EX.85 「夏の約束」
「はあ······」
夏休みも中盤へと差し掛かり、炎天下の中海行ったりしている中で一人ため息をつきながら歩く人影があった。
バイト······バイト、修行修行修行。
「だあああああああああああああ!!」
暑くて頭がおかしくなったのか、いつもではありえない行動をとっていた。
「とりゃああああああああああああ!」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!
ザ·宮田家のインターホンを連打。昔ユウスケがそれをして「うるせぇぇぇえええええ!」とアキヒトが出てきた事を聞いた。
言わばアキヒトホイホイ。
本人に言ったら内臓がひっくり返る程ブチ切れそうだから言わないけど······。
「ハア!!」
ドアが開いたぞ、今だ!行け!
「アキヒトくん!海行こう!!」
「アメリカでは海に誘う時にはインターホンを連打する様なマナーがあるのか」
ギュアアアンとバックにそんな音が流れる様に聞こえて、ドアから出てきた相手を指差して言ったが。
甘かった。
ドアから出てきたのがアキヒトくんのお父さん。宮田直樹だったなんて······。
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「本っっっ当っっっに!すみませんでした!!」
家に入れてもらった後、私は直樹様にかの有名な日本の技DO☆GE☆ZAを流れる様に行った。
「別に土下座は技ではなくて誠意を正すものなんだが······海を越えるとこうも変わるものなのか······」
「すみません······すみません······」
「別に怒っていない。そろそろ頭を上げてくれないかな?後ろに待機している私の娘から屑を扱う目で見られるかもしれん」
「パパァ〜!もうとっくに見てるよ〜」
「遅かったか」
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「かぐやさんの所へ?」
私はあの後モフさんにお茶を貰って、アキヒトの行方を直樹様に聞いた。
「えっパパ。カレンさんに様付けで呼ばしてるの?サイテー」
「違う!断じて違う」
おっほん、と強く咳払いをしてこの場を取り繕うとしている直樹様。恐らく私が変えない限り無理だろう。
「まあそれよりも!つい最近からハルトの怪我が多いらしくてな······何か知ってる事はないか?」
話によると、どうやらハルトクンは(何かの料理名みたいだ)あの日から毎日外出して怪我をして帰ってくるらしい。
知らなくは······ないが、言うべきなのか······?
「えっとですね······私達、アキヒトくんに黙ってかぐやさんに修行を受けさせて貰ってると言いますか······」
「む······それはどう言う事だ······?」
「守られてる······って思うんです。それと同時に甘えてるなって、ずっとアキヒトくんの様な強さを見たらそう思ったんです。それが駄目なんだって······最初に行動したのはユウスケで、それを聞きつけた皆が乗っていく様なパターンで。かぐやさんも快く承諾してくれて、でも一つだけ条件があったんです」
「それは······?」
「『アキヒトくんには絶対に教えない事』——————そう言われました」
なるほど、と合点がいったかの様に直樹様は頷き、椅子の背にもたれかかる。
「だからハルトが怪我をした理由に全く分からない風だったのか······教えられてなければ分かる訳が無いからな」
「それにしてもかぐや様は酷い事をされる」
「?」
「たった一人だけがある意味除け者にされる事だろう。それにあいつも大抵気にしていた。暫く会えていないって」
「···························」
すると直樹様が膝をパンと叩いて、
「よし、行くか」
と無表情に言った。
「え、どこへ?」
「かぐや様の所へだ。ちょうど私も行く用事があったのでね」
「で、でも」
「あっ、じゃああたしも行く〜」
「子供を引率するのは大人の仕事の一つだ。それに——————」
「?」
直樹様は私の耳に小さく、鈴音ちゃんに聴こえないように言った。
「君、アキヒトの事が好きなんだろう?海、誘ったらどうだ?」」
「·····················?」
「·····················!!」
「·········〜〜〜〜〜〜〜/////!!」
とんでもない爆弾発言をしていった。
当時の私は真っ赤になって何も言えてなかったらしい······。
@@@@@
「アッはっハッハッハァ〜!!これは傑作だ!圭子もともかくだが直樹も結構人をおちょくるのは大好きだぞ」
「うぅ私、あんな人とは思ってなかったです······」
「そうかいそうかい!でもね、あいつに酒を飲ませたら更に可笑しくなるよ!何せ一時は噺家を目指していたときだってあったからね」
「ちょっ······かぐや様。それだけは止めてください」
「へぇ〜以外〜」
「スズは知らんかもしれんが、親父が一度話し始めると延々と耐え続けなきゃいけないぞ?」
「今一瞬パパの酒盛りやろっかなと思ったけど止めよっかな」
「それが賢明だ」
「何故お前は私の夢を壊そうとする?」
「親父の夢は子供と一緒に酒飲むことだろ?暫く酒絶てよ」
「む······いや、最低5年待つのか?私は」
「「うん」」
「···························」
息詰まる親父。俺は知っている、それは気まずいじゃなくて羨ましいだけなのだと。
「そう言えばカレン。何であんなに真っ赤だったんだ?親父も何を言ったんだよ」
俺は内容は知らない為、聞こうとしたが。何か感じ取ったのかかぐやさんが、ニヤリ顔で言う。
「まあ我が孫よ。この世界には順序を辿って物事を進めなければいけないこともあってね。知らないほうがまだ君の為には良いんじゃないかな?」
「はぁ······?そうですか」
「そうそう、絶対にそう!」
「おっ······おう、分かったよ。もう聞かないよ」
(聞いてくれたら、真摯に答えてくれそうな気がするけどな)
「ん?何か言ったか?」
「何も言ってないよ」
「そうか」
「心地よくアキヒトの頭上で眠りから覚めたら目の前に旧知の敵が。これは排除しなくては、ムームーパンチ!」
「やめい」
俺は突然ぱちくりと目覚めたレインボーをドードーと宥め、水を啜る。
「むっ!そうだ!レインボーくん。君、以前気になる本があったって言っていたね」
突然身を乗り出して言ったかぐやさんに俺は少々(本当に少々だよ?)驚きながら、身を守る体勢をとっている。
「え?言ってましたっけ?」
「そうそう言っていたとも!それにアキヒトくん。見た目カレンくんもヘトヘトだ。送っていったらどうだい?」
「たとえ言っていてもそれだけは見逃しません!さあアキヒト、一緒に帰りましょう!」
「君の知らないアキヒトくんのアルバムだけどな〜」
「すみません先に帰ってもらってよろしいでしょうか?」
なんと言う返り方。そんな彼女に俺も呆れを軽く通り越して抱腹絶倒だよ。
「いやいや、何言ってるんですかかぐやさん!プライベートですよ!」
「何芸能人みたいなことを言っているんだい。まあ安心しなよ君の直接的な物は見せないさ」
「じゃああたしを見ようかな〜」
「直樹も分かっているよね」
「はい······まあ元々用事があってここに来た訳ですし」
「···························」
「?どうしたんだいカレンくん。お面みたいな顔をして」
「お面みたいな顔は分からないんですが、行っちゃっていい——————」
「さあ〜!行ってらいっしゃい!またのご来店を楽しみにしてるよ!」
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チャンスをくれたのだろう。
アキヒト秘蔵のアルバムは気になるけどもこっちが最優先だ。
「なあカレン」
「は······はひ!?」
ブリキのようにガタガタと動いてアキヒトくんの方を見た。
そこには明るい声とは裏腹に、何かを求めているようなそんな顔をしていた。
「カレンや、皆は俺を避けているのか?ずっと聞きたかったんだ」
—————————っ!
『それにしてもかぐや様は酷い事をされる』
『たった一人だけがある意味除け者にされる事だろう。それにあいつも大抵気にしていた。暫く会えていないって』
その言葉の脅威がここにきてようやく分かった。
意図せず私達はアキヒトくんを避けていた。アキヒトくんと居たら勝手に話してしまいそうだったから。
でも、それがアキヒトくんを痛めつけていたとは知らずに。
求めるように、すがりつくようや顔で言うアキヒトくんに私は——————。
ごめんなさい。かぐやさん——————
約束、守れませんでした。
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結論から言うと、最終的にアキヒトくんは頭を抱えてうずくまっていた。
そして私はオロオロしている。
「かぐやさんめ······余計な事しやがって」
「えっ、あの······その······!」
デコピンされた。
アキヒトくんは流れる様に立って近づいてこうなった。
ヒリヒリします。
「わざわざそんな事しなくても、ちゃんと黙って見てたよ!そんな気を回さなくて良かったんだ!でも!」
「っ!」
「安心した」
························。
「え······?」
「安心したって言ったんだよ。二度も言わせるなよ恥ずかしいだろ」
目をまん丸として私よりも真っ赤になっているアキヒトくんの顔を見て私は笑った。
「おっ、お前は笑うな!!」
「無理っむりぃぃぃぃぃ!アハハハハハハハハハ!!」
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「海に?」
「うん!皆で行こうかなって」
顎に手を置いて少し俯くアキヒトくん。
大丈夫だ。シュミレーション通り。
そしてその後NOが。
「良いよ」
「フェ!?」
「何でそんな驚いてるんだ?遊びに行くんだ当たり前だろ?——————だけど」
「だけど?」
「その前に服。見繕ってくれないか?」
こうして、私とアキヒトくん。デートだと願いたいイベントが始まる。




