アキバトEX 「笑顔の先駆者」
遅くなってすみません!!
始めての番外編でいつもよりも遅くなってしまいました。
いつもよりも大増で書きましたので楽しんでください。
昔から、何かと機械を作るのが好きだった。
暇さえあればロボットについての本を読み漁り、お小遣いを貰えれば機械のパーツを買い込み、それでも足りなかった時はスクラップ場のゴミから使える物を取り漁った。
それが岡田 智樹。13歳の事だった。
ボルトやナットなど、その他極まりない程に取り漁り、小3の頃に作り上げた製造所に丸ごと押し込んで次のロボットの設計図を書き上げた。
その時の自分に「将来の夢は何ですか?」と聞かれたならば、俺は間違いなく「一級ロボット士」と喜々として言うだろう。と言うか言った。
その時の先生の顔は微妙だったけれど、それでも止めることはしなかった。
見捨てられた訳ではない、自分の違う領域に自分がいたせいで、先生自身が離れていったのだろう。
正直に話させて貰うとその時の自分は完全に天狗になっていた。
大人の人でさえ辿り着かなかった領域に簡単に登れたことに——————。
結果、友達もいなくなった。
実際他人から見ればこんな姿は『変態』としか言いようがないだろう。
一つの事に熱中するのは良いけれど、熱中しすぎると必ず後悔する。それがあの時代の俺が学んだ事だった。
話を戻すとしよう。
今書いている設計図には、新型のゲーム機の自分オリジナルバージョンだ。
この一週間後には珍しく遊びの予定が入っており、その人達の為に今自分は作ろうとしているのだ。
本来ならば記念すべき第50体目のロボットを作る予定なのだがそんなの後回しでもいい、さっさと作って皆と一緒に遊ぶんだ。
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「あ〜お前。もう帰っていいから。あっコレありがとう。つまんなかったよ」
結論はこれだった。
一週間かけて作ったゲーム機はすぐさま奪われて、そのまま相手の所有物になってしまった。
別に奪われた事が辛かった訳ではない。本当に辛かった事はそのゲームをなんの未練もなくすぐさま売られた事だった。
あの日、俺は家族の顔を見ながらご飯を食べた覚えはない。
興味からなくせば良かったんだ。なら、最初から辛くなることなんてない。
ロボットは裏切らない。だって自分が作ったのだから。
自分らしく、自分なりに、自分が望むように作れるから——————。
あれから更に一週間後。どうやら聖戦戦争の死者が発表された。
俺は諸々の事情の為にヒーロー認定試験に参加して、そこで合格し、ヒーローになっていたが、この戦争には参加、もしくは巻き込まれていなかった。
何故死者のみかと疑問になったが、その答えはそこで死んだら肉体だけ送り届けられるらしい。
魂はもちろん抜けてある為、もう二度と生き返る事は無いらしいが。
聖戦戦争に行ったらしいおかしな髪をしたお隣さんはどうやら死んでなかったらしく、その家の前を通ると嬉し涙を女のコが流していた。
愛されてるんだな、と思った。
自分が愛されていないのは世間から。そんなの自分勝手な言い分だが、愛されているそいつがにくかった。
だからって現状が変わるわけでもなく、ただ変わらない日常が続くだけ。
あれから更に一ヶ月後。俺は記念すべき第50体目を完成させた。
今まで作った物とは違って、コレは完全に運搬、移動用であった。
中にはいつ拾ったのか覚えていない冷蔵庫を収入して、自分に便利な代物を作った。
結構な時間が経っていたので、もう夜になっているらしくそろそろお風呂に入らないと両親にキレられると思うので、そそくさと製造所から繋がっている家のドアを開けようとした所。
「おっ、おい智樹!!お客さんだぞ!!」
血相を変えて飛び出た父親の顔が目に飛び出した。
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「えー。つまりですね。そこのお子様······智樹くんの作ったロボット達を全て買いたいと思っているのですが······」
「えっと······何故そんな事を?と言うか俺よりも絶対に良いもの位ありますよね」
彼が俺のロボットが必要と言ったのは、対軍事装置の基本プログラムが似ているから、らしい。
始めて見たときはおかしなものだと思ったが、徐々にその魅力に魅せられたらしい。
「あっ、もちろん軍事提供なんてしませんよ!!僕だって日本が大事ですし、そもそも君の作ったものはそうする為の物ではない······そうでしょ?」
口のよく回る男だった。
微妙に肩に乗っかった灰色の髪をブンブン振って、男は熱弁を行う。
「そもそもですね······。僕はこの機械達をコレクションとして次代に遺しておきたいんですよ!!こんな才能を、こんな技術をたかが一つの家に置いていくのは勿体ない!!なので僕はここらにあるロボットをコレで買いたいのですが。どうでしょう?」
そう言って男は3の指を出した。正直俺は3万程度かな、と思ったが、後に男が3億です、と訂正して両幅にいた両親が転げ落ちた。
実際自分はそんなお金は欲しくなくて、タダで贈ろうかと思ったのだが、男が強く言ってその半分の1.5億貰った。
そんなお金を貰ったらいつもの俺だったらすぐにパーツショップに買い占めに行くところだったが、あまりにもいい話だったので未だに手につけていない。
恐らく怖かったのだろうと思う。
そして俺は思いれのある初号機(犬型ロボット)とさっき作ったばかりの第50体目を残して、全てその男に売ると言う形になった。
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あれから更に三ヶ月経ち。聖戦戦争が35層目に達したと言うメッセージが轟き、その大音量のメッセージよりも更に大音量で人々の活気の声が飛び回った。
今回のメッセージで分かったことは、聖戦戦争の舞台『アルビナ星』には計99枚の壁があるらしく、その壁を特殊な方法で壊していくらしい。
あの星では、近未来の象徴とも言える能力が使えずなんと2ヶ月も硬直状態になったらしい。
ようやく動き出し、この時代になって34枚の壁が破壊されている事から凄い事だろう。
この聖戦戦争が始まったのは2014年10月25日。
現在は2015年7月7日。七夕の日。どうやらこの聖戦戦争を起こした張本人は人々の願いをこの日に叶えてくれたらしい。
そんな騒動を耳にもせず、俺は50体目の森での試運転を行っていた。
鼻歌を混じらせながら、でこぼことした悪路を難なく通っていく最中、何かの人影が見えた。
「大丈夫ですか!?」
俺は慌てて飛び出すと、その岩にもたれかかっていた大男はか細い声でこう言った。
「み······水······」
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俺はその声を聞いた途端に慌てて戻ると1リットルの水を冷蔵庫から取り出した。
そしてそのまま男の口に突っ込むと、まるで掃除機の様に男は水を吸い込んでいった。
恐ろしい程のスピードでなくなっていった水を見て、俺は少々慄きながらも少し安心した。
あれから数分経ってその間に空になったペットボトルを50号の燃料に変えて、男の復活を待つ。
男は1リットルの水を飲み干した後、仮死状態になったように眠っていった。
もしかしたら自分がやってしまったのかと思い、俺は目覚めるまで座って待っていた。
男が目覚めるのにはそこからものの数分もかからなかった。
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「くっ、あああああああああ!!······ん?お前誰だ?」
「たった数分前の事を忘れているだと!?」
俺は男の言動に驚愕を覚えた。
後に俺は男が目覚める数分前の出来事を伝えると男はニカッと笑って。
「ありがとうよ少年!!俺の名前は新居浜 太陽!!熱く輝く太陽のような笑顔の持ち主だぜ!」
「は?」
俺がそう言うのは仕方ないだろう、突然目覚めた男性が突然自己紹介して突然アピールポイントを言い出したんだ。混乱しない方がおかしいだろう。
すると男は——————太陽さんは俺の身体をバンバンと叩き笑う。
「いやいや少年よ!!笑った方がいいぜ!!何事も笑顔から始まるんだ!!」
「面白くもないのに笑えないですよ」
「くっくっく······笑えないか、そうかそうか。だったらこしょばしてやる!!」
「ちょっ······おい!!止めろ!!」
突然脇をこしょばしにかかる太陽さんに俺は抵抗して、うねうね動く彼の指からようやく回避した。
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森の中、移動中。
険しい悪路の中、俺は50号に乗って安定したスピードで進んであるはずなのに、太陽さんは歩きなのに同等のスピードで並走していた。
トットットッ······とリズミカルに走る彼の姿に先程までの水吸引機だったような姿は残っていない。
「それ便利そうだなぁ······作ったのか?」
「まあ······作ったけど」
「作り方とかあるのか?例えばラクラク制作パックみたいなものが」
「ないよ!!そもそもラクラク制作パックなんてものがあっても材料が間に合わないよ!!」
すると彼は少し不貞腐れたような顔で、
「ちぇっ、俺でも作れたら良かったのにな······」
「まずはぬいぐるみから始めてください」
「そこは『まあ、小さくて良いなら作ってあげますよ』って言うところだろうが!!」
「人のセリフを勝手に捏造してキレるな!!」
彼との初対面はとても悪くて、正直広い所に出てさっさと別れたかった。
「······まあ、俺にはロボットにそこまでいい思い出なんて無いけどな······」
え······なんで?と聞き返す前に。地面が凹み二人の身体は奈落に落ちていった。
@@@@@
「··················ぷふぁ!!」
助かった事に地面は水で満たされていた——————だが、
あっ······溢れてきている!?
少し空いた亀裂から膨大な水が吹き出してきていた。
まずい!!量が······多すぎ、る······。
力が抜けかけた自分の身体を誰かが抱きかかえ、泳いでいった。
俺はその最中で見た。水の底に沈んでいた50号が。
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あれから10秒足らずで太陽さんは空気の充満している空間に辿り着いた。
だけど俺は——————
「おい!何また戻ろうとしてんだ!!」
俺は軋む身体を必死に動かして、四つん這いになりながらもあの場所に戻ろうとしていた。
「50号が······50号がまだあそこにあるんだよ!!戻らなくちゃ!!」
「くそ!!お前は気づいてねぇかもしれねぇけど、お前頭から落ちてるんだからな!!」
そう毒づくと俺を払いのけ、既にずぶ濡れの服を脱ぎだした。
何するんだろう?と思っていたが、太陽さんは俺のそんな目線に気付いたらしく。
「あのロボットを助けんだろ!!俺もあのロボットには世話になったからな!!」
彼のぶっきらぼうな言葉に、俺は凄く安心していたのかも知れない。だから——————
「ありがとう!!」
そう、素直に言えたんだ。
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全く······あいつの行動には驚かされるな······。
太陽は少年のあの言動と行動に呆れは全く生まれず、寧ろ感心さえいていた。
あれ程ぶっきらぼうに対応したのは少しばかりの照れだった。
太陽は少年のあのロボットを思い出しながら、大きく息を吸った。
その量は、成人男性が一時間必要な酸素であった。その酸素を全て肺に送るのではなく、酸素濃度を凝縮し、水中での動きに対応出来るようにした。
筋肉に、血液に全て回し、彼は水中に飛び込んだ。
その水中はやはりと言っていいものか、光が全くなく真っ暗であった。
だから太陽は視神経近くの血液に大量の酸素を行き渡らせる様にして、微量な光源を探す。
最後に見たときは、それなりにライトが動いていたはず······。
辺りを見渡しながら動いている中、目よりも耳の方が反応した。
少しばかりの稼働音か、モーター音かどちらかは分からなかったが、水流の音とは思えないそんな音がした。
その音がした方向を向いて見ると、そこには青い円柱型のロボットがゆったりと佇んでいた。
どうやら水処理はしているらしく、ロボットは弱々しいが動いていた。
よし!と太陽は確信してそのロボットの近くまで泳いでいった。
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太陽さん······遅いな······。
事実、太陽が目に見える小さな穴に入っていって、既に20分が経っていた。
常人ならば死んでもおかしくない時間。
このままじゃ······もしかしたら······。
そう思い、能力『銃士』の特殊銃『スティンガー·アルファ』を召喚し、握りしめる。
自分が行くしかない、と思った矢先。ゴッ、という謎の音が聞こえてきた。
「············は?」
そう言うしかないじゃない。
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太陽は入口の小さい穴の少し上を頭突きで音を鳴らしていた。
ロボットを持ち運ぶのは楽に行えたのだが、問題はそのロボットも共にあの穴に入ることだ。
智樹を連れたときは片方を先に押し込んで自分が入ってギリギリだったので、このロボットは先程の方法が使えない。
つまり入れないということだ。
一度戻ってこの道を大きく広げるか······?いや、ここでもう一度ロボットを下ろすと見つからない可能性だってある。
一度潜ったときに見えたのは深淵の底、そもそも見えない真っ暗な闇。ことわざらしく言えば『一寸先は闇』みたいなものだった。
さて、どうするべきか······と悩みこんで、気づいてくれるのを望んで今ずっと頭突きをしている。
頼むぞ······智樹!!
そう願った矢先にドガンと発砲音が鳴って、目の前の岩が破壊された。
よし!と思い、強く飛び出した。
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「ぶふぁ!!」
右手で己の身体とロボットの機体を全て持ち上げ空気の充満する空間に辿り着いた。
そして自分の目の前にいたのは、泣きそうな顔の智樹であった。
太陽はニヒッと笑って、彼の頭に手を置く。
「おいおい何泣きそうになってんだよ」
そう言って茶化すと智樹はすぐに涙を吹いて。
「なっ、泣いてないし!!」
と言い訳して誤魔化した。
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あれから少し経って、智樹がロボットの修理をしている最中、とある疑問をぶつけてきた。
「あの······コレ、めちゃくちゃ重い筈なのにどうやって持ち上げたの?」
そんな疑問に俺はキラリんと歯を見せて。
「笑顔があったからな!!」
と言い切った。
すると智樹は心底どうでもいい顔を見せて。
「いや······そう言うのじゃなくて。もっと鍛え方とかないの?」
「笑顔があれば何でもできるからな!!」
すると智樹は「何言ってんだこいつ?」みたいな顔を見せて。
「はぁ······もういいや」
そう言って、諦められた。
俺はぶぅ〜と不機嫌な顔をして。
「お〜ま〜え〜な〜。俺に何か質問ないのかぁ〜?今ならどんな質問も答える特別出血大サービスするぞ〜?」
そう言うと、智樹はおもむろにに動きを止めた。
俺はしてやったり、と思い。智樹の行動を待った。
「だったら少し前の事の意味を教えてよ」
「ん?どういうことだ?」
「だから······『俺にはロボットにいい思い出なんて無いけどな』どう言う事なんだよ」
「······なんにもねぇよ」
「嘘だ」
「どうしてそれを言い切れる?」
「俺が言った時に、少しばかりの心臓の動きにブレがあった」
そう言って、眼鏡を外して俺に投げつけてきた。
俺は危うく受け止め、その眼鏡を見ると。
「ん?」
レンズが真っ黒であった。
いや、正しく言うと『レンズの内側だけが暗かった』だ。
決して見えない訳じゃないが、日常生活を送るにはあまりにも使えない。
智樹に概要を聞こうと思い、そちらの方に顔を向けると——————
「む······オッドアイか」
片目は普通に黒で、もう片目はエメラルドグリーンの色をしていた。
「オッドアイと言うか······片目は俺の能力の『銃士』の稀な特殊能力······いや、呪いかな?『権威探査機』って言って、見るとまるでデータみたいに人を見ることが出来るんだ」
「ほ〜それでこの拘束具か」
よく見ると片方だけ度の無い普通のレンズだった。
今度は俺が雑に眼鏡を放り投げる番で、そう受け取った智樹は先程と変わらない顔つきで、
「俺が言ったんだから、太陽さんも言ってよ」
俺はそんな言葉に少し言いづらかったが、覚悟を決めて言う。
「昔な······あるヒーローに出会ったんだよ」
「俺は村育ちでその時ちょうど俺たちにとって都会の街に出かけたときに巻き込まれたんだ」
「その人は自分よりも強い相手に全く臆せず、ましてや死ぬかも知れないと思ってしまった俺たちの前で笑顔で『大丈夫だ』って言ったんだ」
「実際あの人はそいつに勝てて、寧ろ俺は何で勝てたんだろうと思ったんだ」
「そして俺は聞いた『どうしてそんな力を手に入れたんですか』っな······答えは簡単だったよ」
『笑ってるからな』
「始めはお前と同じで「何言ってんだこいつ」みたいな感じだったよ······だけど、意味を考えると意外にスッキリしてさ」
「?」
智樹は俺がいい始めてから、始めて声らしい言葉を言った。
「腹抱えて笑うとさ······下見るだろ?そうするとさ、地面がちゃんとそこにあって俺はちゃんと道を進めていることが分かって安心するんだ。ちょっとしたことで笑うと楽しいしな。『俺がやってる事は間違いじゃないんだ』って思って更に頑張れる。なあ智樹?強い奴が笑うんじゃなくて笑うために強くなるんだよ」
そしてな······と俺は言って、
「俺は上京して、無能力者ながらも2ヶ月必死に頑張ってヒーローの資格を頂いて、そこから働いてようやく暇が来たときに村に帰ったその時に事件が起きたんだ」
ピクッと智樹が反応した。俺は構わず続けて。
「48体のロボット共が俺たちの村を襲いかかってきた」
「俺はもちろん殲滅の為に動いた······だが、老若男女誰でも問わずアイツらは殺し尽くした」
「俺がロボット共を殲滅した頃には俺の足元には皆の死体があった。母親も父親も叔母も叔父も村の皆も跡形もなく死んでいた。俺は絶望したよ、そして俺とあの人とは全く違うって思ったよ」
「俺は間に合わなかったんだ。その全てに」
そう言い終わるが早いか、智樹は頭を全力で下げていた。
@@@@@
「ごめんなさい!!」
そう俺が言って、太陽さんは珍しくテンパっていた。
「どうしたんだ!?」
「俺が!」
よくよく考えると、涙が溢れて喉がカラつき、言葉には皺がついていた。
「俺があの時、よく分からなかった人に売るなんてしなかったらそんな事にならなかったのに!!俺が······俺が犯人なんです······」
そう言って懺悔する俺の肩を太陽さんは優しく叩いて。
「お前は違うだろ?」
と言った。
何で······俺が犯人なんだろう?
「あの時お前は必死になってロボットを助けようとした······そんな奴がロボットを使って人を殺すわけ無いだろ?」
そう言って笑う太陽さんはスッキリとした笑顔をしていた。
「あ······あぅ」
俺は安堵が溢れてきたのか声が出なくなっていた。
「それに——————」
太陽さんはスクッと立ち上がって空間の奥の洞窟らしきところに目をやって。
「黙ってないでそろそろ出てきたらどうなんだ?」
そう言われた時にあまりにも当たり前の様にあまりにもゆったりと歩いて姿を見せた。
そこには肩に少し髪を乗せた若い男性がそこにいた。
@@@@@
「何言ってんだよ太陽。俺はそこにいるガキに村の復讐する為に来ていたんだ」
「嘘ついてんじゃねぇ」
その声にはあまりにも怒気と闘気が漲っており、恐ろしく怖かった。
すると男はその怒りのオーラに押し負けたのか、顔がダラリと溶けた。
そこから、あの時出会った男が現れた。
「あの時、あまりにもタイミングが良かったんだよ燻。ちょうど俺が帰ってきて、ちょうどお前が出ていったときなんかな」
そう言って、一緒に戦おうとした俺の身体をヒョイと持ち上げて、50号に詰め込んだ。
「邪魔だったんだろ?俺たちの事が」
すると、まだ美男子と呼べた顔が歪み、狂気に満ちた顔を見せた。
「アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!そうだよ、そうだなぁ!!邪魔だったんだよお前達の事が!!底辺の癖に俺に優しくしやがって反吐が出そうだった!!だから殺したんだ!!弱い奴は強い奴に殺される!!当たり前だろ!?——————ガベッ!!」
最後の声は太陽さんの投げた石が男の眉間にちょうど当たった時の声だ。
太陽さんは男から目をそらし、俺の方を見た。
「お前は早くいけ!!アイツがあそこから出てきたということはあっちに出口がある筈だ」
「嫌だ!!太陽さんも一緒に······!!」
「ごめんな······俺はアイツを倒さなけりゃいけねぇ」
「でも······だって」
「でも、だってじゃないんだ。ここは俺に任せてくりゃあ万々歳だ。お前は出たら俺を絶対に待たずに街に逃げろ。俺たちはここでお別れだ」
「······また、会えるよね······?」
「お前が成長したらな」
そして太陽さんはガシッと俺の肩を掴んで。
「笑え······笑っていたら必ずお前の信頼出来る······お前を信頼してくれる、そんな仲間が······友達が現れるから······笑え」
太陽さんはニコッと笑って見せた。
「こうやって笑うんだぞ」
「笑い方ぐらい分かるってば」
「よし!じゃあ······行け!!」
太陽さんは俺の背中を叩いて、俺は前に進んだ。
もう後ろを見ることは許されない。だけど······とても悲しくてとても虚しくて——————
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あれからどれくらい立っただろう、そこまで経ってないかもしれない。
俺は—————————
「外だ·········」
外の光を浴びていた。
すると俺は口を大きく開けて、涙を雪崩の様に流して泣いた。
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「随分簡単に離してくれたな······」
すると燻は地面からうねるような触手でゆったりと立ち上がった。
「あのガキはもういいよ······後で殺すから。まずはお前だ!!太陽!!」
燻の能力は『変形』有機物でも無機物だろうが何でも自らの一部の様に操る能力。
対して俺は無能力者。
だが、負けない。負けるわけがない。
俺は笑って。
「来い!!燻!!」
双方が同時に飛び出した。
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互いに大量に血を流し、そして倒れたのは燻の方であった。
「くそ······無能力者の癖に俺に勝つなんて······」
「お前の敗因はその自己満足な自信だ。俺はそんな奴に負けるわけがねぇ」
すると燻は笑って。
「だったらこういうのはどうだい?」
すると壁や天井に亀裂が入り、崩れ落ちる。
太陽は逃げるも立ち向かう事もせず、ただ立ち尽くした。
そして、思った。
そして、願った。
智樹······きっとお前の将来どでかい壁にぶつかるだろう······だけど心配すんな、笑ったらなんとかなる。······その時には、きっと······絶対に会おうぜ······
瓦礫に埋もれるその瞬間。彼の顔に笑みが見えた。
@@@@@
そこには、人一人見えず瓦礫の山が出来ていた。
その場所では薄汚れたロボットと泣き叫ぶ少年の影が見えた。
そして時代は巡っていく——————
@@@@@
2年後。
俺はなんとなく外に出るために、靴に足を入れようとした時に慌てて現れた母親が焦って言った。
「何処に行くつもり!?」
「ちょっとした丘だよ······それにちゃんと帰ってくるって」
「でも······ずっと前あんな事があったから······」
「大丈夫だよ。行ってきます」
そう言ってドアを閉める前、俺は親の辛そうな顔を見た。
あの日から親は結構な過保護の様なものになり、場所を言わないと行かしてくれない時がある。
俺は丘に辿り着いた。
そこには頂上にある二本の木にハンモックを括りつけた簡素なものだ。
俺は寝転んで、ゆったりと風を感じようとしていたとき。
「おい」
まさかのそいつはハンモックを傾けるという蛮行に及んでいた。
声を聞いた時に既に犯人は分かっているのだが、一応とのことで見るがやはり犯人は変わらなかった。
「なんだよアキヒト」
そこには中性よりも女のコ寄りの顔をした少年がいた。目立つ三色の髪が凄い気になる奴だ。
するとそいつはポケットから俺の作ったゲーム機とそれと同時に作ったカセットを取り出して。
「この前作ってくれたゲームなんだけどさ······面白かったからまた作ってくれよ」
俺にとってその言葉は嬉しくもあり、辛くもあった。近づき過ぎたら、離れた時が辛いと勝手に思っているからだ。
「分かった。じゃあ、作れたら送るよ」
「いや一緒に遊ぼうぜ」
『お前、もう良いから帰ってもいいぞ』
あの言葉とは全くもって真逆の優しい言葉に俺は一瞬泣きそうになりながらも俺は「うん」という。
「って言うか今から遊ぶぞ!」
「え!?」
「今度こそあのドラゴンを倒すんだ!!30分後な!!絶対来いよ!!ユウスケも山本も呼ぶから!!」
「おっ、おう······」
「じゃっ、またな!!」
そう言って駆けて行く後ろ姿——————それはなんとなくあの人に似ていて。
太陽さん······俺、笑えてるかもしれない······。
岡田智樹は無限に広がる大空に光輝く太陽を見て、そう思った。
すると、いつもと同じ筈の太陽の明るさがいつもよりも明るく感じる。
彼の物語はようやく始まったばかり——————




