EX.76 「生存者の鍛冶屋」
俺の貞操が奪われかけたとある朝が終わり、結局物語は続いていくらしく、それでも話は少し飛んでいて——————
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昼
いつものハルトの料理を食べ終え、レインボーの髪の毛引っ張る攻撃や噛みつき攻撃を受けながら一息ついていると、聞き覚えあるいつものインターホンの音が聞こえてきた。
ハルトは皿洗い、スズは食後混乱した顔で高速で自分の部屋に逃げて行った。
と言うことは俺が出ないとだめか······。
俺はよっこいしょと立ち上がり玄関に向かう。
まあ、今更言うが相手は既に見当はついている。
「よう、アスナ」
「こんにちは、アキトくん」
俺がそう迎えたのは、俺の相棒アスナだ。
すると—————————
「お久しぶりですアキヒト様」
彼女の後ろにはスーツ姿の金髪を後ろに括りつけた女性がいた。
彼女はあの『焦燥の塔』の戦いの際、アスナの手によって助けられた女性だ。
彼女の名前は金沢 瞳。彼女は世界的大災害の最中産み落とされた忌子である。忌子であるからに捨てられた少女である。
その後、『ミラ』と言う人間によって捕まえられ、ある程度薬物投与に耐えられる身体に改造され、そのまま『失敗の科学者』レオナルド·アグナ·マルに実験対象——————モルモットとして放り投げられただ死を待つだけだった。
一応俺だけはレオナルド·アグナ·マルによって殺された存在、人種を調べると。裏切り者によって殺された、いや殺されかけた人間。その大犯罪者。忌子。イカれた、壊れた人間。などと人類にとって人間にとって邪魔となりうる存在が主にそのように、あのように消されているが、俺から言わせると、そういう人間程、生かして、ただの日常に戻してやったほうがあまりにも良い。
たとえそれが······人類に否定されても、必ず平和にしてみせる。
生きるために。
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俺は二人をリビングに招いて、お茶を出した。
二人のお茶を飲む時間によって少々の間が存在し、俺は二人の言葉を待つ。
すると、トンと置いたマグカップを両手に包んでアスナは話す。
「ヒトミちゃんって結構力が強くて、ボディーガードみたいにいてくれるんだけど。やっぱり周りの目が厳しくて······だから、あの子に預けたいんだけど、取り敢えず相談したくて」
「何であの子って伏せたのかよく分からないけど、まあ良いんじゃないかな?あそこは結構犯罪者に狙われやすいし」
「アキヒト様もアスナさんも伏せてるじゃないですか······」
そんな俺たちの会話に突っ込みを入れる女性一名。
俺たちは軽い自虐的苦笑いをして誤魔化そうとして、そのまま「さあ、行こうか」と三人とも立ち上がる。
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俺たちが今から向かうのは、とある鍛冶師の所だ。
彼女の名前は柊 檸檬。俺とアスナと同じ『聖戦戦争』の生き残りの人間だ。
彼女は『レート』と聖戦戦争では名乗り、今と同じ鍛冶職人で俺たち前線組を支えていた。
俺と彼女との出会いは第34層『光雫の丘』での戦闘であった。
彼女の望む素材を集めると彼女自身が、すぐに作ってくれると言う約束で、少し程問題はあったもののなんとかこなした後、武器の手入れなど度々出会うこととなった。それは今でもなんだが、俺のムーンフェアリーには結構な文句を食らっている。
暫くすると、とあるショッピングモールに点在しているにしては無愛想な店が見えてきた。
どうやら電話は既に通っていたらしく、店主であるレートが仁王立ちで待ち構えていた。
俺は片手を挙げて。
「よう、久し振りだなレート」
「レート。今日は我儘聞いてもらってごめんね」
「初めまして······レート······さん?」
「いいよいいよ!!うちだってそろそろ本格的に雇った方が良かったかな?って思ってたし」
「だったら嬉しいんだけど······」
俺はいつもと変わらず、アスナはいつもよりも謙遜的に、そしてヒトミはレートと言う言葉に少し疑問を覚えたような態度をとっていた。
彼女曰く、「今日は定休日やから幾らでも時間かけてもええで!!」らしいので、アスナから諸々の話を受けた後、レートは少しうねる。
「忌子ねぇ······まあ、うちにとっては何らかわりないけど、うちでも客連中でもなくこの子自身が心痛めちゃうんちゃう?」
「それに関しては大丈夫です。アスナさんによってある程度は克服したつもりですから」
そんなヒトミの言葉を聞くと、レートは「ほ〜」と呟いて。
「だけど、確かにそれはちょっと使えるかもなぁ······まぁ流石に最初に関しては客引きや会計じゃなくて中でうちの鍛冶の手伝いでもやってもらおうかな?」
するとアスナが目をキラキラさせて。
「ありがとう!!流石レートはそう言ってくれると思ってた!」
「ははははは〜それ褒め言葉なん?」
「褒め言葉だよ〜」
俺は、絶対褒め言葉じゃねぇな、とは思いつつ、ある程度賛同する。
そう言う緊迫的な会議と言うか話合いが終わり、ある程度の雑談とヒトミへの経営説明をしていると、突然レートは神妙な顔で。
「自分。別にヒトミちゃんをここに連れてくためだけにここに来たわけじゃないやろ?」
そんな事を言い出した。
俺は待ってましたと言わんばかりにニヤリ顔を見せて、レートにある質問する。
「ちょっと聞きたい事があってな」
「ん?何でも言ってもみぃ?うちは殆ど何でも売ってある鍛冶屋やで」
「エネルギー吸収素材の銃弾とかないか?」
俺がそんな事を言うとレートは驚いたと言わんばかりに口をあんぐり開けて。
「はぁ?自分剣使いで飛び道具苦手って言ってたやん。今更練習しようとしてんのか?」
「いや違う違う、俺のパーティメンバーに頼まれてな。あるかどうか気になったんだ」
するとなるほどと納得がいったように手のひらをポンと叩いて。
「なるほどな。確か自分達のパーティは『セブン·ウォーリアーズ』やったっけな?」
「そうそうアキトくんが入れてくれないパーティだよ」
「ゔっ······」
そう言われて、俺は喉元がキュッとなる。
わざとやっている訳ではないが、やっぱりそれなりに罪悪感は付きまとうんだなと俺は思う。
だから、俺は言い訳をせずにジト目で見てくるアスナの視線に耐え抜いてレートが今掘り出し中の最中を見届ける他ない。
すると古そうなケースを持って、レートはこちらに戻ってきた。
ドンと音を鳴らして、ケースを置くとそのまま開ける作業を行った。
「コレはたった数量限定でうちも慌てて買ったものさ。これはねかの伝説の狙撃手『ハートロード·ビスタ』の愛用銃『ルートエルメロイ』の弾だ。一応うちの鑑定したところアキトの能力なら時間はかかるとはいえ、量産は出来ると思うで」
「そうか、助か······った?」
手を伸ばした俺からケースを持って届かない所まで逃げるレート。
「お代、貰ってへんで」
「はいはい、交渉な」
結構な額をぶんどられた。
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俺は絶対に落とすものかとケースを持って歩く。さながらその姿はかなりの不審者であっただろう。
すると隣のアスナが、
「急いで買う必要なんか無かったんじゃない?どうしたの?」
と疑問をぶつけた。
俺は懐からとあるカードを取り出すとアスナに渡す。
「招待状だよ。しかも例のミラからのな」
「アキトくん······だめだよ、乗り込む気なんでしょ!?」
流石に伊達に何度も死線を共にした仲では無い彼女は俺の心を読み取ったらしい。
そしてそれは俺を心配した言葉——————でも、
「たとえアスナ······君が止めても俺は行くよ。アイツは······ミラは止めなきゃならない」
···························。
···························。
この無言の間にアスナは何を考えたのかは分からない。どれだけ辛い気持ちなのか、せいせいいているのかもしれない。
するとアスナはゆっくりと俺の両目を見て。
「絶対に生きて帰ってきてね」
···························。
そんな言葉に胸が痛くキュッとする。
だけど······ここで変えるわけにはいかない。ヒトミのような犠牲者を出してはいけない。
俺は···············
「おう」
と、優しく呟いた。
アスナは穏やかに笑った。
すると強い風が吹き、若葉が舞う。




