EX.77 「仮面の男」
俺たちはいつもとは違う。
相手は招待状を寄越して来たと言うことは、あちらが有利な戦場になっている事だ。
つまり俺たちはわざわざ敵の陣地に赴く、と言うわけだ。
ならばそれなりに準備は必要だろう。
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「やぁぁぁぁあああ!!こんにちは皆さん!!おいでませ我が城へ!!」
「ああ、呼んでもらってありがとうございます」
俺は少々嫌味を込めて言った。
俺たちの今の格好はかなり動き易い姿だ。そしてその上で俺とユウスケに関しては戦闘衣装である。
ユウスケに関しては何度か着るタイミングがあるのだが、俺のは特別製だ。
それに奴は別にドレスコードに関しては何一つ言ってこなかったので別に良い。
俺があの日から集めてきた情報を皆には伝えてあるので最大限の警戒はしてくれるだろう。
一応俺たちが行うのは食事中の情報収集だ。
わざわざ戦闘する訳ではない。犯罪の情報をたらふく集めて報告をするだけで良い。
何故、この『ミラ』がここまで犯罪まじりな行動を行っておいて捕まっていないのかと言うには、ここに行く少し前に親父に聞いておいたら珍しく困ったような口調で。
『見つからない······と言った方が良いだろう』
『見つからない······?』
『ああ、犯罪者に判決をつけるには最も重要な事は犯罪である証拠を見つけることだ。······だが、奴の城も別邸も何一つ見つからなかったんだ。だからこそお手上げして奴を捕まえられなかったんだ。この時代では完璧な証拠がなければ訴えられるからな』
とこのような意見があった。
事実犠牲者はヒトミを除いて死亡形跡があるため、確かに生きた証言が無い。そしてそのヒトミはその時の記憶が殆ど残っていないので証拠としてはかなり浅い。
つまるところ、ここは俺たちが体を張って頑張らないといけないんだ。
そして······俺たちはそのまま——————
敵の待つ所に足を踏み入れた。
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食事会はつつがなく進んでいった。
まずは俺かハルトの二人が毒が無いかなどの安全面を確保して、事前に決めた合図で残りの5人も食べだすようにしていた。
すると、『ミラ』と思われる仮面を着けた人物が空になった皿の前で指を組んでくちを開く。
「それにしてもありがとう皆さん。僕のこんな要望を聞いてくれて。セブン·ウォーリアーズこような有名パーティと共に食事をする事が出来るなんて」
爽やかさ、と彼を表現する者は多い。だが、俺はとっさに発動した『真実の目』からはどす黒い程の真っ黒い嘘が見えた。
俺はそれを相手に気づかれないように笑顔で。
「いやいやとんでもない。俺たちなんてつい最近作られたばかりのパーティですよ」
俺は他の皆には喋る事よりも観察する事を頼んだ。それはここに入った瞬間に別の存在の気配がしたからだ。
だからこそこの『ミラ』の相手は俺がする事にして、皆には他の対応をしてもらうようにした。嬉しい事に『ミラ』は俺ばかりが対応している事を特に嫌に思っていないらしく普通に対応してくれる。
今、この部屋にいるのは俺たち7人と『ミラ』、そして彼の使用人とも思えるような初老の男性が一人にメイド姿の女性が一人。カレンと吉田がメイド姿の女性に話し掛けて、俺以外の男性陣が初老の男性に話し掛けてある程度の隙を見せている。
「いやいやご謙遜なさらずに。『魔王』を一人でも倒して見せた貴方達はそこらの大業のヒーロー共とは格が違うのですよ」
「はぁ······」
俺は水の入ったグラスを揺らして『ミラ』のウザい言葉を聞いて反応に困るような態度をとる。
すると『ミラ』は表情の見えない状態でも分かるような笑みで。
「時にアキヒトさん」
「はい?」
「レオン·ハザァード。カグヤ·ハザァード。天草四郎時貞。サン·グランダ·ビスタ。快莉乃。滝壺の姫。イスカンダル。アーサー·ペンドラゴン。妲己。清姫。浅見光彦。レオナルド·ダ·ヴィンチ。竜王。宮田直樹。——————そして君。この名前を聞いてピンとくるかい?」
「······はい?」
有名な人物から全く知らない人物までよりどりみどりに並べられた名前に俺は疑問を掲げる。しかもその上で俺の名前まで入っているのだ。更に分からない。
そんな分からないと言わんばかりの俺の態度に『ミラ』はくすりと笑い。
「魔王を倒した人間だよ。そしてそれはほぼほぼ単体でだ。君も思ったことは無いかい?『味方が一人増えると、足手まといが一人増える』と」
そんな彼の言葉に俺は間髪入れずに断った。
「違うな」
「ほう、それは?」
「俺の仲間は足手まといでも何でもない仲間だよ。少なくともあんたの思ってる価値観とは全く違う」
そう言って立つ俺、すると『ミラ』は。
「おや、怒ったのかい?」
「あんたに怒ってもしょうが無いことぐらい知ってる。······ただのトイレですよ」
そう言って、使用人に開けてもらった扉に入っていく——————。
ん?使用人なんていたっけ?
「アキ······!!」
カレンが危険を唱える前に目の前の扉が閉じ、俺は黒い液体に襲われていく。
「くそっ······!!」
俺は絡みついてくる液体を何度も払いながら前に進もうとする。
あと一歩。あと一歩と歩を進めていく体。しかし扉の方が離れていくような感じさえしていく。
まだだ······皆を······皆が······皆が危ない······!
絡みつく液体は数を増し、俺の腕は見えなくなっていく。
······そして、遂には全身に包んでいって——————。
「う······ぁ···ぁ」
まるで瞬間性の接着剤のように固まっていく液体が俺の動きを制限していって、そのまま——————
俺は深い沼に落ちていった。
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「······ぷはっ!!」
荒い呼吸と共に目覚めたその所は異臭漂う牢屋であった。
俺の手には手錠がかけられていて、薄暗いこの場所ではどのようになっているのか分からない。
「レインボー······レインボー!!」
必死に彼女の名前を呼ぶが彼女は返事をしない、少なくとも彼女はあの部屋を出るまでは居たはずなのに······。
「······くそっ······」
俺は落胆と屈辱のため息を吐いた。
警戒はしていた筈······いつの間にアイツのペースに載せられたんだ?······それよりもあの顔全体を覆う仮面をした人物は何時現れたんだ······?
やはりここで心配になるのは仲間とレインボーの安否だが······。
「ここは······何処だ······?」
「ここはあの憎き人間の城の地下室じゃ」
「!?」
俺のひょっとした言葉に応える者がいた事に俺は驚き隠せなく、それでいて警戒心も抑えることが出来なかった。
俺はジッと目を薄めると、そこにはとある輪郭が映し出されていた。
かなり大きな体だな······でも、どうしてここに。
すると蚊に刺された程度の動きが見え、それでいて先程の抑えめの声が聞こえた。
「お前さんもミラ·ライズと言う男に復讐をするつもりなら、儂も手伝わせてくれ」
「あんたが誰か分からないし、そもそもどうやってあんたを信じろと?」
「儂は······あの人間に仲間を殺された······!!」
「!?······あんたの名前は······?」
もしも手伝うと言うのならここで嘘をつくわけにはいけないだろう、と言う勝手な解釈と、確実な目での嘘探知には何一つ反応しなかった所から、少しは信じようと思った。
「儂の名は······」
「儂の名は『リュウギョウ』魚人国の使いじゃ······」




