EX.87 「レンアイプロジェクト(後編)」
「エスコート!最低でも女性のエスコートが大事です!それがなくてはマスターが屑男と見られます!」
「そ、そこまでか······?」
買い物の先日、俺はモフに強く、強く言いつけられていた。
まあ、モフが言っている事は正しいと思うし、寧ろ俺はそう言うのにかなり疎い事は分かっている。
それにしても何で俺は服を選んでもらうのにカレンを選んだんだ?
一人が嫌なら男メンバーで買いに行けば良い。女性の意見が欲しかったのならアスナだっているのだ。
何で······俺は······。
「む······どこか行くのか?」
すると俺の自室のドアを開けた親父が顔を出した。
「ああ、買い物に行くんだよ」
「························」
すると珍しく剃っていない顎髭を擦り。
「それは誰とだ?」
「別に言う必要があるのか?」
俺はちょい反抗期的に反論すると、バツが悪そうに——————。
「む······こちらも明日にはとある人物をここで対う予定でな。出来ればでいいんだ」
「············?」
別に隠す必要は無いから良いか。
「カレンと行くんだよ」
すると何か悪い事を考えたかぐやさんの様に口角を歪ませた(こっちは怖いバージョン)。
「悪い事を考えていませんよね?直樹さん」
「む······そんな顔をしていたか」
「してた」「していましたね」
二人が息を合わせて言うと、親父は苦虫をかみ潰す様に髪を掻く。
「そうか······まあ、アキヒト。明日は二人で帰ってきてくれないか?」
「何で?」
「例の人物だ」
「······分かった」
そんな短い会話でも伝わるのは家族って言うものだろう?
@@@@@
私はアキヒトくんの動きを見て、少し驚いていた。
「黒じゃない!?」
「何で黒じゃない事に驚いてるんだ!」
だって私が見るときって結構黒い服が多いんだもん!
それに······白色の服を着るなんて······予想外!
でも似合っている······。
でも困ったぞ、白も似合っているのならバリエーションが増えてくる。元々中性的なからだ付きをしているからいろんな服を着れそうだし······。
でも、カレンが今の状況で深く考える訳でもなく。
常時、左手に思考と熱が吸収されていく様に考えていられる訳もなく。
そもそも何で手を握ったのか分からない······!
デートだよね!やっぱデートだよね!そう考えるしかないよね!そもそもこんな状況でアキヒトくんからしてくれるって考えても良いんだよね!!
そう欲望に流されるが如く、私はアキヒトくんの腕に抱きついていた。
「!?」
ビクッとアキヒトくんが動いたが離してやるものか。絶対に掴まってやる。そしてそのまま捕まえてやる。
するとアキヒトくんが、
「バランス崩さなようにだけは気にしておけよ」
(♡♡♡♡♡♡♡♡!!)
ああダメ好き!!しかも見た感じレインボーちゃんがいないってことは独占って事だよね!
って言うことは——————!
ぷしゅ〜〜〜と蒸発していく様に見えたらしくアキヒトくんが慌てていたが、私は——————
「I'm happy enough to climb to heaven(私は天に登る程幸せです)」
「えっ、何て!?」
聞かれたほうが恥ずかしいだろうと思うような言葉も放っていたりしていたり······。
@@@@@
「む······むむむむむむむむむぅ······」
極端なのを除いて殆ど似合っている。どれを選べば良いか分からない。
アキヒトくんは軍資金はあると言っていたが、それでも買いすぎはいけないだろう。
少なくともワンセットは必要で、使いやすさがある服······う〜んどれを選べば良いんだろう?
アキヒトくんも文句を言わずに何度も着替えてくれているし、ここでズバッと決めた方が良いかもしれないし、もうちょっと悩んでも良いかもしれない。
一度ワンピースを用意したときは、こんな服着させるのか!?と言う発言もあったし(顔もしていた)それでも着てくれたが(ご丁寧にわざわざ髪留めを外してロングにした状態だ)ふざけるのはいけないだろう。
「だったら······これかな······?」
私は最初に用意しておいて、そのまま放置していたワンセットを取り出し、着る準備は出来ていたらしいアキヒトの所にポイッと投げ入れた。
「ん······?」
ワンピースを出した時も無言て投げ入れたから、どうやらその類だと勘違いして投げ入れられた時は物音が聞こえてきたが、どうやら彼にとって普通だった(ワンピースは女性物)らしく、逆に不信感があったらしい。
シュルシュルと布ぎぬの擦れる音を遠回しで楽しむ私の事は誰も気づかないだろう。なぜなら私は魔法で認識阻害を発動して人からは見えないようにしているのだ。
フフフ······これぞジャパニーズニンジャ。
「今、ジャパニーズニンジャとか思わなかったか?」
ビクッ!
「オオオ······オモッテナイデスヨ」
読心術!?······いやそれよりもアキヒトくんが現れたって事は——————。
「おお〜」
「そんなまじまじと見るなよ。恥ずかしいから······」
私がキラキラとした視線で見つめると、アキヒトくんは恥ずかしそうに目を背けた。
私がアキヒトくんに用意したのは、雪柄のシャツ、白のジャケットに黒のテーパードパンツだ。
「似合ってる似合っているよ!」
「ううう······」
「それ、どうかな?」
「う〜ん······見た目合ってるけどちょっとお尻が引っかかるかな。一つ上のサイズを買うか」
「あっ、じゃあ私も何か買おうかな?」
「ん?何言ってんだ?」
「え······?」
「ワンピースだろ?」
ちょっと待って!?今全身がぞわぞわしとんだけど!
「お前なら似合うって。さあ購入するか」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!!ちょっと待って本当にちょっと待って!」
「··················待った。じゃあ買いに行くか」
「止めて止めて止めて止めて止めて止めて!!もう、本当に······ほんっとおおおに!!止めて」
「······付き合ってくれた礼で買おうと思ったんだけどな······」
「うぐっ」
その顔はだめだよぉ〜。
結論から言うと買った後、直ぐタグを切られて(恐らく金額を見せないためだろう)——————。
「ほい」
「あっ······ありがとう······」
珍しく強引······でもそんな所も良いかも······。
「それじゃあ色んな所も行くか!」
「············うん!」
私は空いていた左手を掴んだ。ビクッとアキヒトくんは驚いていたがこれ位許してくれるだろう。
「··················はぁ〜」
フフフ、大勝利ですな。
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あの後私達は能力使ってもOKのパンチマシンやシューティングゲーム、あの有名な某レーシングゲームにクレーンゲームで景品をとっていた。ガチャガチャではアキヒトくんが能力使ってズルをしてシークレットの景品を当てていたりと、色々な事があった。
「むぅ······払ってばっかだし、私にも払わせてよ」
「元々ご飯代も俺が出す予定だったのに提案でカレン自身が払っているだろ?」
「むむむぅ〜」
論破されたような、されてないような······。
「お前が楽しかったら俺も楽しいしな······」
「え?何て?」
「いや、今のはタンマ!なしにしてくれ聞かなかったことにしてくれ!」
「いやいや〜今のは言ってくれないとあ〜んの公開処刑するよ」
「いやそれも精神にくるけど本当に聞かなかったことにしてくれ!俺も緩んでた!」
「ふ〜ん。緩んでたかぁ〜。仕方ないなぁ〜。い·ま·の·は·聞かなかったことにしてあげる〜」
「ほっ······」
喜怒哀楽。そんな四種の感情が今日のアキヒトくんからはよく出てて、それを見るのはとても楽しい。
「そうだ!」
「ん?」
「とても大事な事だから今のうちに言っておくね!」
「おっおう、何だ?」
ぐいっと顔を近づけてアキヒトくんは少し背中を沿って驚いていた。
「私ね······恐らくだけど三月位にはまた帰らなくちゃいけないんだ······」
「え······」
「あのね······ここに来れたのもほぼほぼ無理矢理だったし仕方ないんだけど、通知は一応留学扱いになってるから帰らなくちゃいけないんだ」
「え······それじゃあ······」
「いや別にセブン·ウォーリアーズを抜ける訳じゃないよ。ただ、一度帰っちゃうだけ」
「そうか······」
アキヒトくんは顔が見えなくなるほどに俯いて、
「寂しくなるな······」
とだけ言った。
「うん······寂しいね」
アキヒトくんが顔を上げるとそこにはいつもの困難に立ち向かう時の不敵な笑顔だった。
「だったら······楽しまなくちゃな!」
「何処だっていけるし、何だって出来る。お前のワガママは何だって聞いてやる」
「それじゃあ······」
好きになってもらえないですか?
その言葉だけはグッと堪えた。
その言葉は自分で言うか、相手に言ってもらうかだ。好きになってもらうなんて言語道断。だから——————
「まず最初は——————皆で海を楽しもうか」
「······そうだな!」
私は知っている。
アキヒトくんの持っている財布にはとあるキーホルダーが付いている事を、それは香水だということを。
私はそれを見ると少しにやけてしまう。
幸せだって。
@@@@@
「ただいま〜」
アキヒトくんに連れられてアキヒトくんの家にやって来た。
理由は人が来るかららしい。
何の事だろうと思い、私もアキヒトくんの様に家に入ると——————。
「おう!カレン。久しぶりだな!」
「えっえええええええええええええええええ!!」
「どうした!?」
どうやら、アキヒトくんは知らない人物らしい。いや寧ろ知らなかった事が当たり前だ。
だって——————
「何でパパがここにいるの!!?」
「パパぁ!!!?」




