EX.80 「仮面の秘密」
なるほど······。
虚撃に実撃、真正面かと思えば背後からの奇襲。
そうしたら僕の『虚空の王』では防げない重い攻撃が度々。
コイツらの中で気をつけなければいけないのは、足蹴の男『ミヤタハルト』に拳で戦っている男『ヤマモトナオキ』に魔女の癖に肉弾戦ばかりしている『ヨジマカレン』の三人か······。
他の三人はその三人の攻撃の隙を補う様に支えている。
なるほどな······。
「しっ······!!」
ヤマモトナオキの腕を僕は肘と膝でサンドイッチし、折りにかかるがびくともしない。
その拳は鳩尾に届こうとしていた。
面白い。
まずはオカダトモキの銃を弾き、トランスフォーメーションを壊し、ツガワユウスケの腹に『黒龍の虚空を放つ。
隙きだらけの腹に放った無規則で無機物な暗黒物質がツガワユウスケの体に入り込み、一定則のタイミングでショックを与えた彼は今度はヨシダユウキを『模造ランスタッド』と共に蹴り飛ばす。
もっとだ······。
その三人も再び立ち上がり、『ミラ』に兇器を向ける。
眼前に広がるは、殺意のねっとりとした感情。『ミラ』にはとても心地良かった。
『ミラ』は両手を天に広げ、神に感謝した。そしてマリオットを操るがごとく手首をガクンと下げた。
もっと踊りたまえ諸君。
「もっと僕を楽しませろ」
爆発極まる戦場の中、『ミラ』の言葉は——————カレンの耳に届いていた。
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「なっにぃぃぃぃぃぃいいいいい!?」
リーゼリッタには驚愕と言う顔をしていなかった。
あまりにも想定内——————と言いたいのだろうか。
俺はオーラ——————精神的擬似体外放出物で作られた銃弾を反転し、
「そのままそっくり返すぜ」
俺は全弾同時砲撃を行った。
百を遥かに超える銃弾をリーゼリッタに全て跳ね返す。
様々な方向から放たれる銃弾にリーゼリッタは見据え、ただ見回していただけだった。
「お姉さま。いきます」
彼女に動きが無いのを確認して、もう一人のメイドが前に出て、無色のルービックキューブを創造しガチャガチャを回す。するとその動きに連動するように部屋が動き出し皆がバランスを崩す。
その中で——————
「"破星拳„」
「"死拳·二の打不要ず„」
2名だけは既に動いていた。
方や相手の頬を切り裂く一撃を、方や心臓部に向けた拳を相手の左手が身代わりに制す。
······むぅ、やるな。儂のこの技を止めたのはいつぶりか······完全に右腕にばかり集中していた筈だが儂の攻撃にも意識を向けているとは。
完全に今のはいけたと思っていたのに······あの爺さん両手に込めていたエネルギーの一部をとっさに別方向に変えていって避けるなんて······。
こいつ(こやつ)······やるな······!
@@@@@
「くそっ······このままじゃ、ジリ貧だ······!!」
岡田は少なくなっていく弾倉を見て、そう吐いた。
事実、ハルトはともかく他の5人は精神力やカロリー、全体エネルギーを消費して戦っているため、長期戦になればなるほど不利になっていく。
あの時から既に30分。常に全力を出した彼らには焦りが浮き出てきた。
対して『ミラ』は涼しい顔で、傷一つ付かずただ彼らの攻撃を受けている。
多少当たっても無傷ってどういう事だよ······!!
「······『合技』」
「!?」
幾人も『諦め』と言う、認めたくなくとも認めないといけない様に心が打ちのめされているその時にカレンがそう言った。
「岡田くんは確か、エネルギー吸収の銃弾があるでしょ?それで私達のエネルギーを込めるの」
「でも、その銃でもアイツに当たる可能性の方が低いぞ」
「それを人に与える事って出来ない?」
核心をつくような、そんな彼女の言葉に岡田は頭を捻らせた。
あの銃弾はカレン自身が言った通り、エネルギー吸収型の銃弾だ。極めて精密な造りで中の火薬の代わりに空洞が出来ていて、その中に多くのエネルギーを収納するんだ。そして発射と同時にその銃弾自体がエネルギーを纏い、そのエネルギー分の攻撃を行う。つまり、貯めれば貯めるほど攻撃力というか相手に与える事が出来るダメージが大きくなる。
そしてそれを全て纏う事だけにしたら······?
銃弾から他の武器や器にバトンタッチする事が出来たら······?
もしかしたらいけるかも知れない。
「カレンさん······この銃にありったけの魔力を込めてくれ」
俺は銃を彼女に手渡して、『ミラ』の攻撃を避けて、瞬時に込めてくれた銃をパスしてくれた。
「ハルト!!」
俺はそのままハルト、吉田、山本、そして俺がエネルギーを注入していく。
そして俺はユウスケに構えて——————
「突っ込めぇぇええええええええ!!」
そのユウスケへの叫びに、彼は応じて飛び出した。
『ルートエルメロイ』開放!!
『ギブミール』!!
炸裂した瞬間。濃度100パーセント以上の様々なエネルギーが開放され、その全てがユウスケの身体に纏う。
「"合技„!!"レール·ストライク„!!」
刃の先端から青色の炎が燃えたぎり、突進していく。
その炎を見た瞬間少しばかり険しい顔をした。
「いっけぇぇええええええええ!!」
その刃がその見えない空間にぶつかり女性の悲鳴のような甲高い響きが鳴る。
もちろん俺たちは援護をする為に再び攻撃のモーションに変更する。
ユウスケの刃はそのままズブズブとめり込んでいき、『ミラ』の仮面に当たる。
いける——————!!
『ミラ』はポケットに手を入れたまま、その恐ろしい程の体幹でユウスケの一撃を耐えながら——————。
少し笑顔を見せた。
ピキピキと仮面にヒビが入っていき、流れる様に壊れていった。
その瞬間——————
「——————!?」
いっ······息が······
必死に周りを見ると他の皆も同じ様に口をパクパクさせて必死に酸素を求めようとしている。
そうそれはあの仮面が割れた瞬間。酸素や二酸化炭素や窒素等の空気があらかた消失した。
もしかして······あの仮面はもしや······。
「そう、あの仮面は僕の能力の枷なんだよ」
まるで待っていたと言うように、『ミラ』はスラスラと言葉を綴った。
「僕の能力は『虚無』······僕が選択したとある物質のみを無くす力だ」
つまり空気を消したんだ、と彼はとても涼やかに言った。
まずい······このままじゃ······死ぬ······。
意識が薄れていき、そのままドサリと倒れていった。
その中で、
「?おや、君はどうして生きているんだ?」
彼は心臓部辺りを握りしめながら必死に耐えようとしているカレンの姿がいた。
まだ······終わってない······。
@@@@@
「レインボー」
「はい?」
「ちょっとあっちでリュウギョウを助けてやってくれ」
「えっ、でもアキヒトは大丈夫ですか?」
「ああ······俺はレインボーはやってくれるって信じてるから、こっちも自由にやれる」
「······信じてますよ」
「ああ······信じてくれ」
そうしてふわりと綺麗な翅で飛んでいっていく、俺はそんな彼女の後ろ姿を見送って、今まで黙って見てくれた初老の男性に向く。
「さっきまで攻撃してくれなくてありがとうございます」
「いえいえ、こうすることで貴方の本気を見れると思っただけですよ」
·····················。
しばしの沈黙。そして、二人は同時に飛びだして——————
アキヒトが初老の男性の鳩尾に真っ先に躊躇なく入れ込んだ。
「!!」
そしてアキヒトは男性の耳元に呟いた。
「俺がレインボーをあっちに寄越したのは決して邪魔者や足手まといじゃない。レインボーの眼に触れない様に鬼になれるからだ」
「ふふふ······面白いな、お主!!」




