であれ、彼ら達の護るべきものは多すぎた。そこで考えついたのが『第二次世界大戦』で潰えた筈だった軍事利用だった。そこで生まれたのが宮田直樹をリーダーに編成された『アルゴノゥツ』。今は既に解散された防衛戦力よ」
「そして私達はあの戦いに勝ったそしてその上で事実を反していたジダル王国の裏を操っていた当時の魔王第一席の魔王······確かエル·アダプタを殺してたった3年の戦争は終わった。これが結末だ」
3人が言い終わると同じタイミングか、ようやく暴れていた心臓の怒号がやみ始め、荒かった呼吸も安定したスピードに戻っていった。
「お前を追い詰めるつもりではないが聞いておけアキヒト。······おそらくだが、戦争は最低あと2回起こる······そしてそれは第四次英雄大戦の被害を軽く超えるだろう。最終戦争に関しては地球自体が壊れるかもしれない」
それは——————
それは、ただの予言。
しかしそれは、たった一度戦争を経験しているかしていないかに差がある。人と人との武器での戦いである世界大戦、人と魔人との能力の戦いである英雄大戦。もちろん親父と母さんも世界大戦は経験はないが、死と隣り合わせである戦争を経験しているのは限りない。
直視の予言であり、
直死の予言である。
「まったく団長は人を追い詰めるのが好きですねぇ〜」
すると、その様子が見て取れたのか大和さんが気を利かせてくれたように言ってくれた。
「お前は何一つ心に留めないがな······いっぺん死んでみるか?」
「だからブラックジョークは止めてくださいよ!!」
一人が笑って、つられるように他のみんなも笑って、俺もようやく笑えたが————————————。
「痛いです······アキヒト······?」
「えっ······ああ、ごめん······」
力が入っている事にすら気づかないくらいに震えていたらしい。
@@@@@
「いや〜久し振りにカレンちゃんの手料理が食べたいなぁ〜」
「別にいいけど今から作るとなると冷凍食品になるよ?」
俺が未だレインボーに抱きつかせて貰っている所で、余島親子がこんな茶番を見せて、「とっくに作ってますから食べていってください」とハルトが言うまで耐えきっていた。
元々大和さんは食べていく予定だったし、カレンだけ帰すと言う訳にもいかないし(多分帰したら本当に冷凍食品になるだろう)、今日はどうやら数に困る魚類では無かったようで、ハルトも一人分の量を少しだけ減らせはいいだろうと言う魂胆の下、夕食が始まった。
「ファッ!?何この味!?何この美味しさ!?本当にただの主弟!?」
「ん······団長に『並の料理人以上の味を作れる奴だから期待しておけ』とは言われていたけどここまでとは」
「別に主弟ではないけどな······でも、何か······うれしい」
家族以外で料理について褒められた事がないハルトは嬉しそうだ。
@@@@@
「よし!じゃあ帰るかカレン!!」
「えっ?私今日ここに泊まるけど?」
「「「え!?」」」
反応した3人は俺とレインボーと大和さんだ。
「ぐふっ······そうか、年頃だもんな······仕方ないよな······女のコだもんな······」
「ほら、鍵貸してあげるから私の部屋に泊まっていいよ」
ぽいっと投げ渡された慈悲のない心と言葉と鍵。どうやらその3連打で大和さんの心は潰えたらしい。
「じゃあ······失礼しました······」
「ああ、通り魔に襲われてこいよ」
「なんで別れまでブラックジョーク!?」
元気だなぁ〜親父。
@@@@@
俺が部屋に戻る前の話だが、カレンは半ば母さんに今日無理矢理誘われたらしく、替えの服などは持っていなかったので——————
「あの〜服は······」
「大丈夫!貴方はアタシと同じ平たい胸族だから貸すことが出来るわよ!!」
「平たくないですから!着痩せするタイプですから!!将来見込みのある胸ですから!!!」
と、正直男がいていいのか分からない会話をしだし気づいたら親父とハルトが消えていたのだが、一応好きなバラエティがやっていたのでそれを見て耐えきっていた。
で。
「何で母さんは俺の服入れを漁っているのかな?」
現在、ドアを開けたその奥には母さんが俺のパジャマ入れに手を突っ込んでいた。ようは漁っていた。
「ふっ、カレンちゃんのパジャマを用意しているのよ」
「いや······今更母さんの蛮行に対しては何も言う気は無いんだけどさ、俺男だからサイズとか合わないんじゃないか?」
こういう時に慌ててはいけない。冷静だ冷静。適応適応。
「何を言っているのよアキヒト。あなたのパジャマは女性用よ」
「え!?知らんかったけど!!」
え、ちょっと待てよ。俺、毎夜女性用のパジャマ着て寝ていたのか!?
「まあ······スズちゃんの服もあったんだけどね。あの子のサイズ、身長の問題でちっちゃいからさ。アキヒトの服じゃなかったらいけなかったのよ」
「でも、俺の場合サイズでかいだろ?」
「だとしても······彼シャツ。良くない?」
「まあ······ぐってはくるけど······」
でも、そもそも俺彼氏じゃないし。
俺のそんな情けない満足感を暴露したら、高速で俺のジャージを取り出した。
「?」
「ふっ、残念ね······。私は彼ジャージの方がグッとくんのよ!!」
「知るか!!返せ!!」
「あっ圭子さん?私の分も用意しておいてください」
「レインボー!?」
いつもはそこ、止める側だろ!!
俺を羽交い締めし、ふふふふふ······、と優越に浸るレインボー。本気を出したレインボーにエネルギー濃度が高い対決では全く勝てない。つまり——————
「うぬぬぬぬぬ······離せ!!」
「大丈夫ですよアキヒト。あなたのパジャマを着てみっちりと抱きついてあげますから」
「そんな誘惑に負けるか!!」
「"暗黒物質„」
「ファッ!?」
俺に残った記憶には、右手に黒い何かを掴んでいた母さんが悪魔の様な顔でそれを投げつけていたこと。
そして、目覚めた時には——————
「うわーーー」
「お兄ちゃん······」
「違うんだ!俺は違うんだ!!」
俺のパジャマを着た二人をハルトとスズの二人が見つけ、朝ごはん中ずっと白々しい目で見られていたこと······。




