EX.73 「レンアイサクセン」
「さて、解ってるわね。カレン」
「うん。解ってるよ、ゆ〜ちゃん」
二人はまるで悪者風に笑う。
その起源は二日前。アキヒトの母、ケイコにアキヒトの好み、と言うか、それに近い物を教えてもらった。
それから二人はもちろんカレンをベースに練習しだした。
本番は今日の勉強会。
そう、その全ては——————カレンがアキヒトと言う無双の壁を愛情と言う名の乳白液で溶かし、完全に惚れさせるため!!
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ピンポ〜んと言うインターホンのチャイムが聞こえ、二人の気は引き締まる。
画面を見て、中途半端に見切れているアキヒトの姿を確認し、ドアを開ける。
「よう、おはよ〜」
·····················ん?
二人は目を柔く丸くして、目の前の現象に疑問符を上げていた。
今の彼の現象は目の下にパンダの様な隈を残して、表情もどちらかと言うといつものアキヒトの表情違ってほんわかしていた。
と言うか気力が残っていない、と言ったほうが良いだろうと思える様な風貌であった。
時よりハハ、ハハと何も面白く無いのに笑っている所を見ると重症だ。
「あっ、アキヒトくん?何かあったの?」
「ん?いや、別に何も無いけど······まぁ、言うならばニ徹したぐらいかな?」
「寝なさいよ!!」
流石のユ〜ちゃんですらツッコミをする程度の状態だ。いや、誇張もボケも無しに。
いや、それともこれはチャンスか······?
「カレン······これはS作戦で行くわよ」
「······やっぱり?」
するとトテトテと足下を何かが歩いている音がした。
ん?と思って後ろ側を見ると、更にギョッ!!とくるような光景があった。
そこにはニ頭身の少年がいた。
目立つ所と言えば、気の抜けた様な上下同じ色の服とちょこんと情けない様に飛び出た三色髪······。
······えっ、これアキヒトくん?
今、彼の様子を私は何度も目を擦って確かめた。
隣を見ると、えっコレマジ?と言いたいようなゆ〜ちゃんの顔があった。
「どうしたの?さっさとしようよ」
「えっ、あっうん」
口調まで幼くなってる!?
私達は度々驚いて、結構神経が削れた。
それでも授業は分かりやすかった。
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ニ頭身のデフォルメアキヒトくんは授業を終わらした後、眠いと言わんばかりに頭をフラフラとしている。
ところでゆ〜ちゃんはコンビニに惣菜を買いに行っている、作ればいいのに。
さて、どうするか。と考えていると、アキヒトくんの様子が変わっいくことに気付いた。
うにゅにゅ、と気張って、姿がニ頭身デフォルメの姿から、最初の姿(目にパンダ隈バージョン)に変わっていた。
「······ん。お疲れ様カレン」
「アキヒトくんこそお疲れ······ちょっと寝たら?」
するとアキヒトくんは自虐的に笑って。
「ハハハ······昔は七徹しても大丈夫だったのに、ニ徹でこれとは······我ながら怠けたな······」
「······いや、これは心配するから本当に止めて」
「ごめん······」
私が少し強めに叱ると、アキヒトくんはしょぼんと縮まる。
かわいいと思って許したら駄目だ、もっと厳しくいかないと。
「アキヒトくんが倒れて誰かが心配する事を考えて」
「はい······」
するとアキヒトくんは少し上目遣いで、
「カレンは心配してくれるのか······?」
心配しますとも!!心配しすぎて血を吐くレベルで!!
「まっ、まあ心配するでしょ。私達のリーダーなんだから」
私がそう言うと、アキヒトくんはニコッとはにかんで、
「そっか、良かった」
と言った。
そんな淡白で短い言葉だったけど、心がキュンキュンしちゃう私はもう手遅れだろう。
「もう一度言うけど、ちょっと寝たら?」
「ん、そうだな······ちょっと横にならせて貰うよ」
「いや私の胸に」
「は?」
「だから私の胸に」
私はこんな事をしゃべっておいて緊張しなかった訳ではない。寧ろ痴女扱いされたら心が折れるところだった。
そもそも最初に用意した作戦、S(添い寝)作戦を完全にブッチして後でゆ〜ちゃんに謝ろうと思った。
うぅ······完全におかしな物を見る目で見てるよ······。
私が泣きそうになった時にポスッとちょっとした重みと少しばかりの芳しい匂いを感じた。
「あき······ひと······くん」
「ごめん······寝させて」
私はアキヒトくんの頭をギュッと包んで、彼の寝息が落ち着くまで撫で続けた。
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あれから少し経った後、ゆ〜ちゃんがセベンイレベンから帰ってきて、今の状況に驚いていた。
あれから更に時が経って、ようやく落ち着いたゆ〜ちゃんから質問されていた。
「全く······結局どういう事?」
「簡単だよ!!アキヒトくんは私の愛に陥落したんだよ!!」
「······いや、これは母の愛に似ているわよ」
「なぁ!?」
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あれから更に数時間経って目覚めたアキヒトくんは状況を見るに、直ぐに真っ赤になって私に謝り続けた。
それからちょっと経って。
「そ······それじゃあ、もう俺帰るから!!」
「いやいや、何言ってるの」
「はぁ!?」
「ご飯食べてないでしょ?もう七時半だよ?」
「いや、今から帰れば間に合うから!!」
「女の子の優しさは貰っておいたほうがいいよ」
「いやっ、でも······あっ、俺門限が!!」
「アキヒトくんは門限が無いってスズちゃんから聞いたけど?」
「うぐっ」
これで八方塞がりだ。追い詰めたぜ怪盗よ!!
すると、何度もうねって悩ませているアキヒトくん。そして、何か決心した様に。そして情けなく。
「い、家から許可を貰ったら······」
残念だったな!既にアキヒトくんの家には話してある!!
電話が終わった後、少し青くなったアキヒトくんを見て、耳元に。
「大丈夫だよ。ただ映画を見るだけだから」
そう安心させるように私は言った。
こうして私の後半戦が始まった。




