EX.79 「人類と魚人族」
『アイツは俺よりも強い』——————それは、出会ったばかりのリュウギョウならともかく、レインボーにとっては驚愕の言葉であった。
なぜなら彼女はアキヒトの事を何時だって最強だと思い込んでいてやまない為、こうやって弱音を吐くことは聞くことは無かったからだ。
もちろん負ける事だってある事はレインボーは理解している。実際アキヒトはガオウに一度負けているからだ。
だが、その後アキヒトは勝っていたのでノーカウントに計算に入れていたのだろう。
一度は負けるものの、最後には絶対に勝つ。よって最強——————そう思い込んでいた彼女はアキヒトが戦わずに弱音を吐くことは規格外の事であった。
そんな事はない!!と言おうとした時にアキヒトは先程よりも目を鋭くして。
「でも······戦う限りは勝たなきゃ生きられねぇよな······」
その言葉にレインボーもリュウギョウも気を引き締める。
「取り敢えず急ごう。手遅れになる前に」
@@@@@
「"時雨流„42の型"竜巻雨„!!」
「"ロード·イクスピアリ„!!」
ユウスケの『時雨刀』がうねり、吉田の製作した『偽造ランスタッド』で突進していく。
竜巻の風を纏った時雨刀と超速の一撃に変化していく槍が『ミラ』に直撃していく。
だが——————
「なっ!?」
「これは一体?」
その刀身の刃の辺りが、その槍の先端が、『ミラ』の肉体を割く事も、突き刺す事もせず、まるで何もない空間に静止するように身動きが出来なくなった。
ただしそれは彼の周囲数センチの空間らしく、戻す事に関しては何も問題も無かった。
だが、その不可解な現象に皆は理解が全く出来ない。
「なるほどね······だから無敵か······」
岡田は銃身に手を添える。
「だけど何でさっきは俺の銃は避けなかったんだ?」
そう言うと同時に『ミラ』に撃つ岡田。
その銃弾はマッハを軽く超え、目に見える速度を遥かに超えるが。まるでクッションが挟まっている様に少しの波と共に半径2ミリメートルの銃弾が止められる。
「何を言ってるんだい?ちょっとした絵を見せるためだよ」
「僕を倒せると誤解したおかしな人間の末路をね。そうだな」
「題名をつけるなら『目に見えぬまま即死』かな?」
『ミラ』の踵が岡田の腕に直撃する直前。
「危ねえ!!」
彼の目の前に山本が間に入り、『ミラ』の踵の一撃を防ぐ。
そして、モーションの崩れた『ミラ』の体に右のストレートを喰らわす。
もちろんこれは目に見えない壁に激突して防がれるが、唯一生身で攻撃した山本にはその仕掛けが分かった。
なるほどな······まるでコイツの周りが他者への危害を拒絶するかのように反発しているんだな······だけどこれは少しずつ押していけば必ず届くものだ。
「ハルト!!」
「はい!!」
「時間を稼げ!!」
「どうやって!?」
山本の無茶振りにも軽く文句は言いつつも、魔王の調理場を発動して対応していく。
山本はカレンの『速度上昇』の効力を得て、通常のスピードを遥かに超える速さで話し、それを聞き取った者から飛び出していく。
そしてその中で彼が思うことはやはり、リーダーの安否であった。
アキヒト······一体どこにいる?たとえ仕掛けが分かったとはいえ、あの男はあの仮面も含めて未確定だ。早く戻ってきてくれ······!!
@@@@@
魚人族と人間には古くからの因縁がある。
それは妖精族の様に愛らしい見た目ではなく、中途半端に人間に近い所に人間は恐怖を感じた。
だからこそ人間達は存在の隔離を行動に移した。
その結果、蹂躙から始まり殺戮、認識阻害。それにより、大量の悲鳴と絶望が聞こえることとなった。
その事によって、既に座を降りたレオン·ハザァードがその現状を見かね、魚人達を魔女『アリア·メリア』によって建造された『魚人島』に住み、一命を留めた。
そして現在。とある賢明な文学者は説いた。
『人と人とを隔てる壁が存在しない現代。何もいがみ合っているわけでもない。ただ、我々が認めようともしなかった現状を我々の誠意と共に反省するべきではないだろうか』
その意見には賛否両論が飛んだが、最終的には文学者に賛同したが、『魚人島』の位置が全くもって見当つかず、その上当時建造したアリア·メリア及び初代レオン·ハザァードの仲間達の殆どが消息不明となっている。
つまり、彼らは魚人族達の考えを待つしか無かったのだが——————。
「儂らの願いは『人類と魚人族の協和』じゃ」
目的地に向かう最中、走りながらリュウギョウはそう言った。
「儂らと人類は遠い昔、確かにいざこざはあった。そのせいで心が傷ついた者もおる。今でさえ人間を呪っている者もおる。だが、だからこそ手を取り合う、取り合える事が出来るようにしたいんじゃ」
「························」
「わざわざ過去ばかりを見つめて下向いてる訳にもいかんじゃろうしな」
「·········それは違うと思うぞリュウギョウ」
「何?」
「確かに過去ばかりを見つめる事は間違ってるかも知れないけど、過去に目的や目標を置いてるやつもいる。過去がゴールだってやつも見たことがある」
「·····················」
「なぁリュウギョウ」
「む?」
「過去の自分は他人だよ······。でも、だからって自分を傷つける存在じゃない。俺は思うんだ。どれだけ正しい事をしても、どれだけ間違った事をしても、俺はその時の自分を誇りに思う」
「辛くなった時にちょっと後ろを見ると過去の自分が今の俺を支えているような感じがするんだ。だからこそ俺は自分を恥とは思わない」
リュウギョウとレインボーは俺の言葉を最後まで聞いてくれた。
「······まぁ、そんな考え方もあるな······」
「だろ?」
「ありますね。同意します」
そう言い終わると、俺は——————
「リュウギョウ。今の内に言っておくぞ。ミラ·ライズは『生き埋め王』——————つまり生きているんだ。お前の仲間ならおそらく同族だろ?だったら海水と酸素をぶちまければ恐らく間に合うだろう」
「そうか······恩にきる」
「恩にきられても、まずはここを生きて出てからだ。ミラの相手は俺で良いんだな?」
「ああ······儂よりもお主の方が適任だろう」
「見えてきましたよ!!」
レインボーの声で二人は前の光に向かって突き進む。
そこには——————
「はぁ〜〜い!!リーゼリッタちゃんの殺戮ショーの始まりだよぉ〜!さぁ!両方とも死んで!!」
そう言うがごとく、リーゼリッタと名乗ったメイドは右腕を機関銃に変えて、轟音のうねりをあげて撃ってきた。
何百発だろう?恐らくその単位をぶちまけた後に銃撃が止まった。
「おぉ〜〜し!!殺ったぁああああ!!」
「姉さまお疲れ様です」
「馬鹿がちゃんと見ろ」
「ふふふ······久し振りに骨がたつ人間ですか。『ミラ』様が言うほどだ」
「何ィイイイイイ!!」
煙が晴れたその中では——————
「リュウギョウ······あんた見たところ弱ってるけど、闘えるの?」
「無論じゃ!!」
その何百発の銃弾を全てレインボーのオーラで止めたアキヒトとリュウギョウの姿があった。




