EX.72 「とある一日の出来事」
夢を見た——————
——————それはずっと昔の話。
ずっと忘れられない記憶の話。
頭の中で、ノイズがずっと聴こえる中。ほんの少しだけ、たった少ない会話が明瞭に聴こえてくる。
『見て!あっくん!!このペンダントはね、付けると元気になれるんだよ!!多分!!』
下手なセールスセリフと言うか、何か可笑しく元気な人だった。
彼女が言うには誰かからの貰い物で、俺に渡してくれと言われたらしい。そんなこんなで俺に渡ったのだが、俺はクリスマスプレゼントとして貰ったマフラーの方が気に入った。
そしてそれらを貰った俺はぎこちない言葉で、
『ありがとう······』
と言った。
そう言われてニヘラと笑った彼女は、白髪と言うか銀髪と言うようなきれいな髪をしていた。
俺はあれから稀を除いて、俺はペンダントを外さない様にしている。
そして彼女は——————
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「ん······くっ······?」
今、何かを見ていたような······?
朝、休日であの『焦燥の塔』から激戦と一人の人質を救出してから既に一週間以上が経っている。
俺は時計に聞くと9時を超えていて、のぼせた髪に手を伸ばそうとして、動かなかった。
——————ん?ちょっと待て。何かさっきから重りが······。
俺はスゥ〜と目を開けるとそこには——————
「おはようございますアキヒト♡あなたの愛しい愛しいレインボーですよ♡」
···························。
「てい!!」
「あ痛ぁ!!」
俺はレインボーの額にデコピンを喰らわせて、馬乗りになっていたレインボーから即座に退却した。
「酷いですよ!!最低です!!」
頭からぷしゅ〜と煙をたてながら抗議するレインボー。そんな彼女に対して俺はキランとニヤリ顔で。
「ふふふ······残念だったな。お前の男はそう言う人間なんだ」
と言った。
するとレインボーはほっぺたを真っ赤にして。
「そっ······そんな、まあ私はアキヒトの最高最大の妻にして、アキヒトにとっても私にとっても互いに互いを愛すべき存在である事も至極分かっていますし。それによる私達の幸福度も圧倒的に上位に——————」
「ごめんそこまで思ってない」
「世界最強のカップルなんですよ!!」
「パートナーじゃなくて!?」
俺は少女漫画に憧れた少女の様に目をキラッキラさせているレインボーに突っ込みを入れる。
するとレインボーは、
「ええ、カップルなんですよ!!最愛と言う言葉は私達の為にあると言っても過言じゃありません!!」
「いや過言だろ」
まるで熱と冷の重なり合い。つまり冷である俺の塩対応にレインボーはちょっと嫌気がさしたのか、強制手段をとった。
「とう」
「お兄ちゃあ〜ん!そろそろ起きないとハルに怒られるよぉ〜」
「おうありがとう妹よ。だがこの光景を見て君は何も思わないのかな?」
「毎朝毎朝いちゃいちゃして隣室のあたしはどんな顔して会えばいいのかな?」
「知らないよ!!」
俺の絶叫が轟いて、俺の朝は終わった。
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「さっさとその携帯を渡しなさい」
「嫌だ!!い〜や〜だ〜!」
私は亀の様に丸まって、自身の携帯を守る。
今は昼、正しく言えば午後2時。
皆さんお楽しみの『レンアイシリーズ』は次回ですが、今回はその前哨戦であると願いたい。
ちなみに何でこんな事になったのかは、その30分前······。
『アキヒトくんの好きなものって何だろう?』と言う事から始まった。
「知らないけど。本人に聞けば良いじゃない」
そんなユ〜ちゃんの淡白な対応に私は持ってたスマホをふるふる振って。
「そんな事が出来たら既にアキヒトくんは私の彼氏だよ〜」
「なわけないわ」
「たった6文字で全否定!?」
私はオーマイガー的なポーズをとってパタンと倒れていった。
まあ、確かに私の努力の問題で彼氏が出来るのなら。この国の少子化問題なんてあっという間に解決するだろう。
でも······なんだろうな。
知りたいな······。
「じゃあ、あいつのお母さんに電話を掛ければ良いじゃない」
「はあ!?」
こうして現在へ戻る。
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俺は鼻歌を歌いながら、2、3冊の分厚い本を持ち歩いている。
別に俺は岡田のような筋トレ好きなわけじゃなく、ただソファへと持ち歩いているだけだ。
ドサッと置かれたその雑誌の名前は『LULU』ティーン以上向けの女性雑誌である。
これは母さんのお気に入りの本であって、それを読んだ俺も結構ハマっている。
内容や漫画の種類は言わないが、お気に入りの漫画が多い雑誌だ。
最近忙しくて読めていなかったので溜まっているものを消費する為に、夏休み初めの昼をこうして過ごしている。
口を緩めて中身を楽しんでいる最中、ズシッという柔らかい重みがのしかかってきた。
「お兄ちゃあ〜ん」
「どうした?最近全くもって出番がなくて焦り出している愚昧よ」
「そろそろ本当にあたしの名前を読んで!!」
俺の頭に強い圧力を感じて、そのまま本に顔を埋める。
「あ〜それもしかしてルル?」
「そうそう」
スズはまさかの最新の方から読み始めた。何ということでしょう。ファンに怒られるやつじゃないですか。
と言うか、そろそろ頭の上に胸を載せないでくれ、重い。
すると、スズはハッとした感じで、ようやく胸をのかしてくれた。その上で肩を掴んで、思いっきり振った。
背骨背骨背骨背骨背骨背骨!!背骨と俺は頭の中で絶叫する。
背骨をミシミシいって、俺から「アガガガガガガカ!!」と声が吹き出す。
「何!?何なの?いきなり何なの!?」
俺は振り向くとそこには顔を真っ赤にしたスズがいた。
「どうしたんだ?」
「·········あの本······」
「ん?」
「私の本はどこにあるか知ってる!?」
「知らねえよ!!」
俺は身体がズキズキしている中で俺は叫んで、俺の昼は終わった。
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「母さん。ルル貸してくれない?」
「ん、ああここにあるよ」
これは、少し前の出来事。アキヒトは積まれているルルを持って「ありがとう」と言って、鼻歌交じりに出ていった。
今日、圭子は上司からの命令で休日を愉しんでいた。
要は働きすぎで皆に心配されたのだ。そう言う時は大概、夫である直樹も帰ってくるのだが、日本でいう盆のタイミングに帰ってくるらしいので、まだ帰ってこない。
趣味の小説読み、何処かのサイトで集めてじっくり読んでいた。
すっかりと疲れが取れ始めている事から、彼女がキングの娘の偉大さが伺える。
「さて······久し振りに料理でも作るかね······ん?」
少し強張った体を伸ばして、最近ハルトに任せっぱなしの料理に勤しもうかと思っていると、自身の携帯からお気に入りの曲が流れてきた。
もちろんこれは携帯のアラームの曲なので、要件が何か調べる為に画面を見る。
そこには『かれんちゃん』と少し前に連絡先を交換している、アキヒトにアレな娘。
少しだけニマニマしながらあたしはボタンを押した。
『すみません吉田です』
·········何事?
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カレンの家の中で、家主である彼女は暴れていた。
「ちょっ!?やめっ、やめてくれぇぇぇぇぇ!!」
「前回のラスボスの死に言葉じゃあるまいし、さっさと諦めなさい」
私の決死の抵抗も虚しく、ユ〜ちゃんのドラゴンクローに倒される。
「あの······すみません。実は——————な事があって······はい、うちのカレンはアレじゃないですか······」
『確かにアレだねぇ〜』
「アレって何なのかな!?」
カレンの叫び声が聞こえるが聞こえなかったフリをする。
「君の心何故か分かる気がするんだ私!!」
「それで······はい、はいそうなのです。アキヒトくんの好きなものが分かった方がカレンにとっても都合が良いと思うのです」
『ほぉ〜ほぉ〜なるほどうねぇ〜。君の言い分も分かるわぁ〜。確かにアレな子には、そう言うチートアイテム見たいな物は必要だもんねぇ』
「理解していただけるのは有り難いです」
ちなみに遂にカレンは抵抗を諦めて、寧ろ答えを聞こうと耳を近づけている。
暫しの沈黙。二人はゴクリと唾を飲む。
『アキヒトのね······好きなものと言うか、欲してそうなものはね······』
ここでドラムロールお願いします!!
ドゥるるるるるるるるるるるる!!ドン!!
『アキヒトはね。愛情に飢えているんだよ』
「愛情に······?」
『おや、その声はカレンちゃんかい?だったらちょっと変わってくれないかなユウキちゃん』
「はい」
そう言って素直に渡してくれるユ〜ちゃん。私はその携帯を受け取って「交代しました」と伝えると、そちらから『よし』と言う声が聞こえた。
「ところで、一体どういう事ですか?アキヒトくんが愛情に飢えているって······」
『言葉の通りさ。カレンちゃんはあの子の本当の母親と出会ったことがあるよね』
確かに『焦燥の塔』に行く前に会ったことがある。どこはかとなくアキヒトくんに似ている容貌だったのでお母さんとすぐに認識出来た。
それよりもケイコさんがどちらかと言うとかぐやさんに似た口調に反応してしまう。アキヒトくんが言うには豪快な人って聞いていたけど、誇張だったのかな?
『あの子の母親はね。今は分からないかもだけど病弱だったんだ。寧ろ三人も子供を産んだ事にあたしは驚きだったよ』
「はあ······」
3人······?2人しか知らないけど······。
『あの子が産まれてからずっとベッドで療養していたから全く会えなかった。その上あの事件で消息を絶ったんだ。会えなかったに決まっているだろう』
『あたし達も最善を尽くそうとしたが無理だっただろう。あたしが出来ていたら、あの子が喜々として『聖戦戦争』なんか行かないもんね』
ケイコさんの口調から何か寂しさを感じた。
『だからこそ、あたしはあの子に愛情を君が溺れる程に与えると、文字通り君に溺れるんじゃないかな』
「······ありがとうございます!!」
『いえいえ別に良いよ。それじゃあね。頑張りなさい』
「はい頑張ります!!」
私ははっきりと言って、相手の方が切るまで待っていた。
振り向くとすぐにユ〜ちゃんがいた。
「ご指南お願いします!!」
「はいはい善処しますよ」
こうして私の戦いが始まった。
@@@@@
俺は夜、ご飯を食べたあとレインボーのお風呂入れろ攻撃を必死に食い止め、一人風呂を楽しんだあと、ホカホカ湯気を保ちながら自分の部屋に入った。
するとそこには一冊の本を読んでいたレインボーがいて——————。
「ん?どうしたレインボー、その本は?」
「これ、何か下着がいっぱいあるんですよね」
「ん!?」
何か凄い嫌な気がする。
「ちょ、ちょっとそれ見せてくれよ」
「?はい」
レインボーから貰ったその本は、間違いなくランジェリーブックであった。
「なあっ!?」
そしてこれは間違いなくあいつの······。
嫌だ!!一日に3回おかしなことが起こるなんて絶対に嫌だ!!
「れっ······レインボー!!早くそれをスズの部屋に!!」
「お兄ちゃあ〜ん。やっぱみつかんなぁ——————!?」
恐らく彼女の目の前には先程まで見つからなかった本が兄の手元にある事を——————
そして俺は見てしまった。この本に『G』と言う単語が書かれていた事を——————。
はあ······さて、ここで終わりにしようか。
「もう······嫌だああああああ!!」
俺の叫び声は虚空を散った。




